年末年始に東大阪市の花園ラグビー場で開催される全国高校ラグビーフットボール大会。聖地・花園を目指す戦いもクライマックスを迎えています。先週末には、大阪、神奈川、奈良をはじめ、全国制覇や全国の決勝の舞台に立った経験を持つ強豪校がライバルとの熱闘を繰り広げました。

▼兵庫大会 「報徳学園」VS「関西学院」

 11月16日(土)に行われた兵庫県大会決勝は、2大会前の花園で全国制覇まであと一歩と迫った報徳学園と、過去にはベスト4にも輝いたこともある関西学院の6年連続の対決。

 試合開始直前の突然の雨の中始まった一戦は、報徳学園が先にペースを握ります。関西学院のハイパント攻撃に対して高校日本代表候補にも選出されたFBタウファテビタ悦幸選手が適格な対応をみせて逆襲に転じると、FW陣一人一人があたりの強さを見せて前進。3分過ぎからは、関西学院陣内22mライン内側に攻め込みます。しかし、関西学院ディフェンスの集まりが早く、なかなかゴールラインを突破することができません。それでも、倒れないのが報徳学園の強さ。粘り強くボールをつないで5分以上攻め続けます。そして開始9分、タウファテビタ選手が関西学院ディフェンスの裏に蹴りこんだボールに、CTB福本亘選手が素早く反応してトライ。ようやく5点をリードします。

 この後も、関西学院の鋭い出足の前になかなかチャンスをひろげることができなかった報徳学園。それでも19分、今度はBK陣が力を発揮して得点に結びつけます。一人一人がランニングスキルの高さを見せて、自陣から一気に前進すると、最後はミスなくボールをつないでFB大城健富選手がトライ。雨の状況をものともしないハンドリングの確かさを披露して、再び関西学院の粘り強いディフェンスをこじ開けました。こうなると、報徳学園の勢いは止まりません。この後、26分と29分にもトライを追加。前半は26対0と報徳学園が大きくリードして折り返します。

 サイドの変わった後半、もう一度、心と体を立て直して反撃を試みる関西学院。後半10分には、CTB西浦章博選手が、雨の中40m以上のPGを決めて3点を返します。その後も果敢に攻撃を仕掛ける関西学院。しかし、報徳学園は慌てませんでした。後半は、キックを上手く使って落ち着いて敵陣で試合を進めていきます。そして14分、キャプテンのNO8西本龍太選手が豪快な突破でディフェンスをはね飛ばして左隅にトライ。さらに難しい角度のコンバージョンキックをタウファテビタ選手が見事に決めて33対3。粘る関西学院を突き放しました。

 関西学院もこのあと1トライを返しますが、反撃もここまで。試合終了間際にも得点を加えた報徳学園が力強さと巧みさを見せて、36対8でライバルに快勝。4年連続50回目の全国大会出場を決めました。「花園では優勝が目標。一戦一戦頑張ってきたい」と西本主将は語り、西條裕朗監督は「雨の中、ハンドリングミスが少なかったことが勝因。FW陣がよく前に出てくれた。やっと今年のチームらしい試合ができた」と振り返りました。報徳学園が自信を胸に、節目となる50回目の出場での悲願のタイトルを目指して聖地に挑みます。

▼大阪大会第1地区 「大阪桐蔭」VS「関大北陽」

 翌日17日(日)には、今年度の選抜大会、サニックスワールドユース大会と優勝し、15人制では無敗の大阪桐蔭が登場。大阪大会第1地区決勝で、昨年度花園への初出場を果たした関大北陽と対戦しました。

 「(無敗の)大阪桐蔭が相手でも勝機はある。終盤勝負に持ち込むためにも前半からトップギアーで臨みたい」と話していた関大北陽の梶村真也監督。序盤は王者・大阪桐蔭の圧力に対して関大北陽が互角に渡り合います。個々の強さを背景に大阪桐蔭が繰り出す連続攻撃に対して、全員が集中したしっかりとしたディフェンスで対応。攻め込まれながらも得点を許しません。しかし9分、大阪桐蔭が持ち味の一つ、スクラムで試合の流れを引き寄せます。センターライン付近のスクラムを押し込んで、関大北陽ディフェンスの対応を遅らせると、ラックサイドが空いた一瞬のスキをついてSH川端隆馬選手が20m以上を走り切ってトライ。ゴールも決めて7点をリードします。

 その後も関大北陽を自陣に押し込んでせめ続ける大阪桐蔭。しかし、梶村監督が「(関西)大学にお邪魔して、徹底的にモール攻撃に対するディフェンスを鍛え上げてきた」と語った関大北陽の粘り強いディフェンスの前になかなか追加点を奪うことができません。それでも慌てないのが大阪桐蔭の強さ。敵陣でスクラムを押し込んでペナルティーを獲得すると、何度も何度もゴールライン近くでのラインアウトからのモール攻撃につなげていきます。そして前半のロスタイムに突入した32分、モールがくずれたサイドを突いて、FL眞鍋蓮之輔選手が右中間にトライ。モールを止めることに集中した関大北陽のギャップを冷静についた貴重な追加点で12対0とリードをひろげて、前半を折り返しました。

 後半に入っても大阪桐蔭は攻撃の手をゆるめません。チームを率いる名取凛之輔主将が「ここにきてチームの持ち味であるディフェンスの固さに加えて、ブレイクダウン(接点でのボールの争奪戦)が、良くなってきた」と語ったように、接点を制して主導権を握り続けると、3分、15分、20分と着実に得点を加えていきます。終盤、関大北陽が繰り出す必死の攻撃に対しても、一人一人がしっかりとタックルにはいって最後まで得点を許しませんでした。

