9月1日、3004人の新型コロナウイルスの感染が確認された大阪府。宿泊療養者も増え続けています。第4波のピーク時(今年4月30日)は1839人でしたが、第5波の8月31日時点では3345人となっていて、約1.8倍に増えています。そんな中、宿泊療養施設で働く看護師たちを取材しました。

宿泊療養施設のための看護師研修は毎日実施

大阪府看護協会(大阪・中央区)では、毎日、宿泊療養施設に派遣する看護師への研修が行われています。

(大阪府看護協会の研修)
「私たちは基本グリーンゾーンにいて、電話で『せきはどうですか?』『食事はどうですか?』ということを健康観察していくというのが主な仕事になります」
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(潜在看護師・40代)
「第5波が大阪に来ているということで、少しでも看護師として力になれればと思って応募させていただきました」

この日は12人の潜在看護師などが参加しました。今後の施設の増加に備えて継続して募集を続けています。

8月31日の時点、大阪府には宿泊療養施設が22施設6131室があり3345人が利用しています。そこに看護協会から371人の看護師が派遣されていますが、大阪府看護協会の高橋弘枝会長は医療現場全体で見ると看護師不足が課題になっていると話します。

(大阪府看護協会 高橋弘枝会長)
「ワクチン接種・ホテル(宿泊療養施設)運営・コロナ重症センターなど、潜在看護師さんが本当にフルでみなさんが出て来ていただいて、しっかりとそこで動いていただいているんですけれども、やはりある程度限界があると思いますので、今のところはなんとか看護師さんたちは集まってきていますが、ひっ迫しているのが事実だと思います」

宿泊療養施設での看護師の役割とは?

宿泊療養施設での看護師の役割とは?MBSの大吉洋平アナウンサーが取材しました。

(大吉洋平アナウンサー)
「私が今いる場所は感染の恐れがない『グリーンゾーン』と呼ばれるエリアです。看護師たちが電話を使って患者とコミュニケーションをとっています。一方、この扉の向こうはコロナ患者が療養する『レッドゾーン』です」

このホテルでは約300室を宿泊療養のために提供しています。1階のロビーを中央で区切り、看護師・ホテルスタッフ・大阪府の職員がいる『グリーンゾーン』と、軽症の新型コロナウイルス患者が療養する『レッドゾーン』に分けています。
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看護師8年目の袋井麻未さん。去年11月から宿泊療養施設で働いています。

(宿泊療養中の利用者と電話で話す袋井さん)
「解熱している感覚はありますか?先生が別の薬を飲むか、量を増やしてみようかというのがあれば、指示があれば処方していただけるかなと思うんですけれども」

ここで療養する利用者と電話で話す袋井さん。毎日、朝と夕方の2回、4人の看護師が手分けして療養者全員の健康管理と安否確認を行います。療養する人は30代~50代が中心で、中には親子で療養する人もいます。

(看護師 袋井麻未さん)
「我慢される方は我慢されちゃうんですね。『今は大丈夫だから』とか。(電話だと)そこが読み取りづらくて、ちょっと間があった返答だったり、ちょっと電話の向こうでせきをしていたりというのがあれば、そこを突っ込んで聞いてみます」

この宿泊療養施設には医師は常駐していません。看護師が体調の変化や症状を聞き取り、必要に応じて別の場所にいる医師がリモートで診察を行います。

グリーンゾーンに看護師が立ち、ガラス窓で隔たれた先のレッドゾーンに何人かがいて、会話をしています。何をしているのでしょうか。

 (大吉アナ)「レッドゾーンに何人か人が入ってきて、看護師さんが会話をしていますが、何が行われているんですか?」
(袋井看護師)「きょう新しく入所されてきた人たちです。まず看護師が対面でお顔を見て体調の確認させてもらって、せき込んでいたり、前かがみで歩いたりしている方は、たぶん胸が苦しいということなので、歩き方も見ています。どんどん時間差で到着されるので、多い時は6~7人くらい、ずっと後ろに待機してもらって案内するという形になります」
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看護師の勤務は24時間交代。日中は毎日20人~30人の新規療養者の受け入れや退所の手続き、直接体調を確認する必要がある場合は防護服を来て部屋へ向かいます。さらに夜間も緊急対応に備えるなど慌ただしく1日が過ぎていきます。

(看護師 袋井麻未さん)
「今は特に急変される方も多いので、夜間も(看護師の)部屋で待機するんですけれども、連日深夜帯に呼ばれたりとか酸素投与が必要な方には酸素投与の準備をしてレッドゾーンで対応したりすることは増えています。以前は若年層の方は軽症で済んでいたと思うんですけれども、高熱・せき・吐き気・下痢などの症状が強く現れていて、一部で重症化する方もいて、(病院へ)救急搬送される方も多いので」

お弁当の配膳・ゴミの回収・部屋の清掃などは「ホテルスタッフ」が担当

1階のレッドゾーンの一部は弁当や差し入れの受け取り場所になっていて療養者が取りに来ます。この弁当を配膳するのは“ホテルスタッフ”の役割です。
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療養者がレッドゾーンにいない時に扉を開けて素早く配膳を済ませます。さらにホテルスタッフは、防護服を来てゴミの回収や退所した療養者の部屋の清掃を行うなど、後方支援をしています。

 (大吉アナ)「ホテルスタッフや府の職員、そして看護師さんという、本来はなかなか共に仕事をするはずのなかった人たちが今は一緒にチームでやっていらっしゃるじゃないですか。この連携はいかがですか?」
(袋井看護師)「ものすごく大事です。部屋の管理をするのはホテルさんですし、日用品の管理もホテルさんがしてくれています。当日になって急きょ入所という方も増えているので、今までと比べたら大阪府職員の方の負担がすごく大きいんですね。我々ももちろん忙しいんですけれども、我々のことを考えてくださって、使いやすいように資料を作成してくださる」

看護師の負担になっていることは…

有症状者の療養解除の基準は、発症日から10日経過、かつ、症状が軽快した後に72時間が経った時です。看護師の袋井さんは新型コロナウイルスに対する正しい知識を持たない療養者への対応が負担になっているといいます。

(袋井看護師)「すぐ治るという思いがある方もいらっしゃるので、そういった気持ちで来られると『短期間で出られるんじゃないか』『出られないの?』『まだ出られないのか』『いつまで症状は続くんだ』というクレームや不安の声があるので、そういった対応にちょっと大変さがあります」
 (大吉アナ)「看護師さんの心のケアや、看護師さんたちのストレスというのは大丈夫ですか?」
(袋井看護師)「本当に緊迫している状況なので、我々も本当に心がもうあふれるくらいのところまできてはいるんですけど、その中で利用者さんから『ありがとうね』とか、退所する時に『お世話になったね』とか、そういった言葉で私は頑張れているかなと」

(9月1日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)