新型コロナウイルスの感染拡大で、医療体制がひっ迫する中、大阪府内の保健所では入院調整に追われています。患者の命と向き合い続け、第4波で葛藤する保健所の姿を取材しました。

4月30日、朝から電話が鳴り続ける大阪府の豊中市保健所。唯一患者とつながっているのは電話です。しかし、入院すべき症状の患者に保健師らが伝えているのは、大阪の厳しい現状でした。

(電話で話す豊中市保健所の谷岡優美さん)
「今、大阪が入院の病院がいっぱいな状況なんです。人工呼吸器と言われるような機械を着けたいとなったとしても、もしかしたらそういう病院に動くことができないかもしれない。厳しい話で申し訳ないですけれども、それでも今入院する希望がありますか?」

病床がひっ迫した大阪では、『入院後に症状が悪化してもすぐ重症病床に転院できないことに承諾した患者の方が入院先が決まりやすい』といいます。
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(豊中市保健所 谷岡優美さん)
「患者さんと今の大阪府の現状というところの間にいるので、患者さんの気持ちを汲みながら伝えないといけないというところは、正直しんどいな難しいなと思います」

コロナ対応チームを統括する豊中市保健所の保健師・武本翔子係長に、取材した4月30日の状況について聞きました。

(豊中市保健所 武本翔子係長)
「(入院待ちの患者が)今日は10人ですね。今でいうと10日間くらい入院待ちで自宅で療養していただいている方もいますね」

患者の状態を保健所が聞き取って、大阪府の「入院フォローアップセンター」に連絡。センターが入院先を調整しますが、1人も決まらない日もあるといいます。そのため保健師や医師は日々話し合い、入院すべき患者の優先順位をつけています。
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【話し合いの様子】
(松岡所長)「これは突っ込まなあかんのちゃう?」
(武本係長)「そうですね。これは今救急隊が待っている感じなので、こっち優先で」

その後、最優先としていた患者の入院先が決まると、保健師の間で安堵の声が上がりました。

(豊中市保健所 武本翔子係長)
「ちょっと安心しています。入院フォローアップセンターから電話で“入院決まりました”となると最近は歓声が上がるくらい。なかなか決まらないので」

夕方、息つく暇もなく新たな相談。この日に陽性が判明した“状態が悪く意識が朦朧としている患者”の入院先の調整です。

(電話で話す職員)
「病院を探しているんですけれども、情報を色々聞かせていただきたいんですけど、よろしいですかね」

約2時間後、入院フォローアップセンターから電話が入ります。そして、入院先は決まりましたが、患者は心肺停止状態で、搬送先の病院で死亡が確認されました。

(豊中市保健所 武本翔子係長)
「1分でも早く病院が決まっていたら違う結果やったんちゃうかなって、きっと家族やったら思うんやろうなと思うとね。なかなか入院先が決まらなかった数時間というのは、もどかしかったでしょうし、悔しかったやろうなと。本当にこれでよかったんかなというのはずっと振り返るところですね」

【話し合いの様子】 
(松岡所長)「聞けるような状態かどうかわからないけれど、聞けるようになったら」
(武本係長)「聞ける状況やったら、周りに接触者が弟さんだけなのか」

死亡が判明しても家族など濃厚接触者の調査について話し合う保健所の職員たち。葛藤を抱えながら患者の命と向き合い続けています。