きょう(3月31日)決勝を迎えた高校ラグビーの選抜大会。準々決勝・準決勝の試合を振り返ります。

【準々決勝】<御所実vs国学院栃木>10対10の同点…トライ数で決着

 第1試合は、1・2回戦を危なげなく勝ち上がってきた御所実(奈良)と、去年の1回戦で敗退した国学院栃木にリベンジを果たし、勢いに乗って2回戦も突破した佐賀工(佐賀)の対戦。前半は、勢いそのままに佐賀工がペースを握ります。

 開始4分、LO本田隆成選手の果敢なキックチャージで敵陣深くまで攻め込むと、その後は、確実にボールをキープしながら攻め続けます。そして11分、FB岩屋武琉選手がPGに成功して3点をリードします。さらに28分、SO吉浦太我選手の絶妙なキックで敵陣22mラインの内側まで攻め込むと、ラインアウトからのモールを10m以上押し込んでHO秀島聡太郎選手がトライ。角度の無い位置から岩屋選手が見事にゴールも決めて、10対0。前半は佐賀工が一方的にリードして折り返しました。

 一方、前半は佐賀工の勢いの前になかなか敵陣に入ることができず苦しんだ御所実は、風上の後半に入るとようやく本来の動きを取り戻します。FW周辺で勝負してくる佐賀工に対し、うまくボールを動かしながらペナルティーを誘発すると、キックを使って敵陣深くまで攻め込んでいきます。そして後半6分、トライラインまで5mのラインアウトからモールを押し込んだ後、FW陣が連続攻撃を仕掛けて途中出場の久賀虎ノ介選手が佐賀工のディフェンスを突き破ってトライ。さらに12分、再び佐賀工のペナルティーで敵陣22mラインの内側まで攻め込むと、今度はラインアウトからのモールを一気に押し込んでトライ。ついに10対10の同点に追いつきました。

 その後も得意のモール攻撃を軸に、敵陣で試合を進める御所実。しかし、大事なところでミスが出て、なかなか得点につなげることができません。一方、このままではトライ数で相手が上回っているために、次戦(準決勝)に進めない佐賀工も懸命の反撃を試みますが、御所の分厚いディフェンスの前に、思い切った攻撃を仕掛けることができません。両チームがスコアーを動かすことができないまま、刻々と時間が過ぎていきます。

 そして、残り時間も少なくなった後半の27分。佐賀工にビッグプレーが生まれます。センターライン付近で強烈なタックルを決めて御所実のペナルティーを誘発。追いつかれてからはじめて、敵陣でのチャンスをつかみます。このチャンスに佐賀工は、タッチキックによるエリアは狙わず、ショットを選択。岩屋選手のキックに勝ち越しを託します。45m以上ある長い距離、向かい風の中、岩屋選手がゴールを狙いますが、キックはわずかに届かず勝ち越しとはなりません。

 それでも、諦めずにプレッシャーをかける佐賀工の選手たち。御所実のインゴールドロップアウトに持ち込んで最後のチャンスに望みを託します。そのままロスタイムに突入しても果敢に攻め続ける佐賀工。しかし、最後は御所実の勝利への執念が上回りました。規律のとれたディフェンスで佐賀工の反撃を断ち切ると、自らがボールを蹴り出してノーサイド。10対10の同点で、御所実がトライ数で上回り、6年ぶりのベスト4進出を決めました。

【準々決勝】<東福岡vs大阪桐蔭>終盤で劇的な勝ち越しトライ!伝統校の底力を見せつける

 準々決勝第3試合は、今大会の連覇を狙う大阪桐蔭(大阪)と東福岡(福岡)の対戦。こちらも、最後の最後まで目が離せない劇的な展開になりました。

 先にペースをつかんだのは前回大会王者の大阪桐蔭。キックオフから勢いよく攻め込み敵陣で試合を進めると、開始5分、ラインアウトのボールが後ろに流れたところを直接キャッチしたSH福島悠右選手が、そのままディフェンスを上手くすり抜けてトライ。ゴールも決めて7点をリードします。

