大阪市内にある新型コロナウイルスの軽症・中等症患者を受け入れている病院を取材しました。医療現場では「待ったなし」の状況が続いています。

「入院患者待機ステーション」2か所目の運用始まる

4月22日から大阪市内で運用が始まった「入院患者待機ステーション」。入院先が決まらずに救急車の中で長時間待たされる患者を減らすため、救急救命士が常駐のもと、入院先が決まるまで酸素吸入などがここで受けられます。これまでに約50人が搬送されていて、4月30日からは2か所目の運用も始まりました。

(大阪府 吉村洋文知事 4月30日)
「命を救うために優先度の高い人を入院させて命を救う活動する。これに尽きるのではないか」

ただ、入院先となる病院の状況は日々深刻さを増しています。

軽症・中等症対応の病院で重症患者を4人受け入れ

大阪市北区にある民間病院「加納総合病院」。新型コロナウイルス用に病床20床を確保して軽症・中等症の患者を受け入れています。しかし、4月26日に話を聞くと…。

(加納総合病院 加納繁照理事長)
「今は(新型コロナウイルス患者が)20人になっています。実は重症患者は4人に増えています。転送の受け入れ先が満杯で受けられないので、やむを得ず我々が重症患者を管理している形になります」
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“第4波”に入ると、変異株の影響もあり、入院していた患者が重症化するケースはこれまでの2倍近くになっているといいます。

(加納総合病院 加納繁照理事長)
「(Q重症者が1人出たら人手はどれくらい割かれる?)軽症・中等症の3~4倍の数が必要となるので、スタッフの数、ドクターや看護師ら含めて非常に負担になってきているのが現実です」

慣れた看護師ばかりではない

病床も人手も足りない新型コロナウイルス病床の現場。

(記者リポート)
「扉から先、新型コロナウイルスの陽性者がいらっしゃるということで、看護師の皆さんはフェイスシールドに防護服と、万全の体制で治療を行っています」

新型コロナウイルス治療のメインとなる病棟。元々はリハビリなどを必要とする回復期の患者を診る場所でしたが、新型コロナウイルス患者専用に改装しました。この日は重症者3人を含む17人が治療を受けていました。一時も緊張の糸を緩められない状況ですが、決して慣れた看護師ばかりではありません。
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(新型コロナウイルス病棟(元回復期病棟) 看護師長)
「ここは回復期病棟だったのですが、点滴1本もとっていない看護師ばかりで始まったんですね。みんなで協力して、挿管の介助とか、呼吸器の観察ができるまでに成長してくれた」

急性期の病床を削って対応

一方、脳梗塞などの重症患者がいる急性期病棟。ここでも新型コロナウイルス疑いの患者2人が治療を受けていました。
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(急性期病棟(新型コロナウイルス疑い患者も対応) 看護師長)
「奥の部屋が新型コロナウイルス疑い患者が入院する部屋となっています。本当は2床までなんです、うちが受け入れられるのは。でも(新型コロナウイルスの)救急患者が来るので5床まで受け入れました」

新型コロナウイルス疑いの患者が増えれば、その分は急性期の病床を削って確保するしかありません。こちらの病院に来る救急車は1日に十数台。命にかかわる患者もいるため、新型コロナウイルス患者で急性期病床が削られている状況に、加納理事長は危機感を感じています。

(加納総合病院 加納繁照理事長)
「(救急患者を)我々がしっかりと診ていかないといけないということは大事なことだと認識して対応しておりますので、ある意味(急患と新型コロナウイルス患者の)どちらをどうするか問答しながらやっているところです」

次々と搬送される患者

病床がひっ迫する医療現場。それでも患者は次々と搬送されてきます。70代の男性は別の新型コロナウイルスの重症病院に入院していましたが、人工呼吸器が外せるまでに回復したため、転院してきました。

(新型コロナウイルス病棟(元回復期病棟) 看護師長)
「重症病院のベッドを空けないといけないので、患者の受け入れは重症病院からしたいなと思っています」
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男性が搬送されて来た1分後、別の80代の男性が搬送されてきました。3日前から高熱が続いたため救急車を呼んだといいます。男性は一旦は新型コロナウイルス疑いの病室に入りましたが、その後ウイルス性の肺炎と判明して、一般病棟へと移ったといいます。

(加納総合病院 加納繁照理事長)
「普段の急性期の一般医療、新型コロナウイルス以外の医療も崩壊した時が、“本当の地域の医療崩壊”だと思っています。持てる力を最大限発揮して対応していこうということで。大阪は民間病院がしっかりと今まで頑張ってきましたので、奮闘して何とかこの危機を乗り越えたいと思っております」

(4月30日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)