7月3日に土石流が発生した静岡県熱海市の伊豆山地区。発生からちょうど1週間経った7月10日に、MBSの大吉洋平アナウンサーが取材しました。

(大吉洋平アナウンサー)
「これ以上、奥には入れないんですけれども、山から流れてきた土砂、がれきをよく見ると家の建具であったり、家具が崩れていった様子、衣類などや家の中で使う雑貨などが目に入ってきます。人の生活がそこにあって、突然奪われていった、その残酷さががれきの山を見るとよくわかります」
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元々道路だったところには水が流れ、土石流の影響で川の流れが変わっていました。

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(大吉洋平アナウンサー)
「ここからまっすぐ先に見える山、その奥が土石流の起点となった場所です。そこから土砂が流れ落ちて来て、海は土石流の影響で非常に濁っているのがよくわかります」

現場近くはいまだに広く規制され、避難する住民らが必要なものを持ち出す姿が見られました。

(介護タクシー会社の経営者)
「介護タクシーの事務所があって、高齢者で外出に困っている方がいるので(運んでいる)。車いす、たんの吸引器、酸素ボンベ。できる人ができる範囲でできるだけのことをやって、支え合って乗り越えるしかないと思うので」
(避難している住民)
「(Q精神面の負担は?)ちょっと何かの音でも、どきっとするし、落ち着きませんよね。(Q近所で被害が出た方は?)それはちょっと。涙が出るから」
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7月10日、熱海市の気温は32℃を超え真夏日に。強い日差しが照り付ける中、警察・消防・自衛隊は約1700人で捜索活動にあたっていました。

捜索が難航する中、行方不明者の家族らが多く集まる場所に到着すると、涙ぐむ人の姿がありました。私たちは災害の現実を目の当たりにしました。

(電話で話していた小松力さん)
「洋子見つかったって」

(太田洋子さんの同級生 小松力さん)
「(Qいまどういった報告があったのですか?)太田洋子さんが遺体確認で身内の人が行っていて、いま帰ってきて、洋子さんの確認がとれたということ。(太田洋子さんの)いとこが一緒に行って、確認とれたということで、良かった」

新たに身元が判明した太田洋子さん(72)。土石流に襲われる直前まで太田さんの家には妹が訪れていましたが、雨の状況を気遣ってか「早く出かけたほうがいい」と用事のある妹を送り出し、その直後、友人との電話中に土石流に巻き込まれたといいます。

(太田洋子さんのいとこ 高橋薫さん 7月3日)
「(友人が太田さんに)電話していたらしい、『避難しな』って。そしたら最中に『キャー』って声が聞こえたって」

太田さんは去年に夫を亡くして、自宅で一人で暮らしていました。

(太田洋子さんの同級生 高橋勝代さん) 
「すごく物静かでね、あまり口数は多くないんですけれども、存在感がある、とても優しい人だった」

遺体は太田さんの妹と、いとこの高橋さんが確認しました。

(太田洋子さんのいとこ 高橋薫さん)
「『洋子だ』と見た瞬間に思いました」

その表情は「穏やかだった」といいます。

(太田洋子さんのいとこ 高橋薫さん)
「本当に悔しいですけれども、五体満足でなんとか見つかったということが、本当にありがとうございました。(Q対面されたときの妹さんの様子は?)泣きじゃくっています。『お姉ちゃんお姉ちゃん』と言っていましたよ。言葉がないですよ、肩たたくしかなかった。俺だって泣きましたよ。(Q災害発生から1週間が経ちましたが、みなさんの精神面、体力面はいかがですか?)そんな『疲れた』なんて言ってられません。まだ何人もの方々が発見されないし。皆さん協力してくれていますので、弱音は吐きません」

一瞬にして様々なものを奪った土石流。7月12日午後5時時点で、これまでに10人が死亡、18人の行方がわかっていません。いまも懸命の捜索活動が続けられています。

(7月12日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)