(画像:関西学院 植田翔来選手)

 高校ラグビー近畿大会2日目の2月16日(日)、準々決勝の4試合が神戸総合運動公園で行われました。

京都工学院vs御所実 堅い守備が持ち味のチーム同士の対戦

 ユニバー記念補助競技場で行われた第1試合は、1回戦で八幡工(滋賀)に圧勝した京都工学院と奈良の実力校・御所実の対戦。ともに堅いディフェンスが持ち味の両チーム。前半は予想どおりのしのぎあいとなります。

 開始4分に京都工学院が御所実のキック処理のミスを突いてPGで先制点を奪いますが、その後は一進一退。風上の御所実がキックを使ってエリアを確保、得意のモール攻撃から仕掛けようとしますが、京都工学院が上手く絡んで前進を許しません。さらにはキャプテンのSO杉山祐太朗選手を中心としたバックス陣が的確な処理でキックに対応、ピンチをしのいでいきます。

 一方、京都工学院もカウンター攻撃から何度かチャンスをつくりますが、強風の中でラインアウトが安定せずなかなか得点に結びつけることができません。攻め込んだ方が、粘り強いディフェンスに崩されてボールを失う展開で時間が経過していきます。

 試合が動いたのは、前半も残り少なくなった27分すぎでした。京都工学院の杉山選手が攻め上がった隙をついて、御所実はSH藤澤幸謙選手が、判断よく京都工学院の深いゾーンボールをけりこみます。京都工学院にとっては、プレッシャーのかかる自陣深い位置でのラインアウト。このラインアウトからの展開に御所実の選手たちが勢いよくプレッシャーをかけていきます。

 そして29分、トライエリアに押し込まれた京都工学院が何とかキックしたボールをキャッチした御所実のFB富田琉生選手がすかさず攻撃につなげていくと、最後はテンポよくボールをつないでWTB井春太朗選手が左隅にトライ。前半は、風上の御所実が5対3と逆転して終了します。

「花園で躍動した京都工学院を破ると燃えていた」アグレッシブな守備をみせた御所実が勝利

(画像:御所実 津村晃志主将)

 サイドの変わった後半、先に得点を奪ったのも御所実でした。後半開始早々のピンチを集中力の高いディフェンスで切り抜けると、そこから一気に逆襲します。後半9分、トライラインまで7m付近のラインアウトからのモールをFW陣が一塊となって押し込んでトライ。前半は、京都工学院の対応に苦しんだモールを見事に修正して10対3とリードをひろげました。

 それでも差は7点、京都工学院も風上を上手く利用して慌てず反撃します。直後のキックオフから鋭い出足で御所実の反則を誘うと、杉山選手の絶妙なキックで御所実陣内深くまで攻め込みます。そして13分、御所実のお株を奪う巧みなモールコントロールから途中出場の1年生、羽場瑛都選手がトライ。難しい角度のゴールを杉山選手が見事に決めて10対10の同点に追いつきました。

 しかし、キャプテンのLO津村晃志選手が「昨年は、絶対にいけると思っていた花園に、(奈良県の決勝で天理に敗れて)いけなかった。京都工学院は、その花園で躍動していたチーム。試合前から、その京都工学院を破るとチームのみんなが燃えていた」と振り返った御所実が素晴らしい集中力をみせて、すぐさま京都工学院を突き放します。直後のキックオフから全員が連動して京都工学院に襲い掛かると、アグレッシブに前に出るディフェンスで相手ボールを奪って京都工学院の反則を誘います。さらに早い仕掛けから藤澤選手がトライ。ゴールも決めて17対10とあっという間に、再び7点のリードを奪いました。

 追いついたのも束の間、トライ数を考えると準決勝に進むためには、2チャンス以上が必要な京都工学院。キックでエリアを獲るのではなく、自陣からでもボールをつなぎながら仕掛けていきます。こうなると御所実の思惑どおり、勢いは止まりません。再びディフェンスから試合の流れを引き寄せます。またしてもアグレッシブなディフェンスで京都工学院からボールを奪うと、修正したモール攻撃で、時間を使いながらじりじりと京都工学院陣内深くまで攻め込んでいきます。

 そして23分、モールを押し込んだ後、FW陣の力強い突破から最後はPR藤井威吹選手がトライ、ゴールも決めて24対10として勝負を決定づけました。津村主将が「昨年の悔しさを晴らすためにも、近畿大会に優勝して選抜大会に臨みたい」と語った御所実がディフェンスでのプレッシャーの掛け合いに勝利して、見事にベスト4進出です。

