大阪府の吉村洋文知事が9月8日放送の「よんチャンTV」に出演し、新型コロナウイルスの感染者数の推移や感染対策などについて語りました。

感染者数が減少傾向の大阪府「減少傾向を維持し続けることが重要」

(Q9月8日、大阪府の新規感染者数は2012人確認されました。東京都は1834人確認されていて2日連続で東京都を上回りましたがどのように受け止めていますでしょうか?)
「大阪の感染状況がどうなっているのかが大事です。先週水曜日(9月1日)の感染者数は約3000人でした。先週と比べると約1000人減少しています。しかし、気を付けないといけないのは、油断をすると感染者数が伸びる傾向にあります。減少を確実なものにするために、感染対策の徹底を府民や事業者にお願いしたいです」
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(Q第5波において、大阪府の感染者数をどこまで減少させるのが理想と考えますか? )
「何人になれば安全という基準はないですが、感染者数が減少する傾向を保つことが大事だと思います。必ず病床のひっ迫は解消されていきます。大事なのは府民の命を守る。病床をオーバーフローさせないことです。特に重症病床は命を守る最後の砦になりますので、そこをオーバーフローさせない。救える命が救えなくなる事態は何とか避けることが重要だと思っています。そのためにも感染者数の減少傾向は維持すべきです」

「宣言」延長 「またかと思うかもしれないが、一段の協力をお願いしたい」

(Q緊急事態宣言延長についてはどう受け止めていますか?)
「事業者の皆さんは『またか』『同じことをやるのか』と思うかもしれないが、ここは何とか今一度ご協力をお願いしたいです。緊急事態宣言とそれ以外の時期とで比べると、宣言時の方が人流は20%~30%減ってきています。病床がひっ迫をしていますので、感染者数を減らしきるためにも、もう一段のご協力を引き続きお願いしたいです」
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(Q政府が検討している「緊急事態宣言」解除の考え方の案について、「病床使用率」と「重症病床使用率」についてひっ迫度合いが『50%未満』という具体的な基準が示されていますが、こうした検討されている解除の考え方についてはどのように感じますか?)
「『病床使用率』や『病床のひっ迫度』を基準にする考え方には賛成です。一定程度、具体的な基準を示すべきだと思います。しかし、50%という基準を作っても、感染者数が増加傾向の場合と減少傾向の場合とでは全然意味が違います。新規感染者数そのものに一喜一憂をしなくてもいいと思いますが、減少傾向なのか、増加傾向なのか、そこをきちんと判断できる基準を示すことが大事だと思います。最終的には命を守る最後の砦となる重症病床が大事。第4波の時に大阪府内で確保できた病床数は224床で、現在(9月8日時点)は589床と約3倍増加しています。大阪府内の重症者数は約270人(9月8日時点)いますので、第4波の時だとオーバーフローしている状況です。病床を確保する努力を続けて、感染者数を確保している病床数の中に収めることが大事。そのために感染者数が増加傾向なのか減少傾向なのかが非常に重要です。現在、行っている感染対策を今一度続けていただきたい」

計画の大規模医療センター「看護師の確保が課題」

(Q計画されている「大阪コロナ大規模医療・療養センター(仮)」について9月中に無症状者・軽症者向けに500床を先行稼働する予定とのことですが、計画に至った背景を教えてください)
「大規模医療センターは9月中旬下旬に何とか完成させたいと考えています。最終的には1000床まで増床したいと思います。災害医療の観点から、病床やホテル療養から患者が溢れる状態になるなど、いざという時に備えていわゆる『野戦病院』のような大規模な医療センターを作る決断をしました。9月下旬の感染状況によっては運用の仕方は変わるかもしれないですが、趣旨とすれば災害級に感染が拡大した時に『救える命を救いたい』という思いで1000床の病床を確保する予定です」
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(Q一方で計画に向けての課題はありますでしょうか?)
「医師や看護師をどのようにして集めるかです。医師や看護師について、確実に確保できている数があるかと聞かれれば、その数が現段階では正確には出ていないです。そんな中で、運営の核となる病院があれば動こうと考えていましたが、大阪大学医学部附属病院から協力しましょうという話をいただきました。大阪大学大学院医学系研究科の忽那賢志教授からもやりましょうと言っていただいた。この施設の責任医師は忽那先生でお願いすると了解を得られています。あとは肉付け、阪大病院から看護師を出すのは難しいので、そこをどう判断するかです」

(Q看護師の確保について現状の話を聞いていると、めどは立っていないということでしょうか?)
「立っていないが立てていきます。大阪府看護協会とは話をしていて、沢山は出せないが中核になる看護師は必要とのことで話をさせていただいています。1日ごとに状況が動いてきています。大規模医療センターでは軽症患者や災害医療時には中等症の患者までやるように整えます。広い範囲で看護師の確保の準備をしていきたいです。予定では来年の5月までの使用を想定しています。感染状況によっては、使わないこともあり得るかもしれないですが、今年の冬に我々が想像している以上に感染が急拡大していく可能性があります。そんな中で、リスク管理の観点から施設を作って医師や看護師をどう確保するのか。100%の答えはないですが、走りながら形にする責任は僕にあるので実現させたいです」

