「家」や「学校」に居場所がないと訴える子どもたちがいます。そんな子どもたちのために、学校の中にほっと一息つける場所を作る取り組みがあります。その現場を取材しました。

校舎内に週に2回オープンする『生徒たちの憩いの場』

大阪府立西成高校の校内にオープンする『となりカフェ』。ひきこもりの人などを支援する一般社団法人「officeドーナツトーク」が週に2回、昼休みと放課後に運営していて、カフェのように飲み物があり、寄付されたお菓子や冷凍食品も用意されています。
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(一般社団法人officeドーナツトーク 奥田紗穂さん)
「(カフェは)教室の半分くらいの大きさです。お菓子は全部寄付でいただいてます。『おてらおやつクラブ』といわれる、お寺さんからのお供え物をいただいたりとか」
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取材した日は豚まんを準備して生徒を待ちました。チャイムが鳴り、昼休みになると「となりカフェ」に生徒たちが集まって来ました。お弁当を食べたりスタッフとおしゃべりをしたりする生徒もいれば、将棋をさす生徒もいます。この日は45分の休み時間を30人が思い思いに過ごしていました。
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(3年生)
「(Qとなりカフェは高校生たちにとってどのような存在の場所?)リラックスできる場所というか。学校では堅苦しいみたいな感じなんで、ここは家にいるような空気感でいられるかな」
(1年生)
「スタッフさんのほうが話しやすいし」
(1年生)
「なんか親近感わくよな。友達と話してる感がある」

(一般社団法人officeドーナツトーク 奥田紗穂さん)
「彼氏彼女の話ですとか、進路についての話とか、家のこととか、いろんなことを話してくれますね」

気軽な居場所が生徒たちを救う

「となりカフェ」がオープンして今年で10年目。大阪府の「高校中退・不登校フォローアップ事業」がきっかけで始まりました。西成高校では様々な家庭背景のために、しんどさを抱え、かつては中退する生徒が多かったそうです。
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(西成高校 山田勝治校長)
「これ以上私たち学校の教員だけで出来ることってもうそんなにないんじゃないかなと。生活でも勉強でもない別の場所で人とつながってるというのが、気持ちの豊かさとか生活の豊かさにつながっているのかなと思います」
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カフェという気軽な場所で生まれる何気ない会話で救われた生徒たちもいます。

(3年生)
「友達関係とかで先生に言うほどでもないしなーみたいな。(となりカフェが)なかったらモヤモヤしたものが残ってしまって不登校になってる可能性もあったかな」

(3年生)
「父親が亡くなってしまったことを相談したことがあって、そんな話も普通に聞いてくれる存在ではありますね。(Qその時のつらい気持ちを相談できる人はなかなかいなかった?)学校にはあんまり…。ちょっとほっとする感じはありましたね。人に話せる分、気持ちの整理がついたという感じなんで」

コロナの影響はここにも

生徒たちにとって大事な居場所になっている「となりカフェ」。しかしそこにも新型コロナウイルスの影響が出ています。西成高校は今年度に入って臨時休校が14回もありカフェがオープンできない日も続きました。
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(一般社団法人officeドーナツトーク 奥田紗穂さん)
「(となりカフェを)開けることができない、その間に生徒さんたちはどこでなにをどうして過ごして、どこで眠って、どこで生活をしてるんだろうという不安はありながらも、どこかで知らないうちに我慢我慢が積み重なっていたら心配だなというふうに思っていますね」

家でも教室でもない居場所。生徒の『となり』にそっと寄り添います。