8月10日に2年ぶりに開幕した夏の甲子園では49の代表校が17日間にわたる熱戦を繰り広げます。その一方で聖地・甲子園をかけたもう一つの戦いがあります。今年は“女子高校野球”の決勝も史上初めて甲子園で開催されるのです。夢舞台をかけて笑顔で戦う大阪の女子野球部を取材しました。

部員55人の強豪

履正社高校女子硬式野球部。創部8年で、今年の春の全国大会で準優勝した全国屈指の強豪です。部員55人の大所帯を率いるのはキャプテンの花本穂乃佳さん。
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(履正社高校3年 花本穂乃佳さん)
「小学1年生から始めました。男子野球より自由なのと、あとは笑顔の多さだったり、元気よくやっているところが良いんじゃないかなと思います」

“女子は甲子園に行けない”

兄の影響で野球を始めた花本さんは、高校に入るまでは男子と一緒にプレー。しかし、成長していく中で“女子は甲子園に行けない”という現実を突き付けられます。
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(花本穂乃佳さん)
「小学生のときは自分も行けると思っていた場所なので、野球の夢は“絶対に甲子園に立ちたい”というのがあったんですけど。中学に入ってからそれが叶わないということに気がついて。女の子も野球を頑張っているのになんでいけないんだろうなというのをずっと考えていました」

女子野球の競技人口は?

日本中学校体育連盟によりますと、2019年時点のデータで、軟式野球部に所属する女子中学生は全国でわずか3302人。ソフトテニス16万3806人・バレーボール13万9017人・バスケットボール12万9199人などと比べると桁違いに少ない状況です。
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ただ明るい兆しもあります。高校の女子硬式野球の競技人口で見てみると、2015年以降の6年間で2倍近くに増えているのです。
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(履正社女子野球部 橘田恵監督)
「元々小学生の女の子で野球をやっている子はすごく多いんですよね。その子たちが中学・高校へと続けるようになったというのが1番の要因かなと思っています」
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そして今年、女子野球の歴史に新たな1ページが。なんと史上初めて女子高校野球の全国大会の決勝が甲子園で開かれることになったのです。

史上初の甲子園目指す夏

7月26日、夢舞台を目指して、履正社高校女子野球部は全国大会の初戦を迎えました。相手は花咲徳栄高校です。
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チームの円陣は歌って踊り心を一つにするのが恒例です。

『一球一打に願いを込めて栄光を掴むその日まで』

ベンチからのサインも“笑顔”の指示。
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1回裏の履正社の攻撃。得点圏にランナーを置くと、打席には花本さん。ライト前にヒットを放ち、さっそく先制点を奪います。
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その後は自慢の打線で7得点。見事5回コールド勝ちをおさめました。

そして7月29日、ベスト8をかけた横浜隼人高校との試合。
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この日も3回裏に幸先よくランニングホームランで先制します。
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ところが、5回に逆転を許し、苦しい展開に。それでも55人全員が一丸となって迎えた最終回2アウトで打席には花本さん。
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しかし放った打球は外野手のグラブの中に。甲子園をかけた戦いは終わりました。

「女の子だからって出来ないことはない」

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(チームに向けて話す花本穂乃佳さん)
「すごく悔しいけど悔いはないと思う。甲子園というところには行けなかったけど、こうやってみんなと最高の思い出が作れて、自分はそれが1番嬉しいです」
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最後の夏を笑顔で駆け抜けました。

(花本穂乃佳さん)
「女の子だからって出来ないことはないですし、甲子園に出たチームには楽しんで女子野球の良いところを見せて欲しいなと思います」