保健所の体制は「何とかしないといけない」「保健所の業務の整理が必要」

(Q医療現場と共に保健所機能の強化についてはどのようにお考えでしょうか?)
「非常に重要だと思います。保健所の中でも大阪府内には18の保健所があるんですが、大阪市の保健所はひっ迫しています。宿泊療養施設に入る期間も大阪市以外の自治体は平均して1.9日で入れています。しかし感染が急拡大する時は、大阪市内で急拡大をしていて、大阪市の保健所も急激な対応が難しくて、他のエリアに比べて倍くらい感染者が多い時には対応に時間がかかっています。保健所機能の強化は重要で、ファーストコンタクト、疫学調査などを松井市長が強化して、大阪府も支援しながら行っていますが、感染者数が2000、3000と拡大した時には遅れていますが、そこを何とかしないといけない。また、どこまでを保健所の仕事にするのかを整理したほうがいいと考えています。入院調整は大阪府で引き受けてできる限り保健所の業務を分散しながらやろうと。感染の急拡大時にはどうするのかと考えたときに色々なクリニックとか検査をして陽性と分かった段階ですぐに治療に繋いだ方がいいんです。大きな方向性としては早く沢山の検査をして、早く治療をして重症化を防ぐ。早期介入、早期治療、重症化予防を大きな方向性としては進めたい。その観点から保健所をどうするのかよく考えないといけないと思います」

学校行事の緩和は「ワクチン接種の有無を基準にすべきでない」

(Q学校行事はどこまで緩和できるとお考えですか?また緩和の条件についてはどのように考えていますでしょうか?)
「8月下旬に大阪市内の学校で修学旅行を実施した学校がありましたが、事前にPCR検査を全員受けて、陰性確認をして行ったと伺いました。修学旅行や運動会などは一生の思い出に残る事なので、何とか実現させたいと思っています。しかし、ワクチンで学校行事を左右することになると「ワクチン打ちましたか?」「打っていないですか?」ということが子どもたちの間に差が出てきてしまうので、ワクチンの接種を基準にすべきではないかと考えます。現状は陽性者が増えていて休校の学校も多いですが、感染対策を取りながら学校行事をできるだけ実行していけばいいと思います。ワクチンで左右させるべきではないし、左右させなくてもできると思います」

(Q陽性者が出た時の休校やリモート授業などの具体的な判断基準や指針はあるのでしょうか?)
「指針はありますが、最終的に決めるのは学校を管轄する市町村の教育委員会で、私立学校は市町村の教育委員会の判断にならう場合が多いです。府立学校では、1人でも陽性者が出たら3日間は休校です。休校の間に陽性者と接触した人とか、府はできる限り検査をしたいと思っているので、陽性者が出たクラスでは全員の検査を3日間の休校中に行っています。そこで新たな陽性者がそのクラスで出れば、学級閉鎖にする。陽性者が出なかったら再開するという方針をとっています。少しずつ違うと思いますが、それと似たような対応を各市町村でやっていると思います。府立の学校は全部で180校ありますが、9月8日時点でも26校が休校しています。長い休校ではないですが、そういうことをやらないと中でどんどん増えたら困ります。逆流現象といって、学校や保育所で子どもの間で広がって親に感染するケースがあると聞いています。親の世代は重症化しやすい世代なので、そこを防ぐという意味では休校にさせてもらって、クラスターの発生を防ぐことを感染拡大期にはやり続けないといけないと思っています。あと、学校へ行くことに不安に感じる保護者には学校を休んでくださいという話をしている。その際には欠席扱いにならないようにすると府の要請としています。何とか学びもできる限りオンラインとかでやりながら行って。感染拡大期の大きなクラスターや逆流現象を防ぐ、並行して学びの場も確保することを探り探りやっていかないと仕方がないのではないかと考えます」

「行動制限は期限を決めて行うべき」

(Q政府はワクチン接種などを条件に、県境を越える移動や飲食店の酒類提供や時短営業の緩和など『行動制限の緩和』について検討を進めています。緊急事態宣言が延長される中でこうした話が出ていますが、どのように思われますか?)
「基本的には賛成の考え方です。しかし、ワクチンを打つか打たないかは本来自由だし、ワクチン差別というのはなくしていかないといけない、体質的にワクチンを打てない人もいますので代替の手段を考えないといけないと思います。また、行動制限については期限を決めてやらないといけないと考えています。非常にしんどい思いをしている飲食店など、イベントとかを感染対策をしながら経済的に回していこうと。1つはワクチンを希望する人全員がワクチンを打てている状況になっていること。まだ希望する人の中でも打てていない人もいますので、その状況で導入するのは違うと思います。(行動制限について)終わりの期限も最初から決めておくべきだと思っています。普通のクリニックで治療ができるようになる時までの期間限定の措置として協力してくださいと、デメリットの部分は出来る限り減らしますというやり方を取るべきだと思います」

(Q今後、次の感染拡大の兆しについては何を基準にキャッチできると考えますか?)
「我々で見張り番指標というのを作っています。それを見ると、だいたい20代30代の陽性者の1週間の比率が増え始めたら、その後感染が急拡大する傾向にあります。そうした指標を見ながら判断していきたいと思います。今も20代30代の陽性者が他の世代より先に減少傾向にあります、若い世代の方が広めているわけではないですが、我々が分析しても20代30代の陽性者が増えてくると、その後感染の流行が起きやすいので、客観的な指標などを参考にしてキャッチしていきたいと思います。また、行動制限の緩和に関して政府が10月から行う計画の実証実験について大阪府としても参加してみたいと考えています」

(2021年9月8日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)