緊急事態宣言の解除後、感染が再拡大する「第4波」に突入した今、大阪府の医療現場は再びひっ迫していました。
感染急拡大の大阪では「医療非常事態宣言」
緊急事態宣言の解除後、わずか1か月ほどで感染が急拡大した大阪府。4月7日、府の独自基準である大阪モデルの赤信号が再点灯し、医療非常事態が宣言されました。こうした中で特に深刻な状況に陥っているのが重症病床です。重症患者がすぐに使用できる病床の使用率は4月7日時点で90.8%に上っています。
(大阪府 吉村洋文知事)
「これまでにないスピードで重症者が急増しているという状況です。(重症病床の)臨時増床を本日の会議で決定した」
重症病床10床→12床→10床→12床 「単純に動かせるものではない」
今年1月に撮影された近畿大学病院の重症病床の映像を確認すると、ブザー音が鳴り響き、医師3人と約40人の看護師が懸命に治療に当たっていました。「第3波」の最中、近畿大学病院は元々10床だった重症病床を府の要請を受けて12床に増やしていました。
その後、感染者が減ってきたことから、国の基準に基づき府からの要請で病床を再び10床に戻し、2床は使用しないようにしたといいます。
(近畿大学病院 東田有智院長 4月2日)
「3月の初旬に(大阪府から)『元の10床に戻してください』という要請があったんです。だから『これで戻したら次増やせませんよ』という話はさせていただきました。案の定(重症患者が)増えてきたわけですね」
予想した通り、3月下旬から再び感染が急拡大を始めました。「第4波」でした。4月に入り10床全てが埋まるなど病床はひっ迫した状態に。すると府は…
(近畿大学病院 東田有智院長)
「また『元の増床した時(12床)に戻してください』と文書で来ていました。(病床は)そんな単純に動かせるものではない」
病院長によりますと、重症病床を2床増やして運用するだけでも、新たに看護師10人ほどを確保する必要がありますが、4月は配置換えを行った直後にあたるため、この時期に体制を再び組み替えることは難しいといいます。
(近畿大学病院 東田有智院長)
「その病棟の看護師を動かすということはその病棟の患者さんを減らさないといけない。一部医療を制限をするということは崩壊につながってくるわけです」
中等症患者受け入れ病院では再び深刻な人手不足に
ひっ迫しているのは重症病床だけではありません。中等症患者を専門で受け入れる十三市民病院(大阪・淀川区)。「第3波」の時には他の病院から医師や看護師を派遣してもらいながら最大64人の患者を受け入れてきました。その後、患者は18人まで減少したことから、応援の看護師らは3月末で病院を離れました。
ところが、ここ数日で感染者が急増、再び深刻な人手不足に直面していると病院長はいいます。4月5日に話を聞きました。
(十三市民病院 西口幸雄院長 4月5日)
「(患者が)3月半ばくらいから増えてきまして、4月5日で44人が入っています。この広がり方と患者増を見ますと、どうしてもまた4月の終わりくらいから、また(他の病院からの応援を)お願いできないかなということを今要請をしております」
変異株“病床ひっ迫”の要因
病床をひっ迫させる要因のひとつとされるのが変異株の存在です。変異株が疑われる感染者は原則個室対応のため、1人で4人部屋を使わざるを得ない場合があるというのです。
(十三市民病院 西口幸雄院長)
「4人部屋に1人ですから、かなり確保できる病床が減りますよね。変異株の扱いを変えていかないといけない。実際の運用上パンクするんじゃないですかね」
しかも、従来のウイルスであれば症状が改善するなどの基準を満たせば退院できますが、変異株の場合は症状が改善してもその後にPCR検査などで2回陰性を確認する必要がある分、退院までに時間がかかります。
(十三市民病院 西口幸雄院長)
「最近は変異株の方しか入ってこない時期が3月29日くらいまで多かったですね。(入院患者のうち変異株患者は)今は半分くらいですね」
現在、大阪で確認されているのはイギリス型の変異株だけで、イギリス型と判明すれば個室対応を解除することができますが、南アフリカ型やブラジル型の変異株だった場合は従来のウイルスに一度感染した別の患者にも感染してしまう恐れが指摘されていて個室対応を続ける必要があります。病床がさらにひっ迫する事態は避けられません。
(十三市民病院 西口幸雄院長)
「変異株の性質がまだわかっていないんですよ。今の広がり方のスピードを見ますと、ものすごく急峻ですので、それほど多くなってきますと受け入れる病院や病床数が足りなくなってくると思うんですよね。人をどこからか調達してもらわないと、とてもマンパワーと言っても無理なんですよね」
感染拡大を始めた変異株。医療崩壊の危機は間近に迫っているのかもしれません。
(4月8日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)