 一方の東福岡も反撃。前半12分、東福岡らしい一人一人が判断よく相手をずらしていく連続攻撃で大阪桐蔭陣内深くまで攻めこむと、ディフェンスラインのギャップで上手くパスを受けたFL内田瑛佑選手がそのまま中央にトライ。ゴールも決めて7対7の同点に追いつきます。

 その後は、両チームの意地と意地のぶつかり合い。東福岡がボールをつなぎながら一人一人の当たりの強さとスキルで前に出ようとすると、大阪桐蔭はスクラム・ラインアウトといったセットプレーの安定感と持ち味のフィジカルで対抗。ともに譲らない時間が続きます。

 ようやくスコアが動いたのは24分。東福岡がSO川添丈選手のPGで10対7とリードを奪うも、大阪桐蔭もあせらず反撃。29分にはゴール前のスクラムを押しこんだ後の素早い展開から、最後はPR国分僚太選手が左隅に飛び込んで12対10。前半は、大阪桐蔭が逆転して終了しました。

 逆転して勢いの出た大阪桐蔭。後半に入っても、開始直後から東福岡を自陣の22mラインの内側にくぎ付けにして攻め続けます。しかし、東福岡の粘り強いディフェンスの前に、最後の最後でミスが出て得点につなげることができません。一方の東福岡も、FB早坂俊吾選手の快走から、ようやくチャンスをつかみますが、こちらも大事なところでミスが出て、チャンスを生かすことができません。試合は、12対10のまま終盤に突入します。

 どちらが先にチャンスをものにするか。手に汗握る攻防の中、先に試合の流れを引き寄せたのは大阪桐蔭でした。22分、大阪桐蔭はトライエリアまであとわずかの位置まで攻め込むと、ラインアウトから後ろに流れたボールに再びSH福島選手が反応してトライ。前半と同じ形からトライを奪って17対10とリードをひろげました。

 ところが、直後のキックオフで手痛いミス。規律が乱れてペナルティーを犯してしまいます。トライ数を考えると、準決勝に進むためには、2チャンス以上が必要な東福岡に短い時間でチャンスを与えてしまいました。このチャンスに東福岡は、敵陣22mラインの内側まで攻め込むと、準備してきたプレーを鮮やかに決めてWTB平尾龍太選手が中央にトライ。ゴールも決めて17対17の同点に追いつきました。

 このまま試合が終われば、大阪桐蔭が準決勝進出。残り時間は約5分。勝ち越しを狙ってボールを保持しながら攻め続ける東福岡と、集中力あるディフェンスで東福岡を押し込む大阪桐蔭。文字どおり、両チームの勝利への執念がぶつかり合う時間が続きます。

 そしてロスタイムに突入した35分。ボールをキープしながら試合を終わらせようとする大阪桐蔭に、東福岡は執念で絡んでペナルティーを誘うと、22mライン付近からのラストワンプレーとなった攻撃を粘り強く継続していきます。最後はSO川添丈選手がタックルを次々と振り切って、ゴールポストの左横へ劇的な勝ち越しのトライ。ゴールも決めて24対17。終盤で伝統校の底力を見せつけた東福岡が、大阪桐蔭の分厚いディフェンスを最後の最後で打ち破ってベスト4進出を果たしました。

<準々決勝その他>神奈川対決・京都対決を制したのは?