報徳学園vs関西学院 兵庫のライバル同士が激突

 同じ時間、隣のユニバー記念競技場で行われた第1試合では、兵庫県大会を優勝して、この大会は2回戦から登場の報徳学園が、1回戦は光泉カトリック(滋賀)に苦戦しながらも勝利した同じ兵庫県のライバル・関西学院を迎え撃ちました。

 兵庫県大会では、報徳学園のバックス陣のスピードと決定力が目立った両チームの激突。前半は、その報徳学園がペースを握ります。開始8分にWTB村田一眞選手の巧みなランニングで先制のトライを奪うと、7対7と同点にされた25分にも再び報徳学園らしい高いハンドリング技術をベースとしたスピーディーな展開から村田選手がトライ。さらに前半終了間際にはFWでトライを奪って17対7と10点のリードで折り返します。

 一方、安藤昌宏監督が「兵庫県(新人)大会で敗れてから、自分たちに何が足りないか課題を徹底的に見つめなおして取り組んできた」と語った関西学院。後半に入ると、前にしっかり出るディフェンスで報徳学園に追加点を許しません。そして16分、一人一人が丁寧にボールをつなぎながら走り続けて攻め続ける攻撃で得点に結びつけます。最後はWTB濱田啓太選手がトライし、17対12と5点差に詰め寄りました。

関西学院・植田選手「最後まで全員が体を張って前に出続けたことが勝利につながった」

 次のチャンスをどちらがものにするか。攻める報徳学園に対して激しいディフェンスをみせる関西学院。互角の攻防が続く中、21分に報徳学園にチャンスが訪れます。ゴール中央やや右より、22mライン付近で関西学院が反則。ワンチャンスでは逆転できない点差を考えて当然のようにPGを狙います。しかし、このキックは左にそれてゴールならず、追加点のチャンスを逃してしまいました。

 これでさらに勢いの出た関西学院。連戦の中、後半の苦しい時間帯になっても走力が落ちません。ここでも全員が前に出るディフェンスで報徳学園を自陣に押し込むと、ひとりひとりがしっかりと身体を当てながらじわりじわりと前進していきます。そして27分、ゴール前のスクラムからSH岩元厚樹選手が素早く仕掛けると、最後はNO8植田翔来選手が中央にトライ。CTB鈴木大裕選手がプレッシャーのかかるゴールを決めて、ついに19対17と逆転しました。

 それでも点差はわずか2点。残り時間は3分余り、報徳学園も再逆転を狙って懸命に反撃を試みます。ロスタイムに突入してミスが許されない中でもボールをつなぎ続ける報徳学園。しかし最後まで関西学院の分厚いディフェンスはくずれませんでした。

 同点トライを奪った植田選手が「今までラグビーをやってきた中で、一番うれしい(トライの)瞬間だった。最後まで、全員が体を張って前に出続けたことが勝利につながった」と語ったように、最後まで、前に出るディフェンスを続けた関西学院が、このまま逃げ切ってノーサイド。第100回全国高校ラグビーフットボール大会の兵庫県大会決勝以来の報徳学園戦での勝利で、見事にベスト4進出を果たしました。

京都成章vs常翔学園 「大阪の強豪」と連戦の京都成章が常翔学園を破る

 同じユニバー記念競技場で行われた第2試合は、2月15日(土)の1回戦で東海大大阪仰星との激戦を制した京都成章と、近大和歌山を寄せつけなかった常翔学園(大阪)の対戦。連日の強豪・大阪勢との対決と、疲労が心配される中でしたが、京都成章が前半から規律のとれた動きで主導権を握ります。

 ひとりひとりがあたりの強さを見せる常翔学園に対して、複数でのタックルと集散の速さで対応、連戦とは思えない運動量でチャンスを作り出していきます。そして前半9分、連続してラックを支配して攻撃を継続していくと、最後はポイントの一つ外側にいたCTB筒井珠生選手が、うまくディフェンスのギャップをついて中央にトライ。ゴールも決めて7点をリードします。

 さらに27分、今度はディフェンスから得点に結びつけます。自陣の深い位置から仕掛けてきた常翔学園の攻撃を分厚いディフェンスで跳ね返すと、FW陣が強烈なプレッシャーをかけてボールをもぎ取ります。このボールに素早く反応したPR落井甚哉選手がそのままトライゾーンにとびこんでトライ、ゴールも決めて14対0とリードして前半を折り返しました。

“傾きかけた流れ”を引き戻したのは途中出場の選手たち

 一方、前半は、京都成章の素早い動きに対応が遅れて、大事な場面でもミスが出た常翔学園。後半にはいっても、京都成章の分厚いディフェンスに阻まれてなかなかチャンスをつくることができません。それでも持ち味であるスクラムや縦への強さを見せて徐々に京都成章にダメージを与えていきます。ようやく攻撃がつながったのは18分。疲れから複数での対応が遅れ始めた京都成章に対して、力強い縦突破をみせて徐々に前進していくと、最後はSO井上将悟選手が右隅にトライ。14対5と9点差に迫りました。

