にこやかにグータッチをする2人…立憲民主党の安住淳国対委員長と日本維新の会の遠藤敬国対委員長だ。2人は10月に招集される臨時国会で「共闘」すると9月21日、高らかに宣言したのだ。そもそも「水と油」と言われた両党がなぜ手を握ることになったのか…その『舞台裏』を取材した。
密かに協議を続けた「立憲」と「維新」の両国対委員長
この1週間前の9月15日(木)の午後。衆議院第一議員会館の部屋で、2人は向き合っていた。協議は安住氏側から持ち掛けたもので、話し合いに安住氏は一枚の資料を持参していたという。そこには臨時国会で立憲と維新がお互いに協力できる内容が記されていた。
紙には次の4項目が列挙されていたという。
1.「臨時国会を要求した場合、20日以内に内閣が国会召集を義務付ける国会法の改正案提出」
2.「10増10減の公選法改正案の臨時国会での成立」
3.「通園バスの置き去り防止装置の義務化」
4.「旧統一教会問題に端を発する"霊感商法"や"高額献金"の被害防止に関する法的整備」
これらの事項で立憲と維新が協力していくことに、維新の遠藤国対委員長も同意し、翌週の9月21日に両党の国対委員長会談を開くことで話はまとまったという。その後も2人は電話で連絡を取り合い、これら4項目に加え「文書通信交通滞在費(現・調査研究広報滞在費)の法案成立」や「若者や子育て世代向けの経済対策」も追加されることになった。
突如、浮上した「共闘」の文言
9月21日、2人は国会内で国対委員長会談に臨んだ。冒頭撮影が終わり、マスコミが退室すると、安住国対委員長はジャケットの内ポケットから「立憲民主党・日本維新の会 合意事項」と書かれた紙を取り出したという。維新の遠藤国対委員長は、その紙を見てある言葉に目が留まったという。紙には両党が「国会内で『共闘』する」と書かれていたのだ。事前に『共闘』という文言が入ることを、遠藤国対委員長は全く知らされていなかった。
そして当時の状況について遠藤氏はMBSの取材に次のように語った。
(日本維新の会 遠藤敬国対委員長)
「なるほど(安住さんは)仕掛けてきたなと。ただ水を差しても仕方がないし、多方面にわたるものではなく、限定した6項目の『共闘』で、維新の土俵で、勝負できる自信はあったので黙認した。維新としての『線』は、全くずれていない」
立憲の国対関係者も文書については『何も知らされていなかった』というが、安住委員長なら『あり得る』と文書を見て思ったという。
この立憲の国対関係者は次のように話している。
(立憲国対関係者)
「『政策別連携対応型国会』と安住さんが言った時点で、それは政策によって維新とも共産とも組むという意味だから別に驚かない。何よりも、国葬の問題で、維新と立憲が連携し、岸田総理を国会に引きずり出し、閉会中審査でもかなりの時間を割くことができた。維新も野党筆頭の立憲と組む"うまみ"を実感したのではないか」
一方、関西の立憲関係者は「維新と共闘するなら、ポスターをぜんぶ剥がしてくれ」という有権者から抗議の電話に戸惑ったという。維新との共闘は"一部有権者の離反"を招きかねないが、一方でこんな期待ものぞかせた「維新との共闘で、旧民主を支持してくれていた"保守層"が戻ってくれるかもしれない」
維新内部にも走った「激震」
一方、維新内にも激震が走っていた。維新幹部によると、立憲との"共闘"と報道されてから党本部には支援者から批判的な電話が多く寄せられているという。「支援者からは選挙協力をするのか?とお叱りの電話が多くきていて対応に追われている」また別の党関係者はこう口にする。「突然のことでした。会談の後、遠藤国対委員長から興奮気味に電話が来て、そこで初めて知りました」この党関係者は、今回の急接近の背景には、代表が変わった影響もあるのではと指摘する。
「立憲共産は野合談合の選挙互助会だ!と他党を痛烈に批判してきた松井氏の手法は、蛮族的でした。あれがいいという人もいるのでしょうが、僕は協力できるところは他党と協力するべきだと思います。馬場さんに代表が変わり、蛮族から文化人に変わるチャンスなんじゃないですか?」
一方で立憲と関係が近くなることについては「個人レベルでは仲がいい人もいますし、すごいなと思う人もいます。ただ立憲という集団になると途端に...ですよね」との意見もあった。
今回の共闘はあくまで「6項目」に限った内容だが、"選挙協力"について問われた維新の前代表・松井一郎氏は「あれだけ立憲・共産の政策を横においた"野合談合選挙補助会"を批判してきたんだから。今の馬場代表執行部でまさかそんなこと(立憲との選挙協力)やれば吹っ飛ぶでしょうね。そういうことになれば、一有権者、一国民として大批判キャンペーンやります」と、選挙協力には否定的な考えを示した。
一方、立憲民主党の泉代表も会見で「大阪の松井さんの発言っていうのは、引退間近で、ちょっと"老害的な発言"だなと思いますね。今になって怪気炎を上げる必要はないのかなと思います」と松井氏の発言をけん制するなど「水と油」を彷彿とさせるやり取りも見られる。
10月3日に召集される見通しの臨時国会。立憲と維新の「共闘」がうまく機能するのかどうか...。
毎日放送 東京報道部 三澤肇/尾藤貴裕