 神奈川対決となった第2試合は、桐蔭学園(神奈川)が花園の全国高校ラグビー大会連覇中の実力を発揮しました。神奈川大会では引き分け、関東大会では7点差で辛勝した相手に、この試合は前半から圧倒します。先制点こそ許したものの、9分、13分とトライを奪って逆転に成功すると、さらに1トライを追加。後半にも、桐蔭学園らしい全員が連動したテンポのいい攻撃から3トライを奪って43対17で快勝しました。2大会ぶりの選抜王者を狙う桐蔭学園。コロナの影響で中止となった21回大会を除いて、第17回大会から9大会連続のベスト4進出です。

 京都工学院と京都成章の京都対決は、近畿大会でも準優勝するなどチームの完成度の高さを披露している京都成章が終始リードする展開で、粘る京都工学院を振り切りました。開始4分にPGで3点を先制した京都成章は、その後同点に追いつかれますが、15分にSH佐藤啓護選手のトライで京都工学院を突き放すと、前半だけで3つのトライを奪って22対10とリードします。後半も一時は5点差まで追い上げられますが、10分にNO8南川祐樹選手のトライで再び点差を拡げると、3点差に詰め寄られた後半18分には、WTB尾関仁選手が40m以上を1人で走り切ってトライ。粘る京都工学院を振り切りました。ライバルとの激闘を34対24で制した京都成章、第20大会以来の選抜大会準決勝進出です。

<準々決勝の結果>(3月27日)
御所実  10-10 佐賀工(トライ数で御所実が上回り準決勝進出)
桐蔭学園 43-17 東海大相模
東福岡  24-17 大阪桐蔭
京都成章 34-24 京都工学院

【準決勝】<桐蔭学園vs御所実>花園連覇の実力を見せて決勝へ

 第1試合で持ち味のモール攻撃としぶといディフェンスを武器に接戦をものにしてきた御所実(奈良)と、試合を重ねるごとにチームとしての進化を重ね危なげなく勝ち上がってきた桐蔭学園(神奈川)の対戦。

 気温5℃、時折冷たい雨もちらつくなか始まったこの試合。立ち上がりは、御所実がペースを握ります。キックオフから鋭い出足で桐蔭学園にプレッシャーをかけてボールを確保すると、桐蔭学園を自陣22mラインの内側に押し込んで波状攻撃を仕掛けていきます。

 しかし、さすがは2年連続で花園の全国高校ラグビーフットボール大会を制覇している桐蔭学園。攻め込まれながらも、ギリギリのところで得点を許しません。3分には、御所実のPR藤井威吹選手にトライエリアに飛び込まれますが、CTB坪井悠選手がうまく下に入ってグラウディングを許さずピンチを脱出します。

 そして前半16分、この試合初めて御所実陣内深くまで攻め込むと、確実にチャンスをものにします。しっかりとしたサポートの連続でラックを支配し攻撃を継続していくと、最後はキャプテンのHO堂薗尚悟選手が判断よくディフェンスのギャップをついてトライ。5点をリードします。

 桐蔭学園はさらに26分、ターンオーバーからの素早い出足で敵陣深くまで攻め込むと、FW陣がスクラムを押し込んだ後、素早く左に展開して、WTB西本友哉選手が左隅にトライ。桐蔭学園、ここぞという場面で取り切る力を見せつけて、10対0とリードをひろげて前半を折り返します。

 サイドの変わった後半、雨の中というコンディションを考慮し、キックを使って反撃を試みる御所実。しかし、桐蔭学園BK陣の落ち着いたキック処理とFW陣のプレッシャーの前になかなか敵陣深くまで攻め込むことができません。15分を過ぎてからは、自陣からでも思いきったパスをつないでいきますが、冷たい雨の影響もあってボールが手につかず、有効な攻撃につなげることができません。逆にハンドリングエラーで相手に好機を与えてしまいます。

 このチャンスを桐蔭学園は見逃しませんでした。後半21分、全員が連動した動きを見せてトライエリアまであとわずかの位置まで迫ると、最後は優位に立っているスクラムでプレッシャーをかけた後、FW陣がじわりじわりと前進してキャプテンの堂薗選手が中央にトライ。ゴールも決めて17対0として勝負を決定づけました。その後の御所実の反撃も無得点に抑えた桐蔭学園。5度目の頂点を目指して2大会の決勝進出です。

