3月18日に始まった第97回選抜高校野球大会。大会3日目は、近畿勢2校が登場。第2試合で、奈良の天理が山梨学院(山梨)と、第3試合では兵庫の東洋大姫路が壱岐(長崎)と対戦しました。
【天理vs山梨学院】天理の“守備の要”が負傷交代 リード直後に逆転を許す
奈良大会と近畿大会では、下坊大陸投手から伊藤達也投手への継投で結果を残してきた天理。この試合も、序盤は先発の下坊投手が粘り強いピッチングをみせます。3回まで強力・山梨学院打線を相手にランナーを出しながらも得点を許しません。打線が粘投にこたえたのは3回裏。山梨学院の2人の投手をせめて満塁とすると、石井翔太選手が押し出しのデッドボール。1点を先制します。しかし、このデッドボールで石井選手が負傷。守備の要のキャッチャーが交代するアクシデントに見舞われます。
「キャッチャーが変わって、少し動揺があったかもしれない」と藤原忠理監督が振り返った天理。続く4回表、守備の乱れもあって2アウト2塁、3塁とピンチを招くと、山梨学院の8番・鳴海柚莱選手に左中間に運ばれて2失点。リードした直後の失点で、逆転を許してしまいました。
必勝リレーに命運を託した天理
さらに6回表、2アウトながら2塁のピンチを招くと、バッターボックスには再び鳴海選手。ここで天理ベンチが動きます。下坊投手から伊藤投手にスイッチ。これまでチームを支えてきた必勝リレーに命運を託します。「ここは絶対に抑えるという強い気持ちではいった」という伊藤投手。しかし、その気持ちが力みにつながってしまいました。コントロールが定まらず、まさかの4連続フォアボールで、さらに2点を失ってしまいました。
9回にも1点を奪われて5対1と差を拡げられた天理。それでもあきらめずに食い下がります。その裏、2アウトながら満塁と、ホームランが出れば同点の場面をつくります。ここでバッターボックスには下坊選手。「(次の打者の伊藤選手に)つなごうという気持ちで入った。とらえた思った打席だったが…」と語った打球は、ライトが好捕してゲームセット。天理は勝利への執念を見せるも、おととしの95回大会の王者・山梨学院の前に、力及ばず1回戦で姿を消しました。
「甲子園に来るだけでなく、もっともっとレベルアップして、夏は甲子園で勝つ姿を(これまでお世話になった方々に)見てもらいたい」と語った下坊大陸選手。このあとの進化に期待です。
【東洋大姫路vs壱岐】初回から流れをつかんだ壱岐が優勝候補に襲い掛かる
続く第3試合は、エース阪下漣投手を中心に見事な戦いぶりで近畿大会を制して久しぶりのセンバツ出場を手にした兵庫の東洋大姫路と、21世紀枠として甲子園初出場を果たした壱岐(長崎)の対戦。13日に行われた甲子園練習の中で、東洋大姫路・渡辺拓雲主将が「相手の応援団や姫路の方々も含めて、すごい雰囲気になると思う」と話していたとおり、注目の一戦には超満員の観衆が来場。一球一球に球場全体がどよめく、すさまじい雰囲気の中での試合になります。
大観衆が見つめる中、先に流れをつかんだのは壱岐。アルプススタンドを埋めつくした応援団を背に、ハツラツとした動きを見せます。1回裏、制球に苦しむ阪下投手から、2アウト2塁、3塁のチャンスをつくると、5番・山口廉斗選手がライト前へタイムリーヒット。優勝候補から2点のリードを奪います。前日からひじの違和感があり、思うような投球ができなかったという阪下投手は、この1回でマウンドを降りました。
「まだ始まったばかり、十分挽回できる」監督の言葉で落ち着きを取り戻した東洋大大姫路の選手たち
球場全体を味方につけて、好プレーを連発する壱岐。さらにはエースを襲ったアクシデント、それでも、東洋大大姫路の選手たちは落ち着いていました。岡田龍生監督の「まだ始まったばかり、十分挽回できる」の言葉に、落ち着きを取り戻すことができたと語った選手たち。2回から登板した木下鷹大投手が、140キロ台を連発する力強い投球で壱岐を抑えて攻撃のリズムをつくると、4回には、7番・渡辺裕太選手のタイムリーツーベースで2対1と1点差に迫ります。
さらに5回、先頭の木下選手が自らのスリーベースヒットでノーアウト3塁のチャンスをつくると、トップバッターの渡辺拓雲主将がライトへのタイムリーヒットを放ち、ついに2対2の同点に追いつきます。
東洋大姫路打線が止まらない!連続タイムリーで勝ち越し、さらにリード広げる
こうなると東洋大姫路の勢いは止まりません。さらに1アウト2塁から、3番・高畑知季選手が勝ち越しのタイムリースリーベース。この後、4番・木村颯太選手、5番・白鳥翔哉真選手にもタイムリーが飛び出して、この回一挙5点、打者11人の猛攻で6対2と大きくリードを奪います。壱岐の大黒柱、浦上脩吾投手の変化球を、3巡目ではきっちりととらえた東洋大姫路打線がさすがの破壊力をみせました。
それでも、ここから壱岐が粘ります。6回から浦上投手に代わってファーストからマウンドに上がった日高陵真投手が好投。打線に火が付いた東洋大姫路の追加点を7回の1点に抑えて、味方の反撃に望みを託します。
しかし、東洋大姫路の木下投手は落ち着いていました。6回、内野陣のエラーで招いたピンチを三振で切り抜けると、7回以降は1人のランナーも許さない安定感抜群のピッチング。大応援団の声援を力に変えて向かってくる壱岐の反撃を断ち切りました。
「壱岐への大声援も、自分たちへの応援だと思って、落ち着いて投げることができた」と振り返った木下鷹大投手。秋の公式戦では故障の影響もあってベンチ入りできなかった逸材が、この冬、努力を積み重ねてチームを7対2の勝利に導きました。
一方、優勝候補相手に大健闘の戦いぶりをみせた初出場の壱岐。甲子園で躍動した選手たちの姿に、最後まで拍手が鳴りやみませんでした。
「試合前から多くの方々が頑張れよと声をかけてくれて力になった。夏またここに来られるように努力していきたい」と話した浦上主将。固い決意を残して、甲子園を後にしました。
大会3日目の結果は以下のとおり。第1試合は、西日本短大付の打線が爆発して、大垣日大に快勝。天理に勝利した山梨学院と2回戦で対戦します。
【大会3日目(結果)】
西日本短大付(福岡)6-0 大垣日大(岐阜)
山梨学院(山梨) 5-1 天理(奈良)
東洋大姫路(兵庫) 7-2 壱岐(長崎)
大会4日目、3月21日の第1試合で横浜清陵(神奈川)に10対2で勝利した広島商(広島)が、2回戦で東洋大姫路と対戦します。