9月29日に投開票が行われる自民党総裁選。コロナ禍の総裁選であるがゆえに地方遊説などができず、各陣営はSNS対策に力を入れるなど、これまでとは違う形でラストスパートに入った。

 河野太郎氏は自らが運営するツイッターで240万人以上のフォロワーを誇り、総裁選でも普段から行っているSNS発信を中心に展開する。推薦人の平将明衆院議員は「河野氏の独自色を活かしつつ、政策を特設ページで見やすくするなど、あくまで部分的なフォローに徹するのみ」と語る。

 岸田文雄氏は家族総出でインスタライブを展開。長男の翔太郎氏が『初デートの場所は?』と問いかけると、夫人の裕子氏は『マハラジャ』と答えたものの、岸田氏は『忘れた』と返すなど"ファミリーバリュー"を強調する。

 9月25日、野田聖子氏は選対本部長の三原じゅん子参院議員と自民党のインターネット動画チャンネル『CafeSta』に出演。総裁選の裏側を語るなどしたが、実はこの野田氏の推薦人20人集めに大きく貢献したのは元夫の鶴保庸介参議院議員だという。同じ野田選対の一人は『政治家としての信頼があるからこその行動ではないか』というが、なぜ"別れた妻"を応援するのかという疑問は残る。総裁選では、元夫に支えられている女性候補がもう一人いる...高市早苗氏だ。

政治家夫婦は別れてもなお...

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 9月24日、ギター片手に高市氏の政策の替え歌を熱唱するのは、旧知の間柄だという嘉門タツオ氏。笑顔の高市氏を「チャラリ~奈良から総裁!」と持ち上げた。

 高市氏の支援をいち早く訴えた人がいる。山本拓衆院議員だ。当選8回のベテラン議員だが、何を隠そう高市氏の元夫だ。2004年に結婚し、4年前の2017年に離婚している。山本議員は、河野氏を支援する小泉進次郎環境大臣が高市氏の「エネルギー政策」を批判したことにかみつき、公開質問状を出すなど、高市氏の"ボディーガード"を自称している。

 山本議員に直接話を聞くと、山本議員は高市氏の評価について次のように話しました。

 (山本拓衆院議員)
 「女性総理の誕生というのは私としても、自民党にとっても、イメージを変えるのに良いと思っていた。彼女(高市氏)のことは誰よりも元夫ですから知っている。彼女の性格は真面目だし、勉強家だし、ブレないし政策も一貫しているし、だから説明責任を果たす力を持っている。イメージ的にはサッチャーみたいな」

 山本議員は高市氏について"鉄の女"を地で行く女性で、政策の議論では絶対に負けず『初の女性総理』にはうってつけだという。また、単刀直入に『なぜ、別れた妻を応援するのか?』と尋ねると、山本議員から次のような答えが返ってきた。

 (山本拓衆院議員)
 「好きとか嫌いとか男女間、夫婦間の別れる、どうのこうのはありますが、要は2人とも政治家の夫婦だったということ。お互いに主体は選挙区にあり、生活もすれ違いだし、元々付き合っている政治グループが全然違うし、夫婦でいるとそれぞれのグループで警戒されてしまう。何かしっくりいかないよねと、どっちみちすれ違い夫婦だし政治家稼業を優先したら、籍を抜いたほうがいいよねと同意して離婚した」

 一方で、離婚後も高市氏は山本議員の地元である福井県に来るたびに、両親の墓参りを欠かさないなど義理堅い一面もあるのだという。インタビューの最後に『いまも高市氏のことが好きなのでないか?』と水を向けると次のような答えが返ってきた。

 (山本拓衆院議員)
 「かもしれんね...嫌いじゃないし。だけどもう一回(一緒に)生活するのはしんどい(笑)」

 はにかんで語る表情からは、結婚生活が破綻しても、政治家としての信頼を抱き続ける複雑な心境が垣間見えた。『政治家夫婦は別れてもなお...』とかく権力闘争が強調される総裁選にあって、隠れた人間模様を垣間見たような気がした。

 毎日放送報道情報局 解説委員 三澤肇