【準決勝】<京都成章vs東福岡>勢いに乗る両チームの対決

 第2試合は、準々決勝で前回大会の王者・大阪桐蔭に最後の最後で逆転勝ちした東福岡(福岡)と、京都工学院との京都勢対決に勝利した京都成章(京都)、勢いに乗る両チームの対決となりました。

 一人一人のスキルの高さと攻撃力が自慢の東福岡と、アグレッシブなディフェンスと組織力を誇る京都成章。序盤から両チームが激しくぶつかり合う緊迫した攻防が続きます。前半11分、先に相手陣内深くまで攻め込んだのは京都成章でした。WTB篠颯太郎選手の絶妙のキックでトライエリアまであとわずかまでに迫ります。しかし、東福岡の粘り強いディフェンスの前に、5分近く攻め込みながらチャンスを生かすことができません。逆に東福岡は18分、京都成章陣内深くまで攻め込むと、ラインアウトからのモールを一気に押し込んでトライ。5点のリードを奪います。

 攻め込みながらもチャンスをものにできず、逆襲されて先制を許した京都成章。しかし、選手たちは落ち着いていました。その6分後、持ち味のディフェンスで東福岡のペナルティーを誘発すると、キックで敵陣まで攻め込んだチャンスを生かします。「モールで奪われたらモールで奪い返す」とばかりに、東福岡陣内22mライン付近のラインアウトからモールを形成すると、そのまま一気に押し込んでトライ。5対5の同点に追いつきました。

 さらに、勝ち越しを狙った東福岡の攻撃を食い止めた後の前半終了間際、再び敵陣22mラインの内側でラインアウトからモールをつくると、今度は右に左にうまくポイントをずらしながら前進していきます、最後はHO米本啓太朗選手が判断よく抜け出してトライ。前半は、京都成章が10対5と逆転して終了しました。

 サイドの変わった後半、試合の流れを左右する重要な局面でも先にスコアを動かしたのは京都成章でした。両チームが慎重な後半の入りを見せ、キックを蹴りあう場面が増える中、9分過ぎには相手キッカーにうまくプレッシャーをかけて敵陣22mラインの内側まで攻め込みます。そしてラインアウトからモールをつくると、FW陣が一塊となって押し込み、トライエリアまで5mという絶好の位置まで迫ります。このチャンスに、京都成章は再びラインアウトからモールを形成すると、巧みなコントロールからHO米本選手がこの日3本目のトライ。CTB森岡悠良選手がゴールも決めて17対5とリードをひろげました。

 3本連続で京都成章のラインアウトからのモール攻撃を止めることができず、トライを許した東福岡。このあとは、相手ボールでのラインアウトを避け、自陣からでも仕掛けていく作戦に切り替えます。しかし、雨で足元が安定しない上、ボールも滑りやすい難しいコンディション。さらに、ディフェンスが持ち味の京都成章が相手とあっては、なかなか狙い通りに敵陣深くまでボールを持ち込むことができません。

 逆に京都成章は23分、ハイパントのボールにFW陣が塊となって反応しボールを確保すると、その勢いのまま素早くボールを動かしてトライエリアに迫ります。最後は細かくパスをつなぎながらCTB森岡選手がトライ。東福岡の反撃ムードを断ち切るトライで22対5として勝負を決めました。難しいコンディションも味方につけて、チーム一丸で難敵を下した京都成章。8大会ぶり2回目の決勝進出です。

<準決勝の結果>(3月29日)

桐蔭学園 17-0 御所実
京都成章 22-5 東福岡

<決勝戦>(3月31日)

 決勝戦は第18回大会と同じ顔合わせ。大会史上3回目の神奈川対京都の決勝対決となりました。

 桐蔭学園 対 京都成章 午前11時キックオフ