 しかしここから、京都成章の途中出場の選手たちがチームを勇気づけます。交代で投入された6人の選手たちが、豊富な運動量で常翔学園に傾きかけていた流れを引き戻すと、26分には、ゴールポスト正面の絶好の位置で常翔学園のペナルティーを誘発します。このチャンスにCTB森岡悠良選手が上手く時間を使いながらPGに成功し、17対5と点差をひろげました。

 残り時間はあとわずか。刻々と時間が少なくなる中、それでもあきらめずに攻撃を仕掛ける常翔学園。ロスタイムに突入した31分には意地の1トライを返しますが、反撃もここまで。常翔学園最後の捨て身の攻撃も、持ち味のディフェンスで防ぎ切った京都成章が17対10で逃げ切りました。連日の激戦を制した京都成章、安定感抜群の勝負強さを見せて準決勝進出です。

大阪桐蔭vs天理 大阪桐蔭が天理を「無得点」に抑えベスト4進出

(画像:大阪桐蔭 手崎颯志主将)

 準々決勝もう1試合は、大会3連覇を狙う大阪桐蔭と、前日に熊野(和歌山)に圧勝したメンバーからは大きく選手を入れ替えてこの試合に臨んできた奈良の名門・天理の対戦。強い風の中始まったこの試合、前半は、風上の大阪桐蔭が先にペースを握ります。キックを上手く使って天理陣内まで攻め込むと、大阪桐蔭らしいフィジカルを生かした攻撃を継続していきます。そして前半10分、連続攻撃からWTB須田琥珀選手が右中間にトライ。FB吉川大惺選手がゴールも決めて7点をリードします。

 その後も、フィジカルの強さを生かして前に出ていく大阪桐蔭でしたが、大事なところでミスが出て、なかなかリズムに乗ることができません。それでも天理の攻撃に対しては、しっかりと身体張って得点を許さず7点のリードを保ったまま前半を終了します。
大阪桐蔭vs天理.jpg
 一方、風下の前半は、キックでのエリア確保に苦しんで大阪桐蔭の厚い壁を突破できなかった天理は、後半開始直後の大阪桐蔭の攻めをしのぐと、風上を生かした攻撃で敵陣まで攻め込みます。5分過ぎからは、大阪桐蔭を22mラインの内側に押し込んで波状攻撃を仕掛けていきます。

 しかし、最後のところでコンタクトの強さを発揮して跳ね返してくる大阪桐蔭の前になかなかトライゾーンまでボールを運ぶことができません。大阪桐蔭の手崎颯志主将が「自分たちのミスでペナルティーを犯して苦しくしてしまったが、コンタクトで負けてなかった。苦しい中でもみんなが体を張ってくれていたので、キャプテンとして不安はなかった」というように、大阪桐蔭が強風の風下というビハインドの中、20分以上続いた苦しい時間帯を守り抜きました。

 試合終了間際の後半29分過ぎには、ようやく自陣を脱出してチャンスを確実に得点に結びつけてPGで3点を加えた大阪桐蔭が、苦しみながらも強豪・天理を10対0と無得点に抑えて準決勝進出を果たしました。

 「反省点だらけです。まだ戦い方が若い。今日も風上、風下を意識した戦いができてなかった。とにかく今は、1戦1戦、基本プレーを大切に強化していくだけです。ただフィジカルで勝負していくのは変わりません。うちは大阪桐蔭なので」と語った綾部正史監督。無限の可能性を秘めたチームが、まずは選抜大会への切符を手にしました。

 勝ち上がった4校は、3月に埼玉県の熊谷ラグビー場で開催される選抜大会への出場権を獲得しました。

【準々決勝の結果】
御所実(奈良)  24―10 京都工学院(京都)
関西学院(兵庫) 19―17 報徳学園(兵庫)  
京都成章(京都) 17―10 常翔学園(大阪)
大阪桐蔭(大阪) 10-0  天理(奈良)

 22日(土)に行われる準決勝の組み合わせは、以下のとおり。準決勝と並行して、ユニバー記念補助競技場では、選抜大会への出場をかけた代表決定戦2試合が行われます。

【準決勝・選抜大会代表決定戦組み合わせ】
▼準決勝:ユニバー記念競技場
関西学院  対  京都成章  午前11時キックオフ
御所実   対  大阪桐蔭  午後0時30分キックオフ

▼選抜大会代表決定戦:ユニバー記念補助競技場
報徳学園  対 常翔学園   午前11時キックオフ
京都工学院 対 天理     午後0時30分キックオフ