昨年の臨時国会で8項目の「共闘」で合意し、大きな成果を残した立憲民主党と日本維新の会。旧統一教会をめぐる被害者救済法の成立はその象徴でもあり「水と油」「犬猿の仲」と称された両党の連携は、政界に様々な「化学反応」をもたらしたと言える。

1月12日には、立憲の安住淳国対委員長と維新の遠藤敬国対委員長が会談を行い、

通常国会でも連携していくことを確認。防衛増税に反対する姿勢を示したほか、

法案を協議するプラットフォームを作ることでも合意した。

この連携を苦々しく思っているのが、他でもない自民党だ。先の臨時国会では、旧統一教会問題をめぐる救済法の協議終盤には、茂木幹事長自らが乗り出して、協議のテコ入れを図り法律が成立したが、自民党のもう一つの狙いは立憲と維新の関係に"楔を打ち込む"ことだったと言える。維新をめぐる自民と立憲の"奇妙なトライアングル"は今国会も続きそうな気配だ。

「立憲×維新の連携」を気にする自民
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臨時国会閉会後の12月半ば、自民党の茂木幹事長と維新の遠藤国対委員長が議員会館の一室で向かい合っていた。会合は茂木幹事長が持ち掛け、遠藤氏によると、この日は通常国会における「維新と立憲の連携」について話が及んだという。

"野党の分断"を意識したのか、遠藤氏は立憲との関係について「いきなり"さよなら"って言うことはできない」と答えたと話す。維新内部でも立憲との「共闘」をめぐっては、大阪府議団が一時「断固反対」の姿勢を示すなど混乱したものの、先の臨時国会を通じて大きな成果を残し、野党第一党である立憲と連携することの「うま味」も実感した。

党としてここで方針を変えることは道理が通らないというわけだ。維新の立場に茂木幹事長も理解を示したというが、同時に大阪・関西万博やIR(カジノを含む統合型リゾート)への"協力"を念押しすることも忘れなかったという。大阪を地盤とする維新にとって、万博やIRの成功はまさに「生命線」とも言え、自民党との対立は避けたいのが本音だ。

自民、立憲の幹部が相次いで「万博会場視察」へ
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こんな中、突如浮上したのが「万博会場の視察」だ。関係者によると、自民党の茂木幹事長が1月18日に万博会場となる大阪市・此花区の夢洲やアクセス道路となる阪神高速・淀川左岸線を視察する予定だ。視察では、大阪府の吉村洋文知事と大阪市の松井一郎市長が茂木氏を案内する念の入れようだ。また立憲民主党も1月20日に岡田幹事長や安住国対委員長が会場を視察する方向で調整が進められている。関係者は、自民と立憲幹部の相次ぐ視察で、「政治の万博への関与」を明確にして機運醸成を図りたいとしている。
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立憲の安住国対委員長は1月12日の会見で「どういう予算、コンセプトでやるかを、万博そのものに対して我々別にネガティブじゃないので、一度はちょっと見させていただいた方がよかろうということ」と述べた。そのうえで「たまたま茂木さんも行くんですかね。日がちょっとずれちゃったんだけど、ずれてよかったよね。一緒に行っていたら大変なことになるから」と指摘するのを忘れなかった。

両党幹部の会場視察については大阪府市=行政が対応する形となるが、立憲としては維新の生命線である万博に配慮しながら、野党ペースで国会を進めたい思惑が見え隠れする。一方、立憲のベテラン議員は視察に疑義を呈した。「維新と共闘するなら国会の中だけにしてほしい。大阪までそれを持ちこまれても困る」春の統一地方選を控え、維新との接近は立憲の立ち位置を曇らせ、支持層の離反を招くと危惧しているのだ。「有権者からは理念や考え方が違う維新との接近について『何がしたいのかよくわからない』とおしかりを受けます。IRの問題もあるし」同様の批判の声は、大阪に加え兵庫や京都の議員からも出ているといい、視察がもたらした軋轢は決して小さくない。

一方の維新は「万博」というカードを使って、通常国会においても自民と立憲を相手に「キャスティングボート」を握りたいとの思惑も透けてみえる。開幕まで2年余りとなった万博と政治との距離感は、今の国会を映し出す「鏡」でもある。

毎日放送報道情報局 解説委員 三澤肇