 終わってみれば40対0。途中から出場した選手も含めて、全員がきっちりと役割を果たした大阪桐蔭が王者の風格をみせて4大会連続18回目の全国高校ラグビー大会出場です。

▼大阪大会第2地区「東海大大阪仰星」VS「大産大附属」 第3地区「常翔学園」VS「近大附属」

 大阪大会第2地区、第3地区決勝は、東海大大阪仰星、常翔学園がそれぞれ持ち味を発揮して逆転勝ち。東海大大阪仰星は6大会連続24回目、常翔学園は2大会ぶり42回目の全国高校ラグビー大会出場を決めました。

 大産大附属と対戦した東海大大阪仰星は、序盤から大苦戦。前半終了間際まで8対3とリードを許す苦しい展開となります。それでも前半27分、大産大附属がPGを狙わずにトライを取りに来たゴール前でのピンチをしのぐと、前半のロスタイムに突入したラスト1プレイで逆転。後半は仰星らしいテンポの早いパス回しで大産大附属を圧倒。34対13で勝利して第2地区の優勝を飾りました。

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 第3地区で登場した常翔学園も、近大附属の勢いの前にいきなり先制トライを奪われるまさかの展開。それでも13分、一人一人が持ち味である縦への強さを見せて、キャプテンの井本章介選手のトライで反撃を開始すると、前半のうちに4つのトライを奪って逆転。後半にも5つのトライを加えて近大附属を突き放しました。去年、大阪大会の決勝で敗れた雪辱を果たした常翔学園。個々の選手が走力、スキルレベルの高さを見せ、55対19と圧勝し、全国大会進出です。

 「大阪大会は、まずは勝ち抜くことが重要。課題も多いがここからさらに鍛え上げていきたい」と語った東海大大阪仰星・湯浅大智監督。「大阪大会を勝ち抜くことができて、まずはほっとしている。(全国)大会まで1か月、もう一度、チームの原点である縦への強さ、激しさにこだわって強化していきたい」と話した常翔学園の白木繁之監督。花園での戦い方を知っている両チームのこの後の進化に期待です。

▼神奈川大会 「桐蔭学園」VS「東海大相模」

 同じく17日行われた全国注目の神奈川大会決勝、奈良大会決勝のライバル対決は、予想どおりの熱戦となりました。

 神奈川大会決勝は、前回大会に続く2大会連続の全国制覇を狙う桐蔭学園と今年の春の選抜大会ではベスト8に進出した東海大相模の対戦。予想どおり序盤からハイレベルな攻防となります。先制したのは、桐蔭学園。前半4分、FL申驥世選手がゲインラインを突破して一気に東海大相模陣内深くまで攻め込むと、フォローしたSH後藤快斗選手が中央にトライ。ゴールも決めて7点をリードします。

 一方の東海大相模もあせらず反撃。16分には、この日2つ目のPGを決めて7対6と1点差に迫ります。しかし、さすがは試合巧者の桐蔭学園。この後すぐ突き放します。20分にPGで再び点差を4点とすると、27分には巧みなコントロールでモールを10m以上押し込んで左隅にトライ。ゴールも決めて17対6とリードをひろげて前半を折り返しました。

 後半に入っても、序盤は桐蔭学園のペース。6分には流れるようなパスワークから連続攻撃を仕掛けると、最後はLO西野誠一朗選手がタックルを引きずりながら左中間にトライ。24対6として勝負は決したかと思われました。しかし、ここから東海大相模が猛反撃。FW5人の選手を入れ替えて勝負に出ます。15分にFB五島悠翔選手、22分にはWTB福岡遼選手のトライで24対18とし、交代したFW陣から安定したボールを供給されたBK陣が抜群の展開力をみせて、ワンチャンスで逆転可能な6点差まで詰め寄ります。

 残り時間5分余り。ここからは、両チームの意地と意地が激突します。息詰まる攻防の中で、王者のプライドと引き出しの多さをみせたのが桐蔭学園でした。終盤までは互角だったスクラムを押し込んでプレッシャーをかけると、一人一人が決して倒れない強さを見せ、連続攻撃の中で東海大相模の反則を誘発します。そして29分、SO丹羽雄丸選手が約35mのPGを見事に成功。27対18と点差を9点にひろげて、大熱戦に決着をつけました。このあとロスタイムにもトライを加えた桐蔭学園が34対18で難敵を下して、連覇を狙う花園への出場権獲得です。

▼奈良大会 「天理」VS「御所実」

 奈良大会決勝は、3連覇を狙う天理と今年度は単独チームで参加した国民スポーツ大会でも優勝を飾るなど春先から力を発揮している御所実の対戦。30年連続のライバル対決となりました。

 注目の一戦は、試合開始から両チームの激しい闘志がぶつかり合います。大型FWを前面にチカラで突破を試みる御所実に対して、天理は低く鋭い足下に突き刺さるタックルで対抗。チャンスには思い切ってボールをつないで攻めこみます。そして開始6分、天理はFB山崎祥永選手がPGに成功。3点をリードします。さらに11分、御所実の反則を生かして敵陣深くまで攻め込むと、ここ数年御所実に対抗するために強化してきたという得意のモール攻撃から、最後はキャプテンの内田旬選手がトライ。「この試合でようやくベストメンバーがそろった」という天理、この後さらにPGを加えて13対0。18分に御所実にPGで3点を返されますが、狙いどおりのゲーム運びで前半を13対3と10点のリードで折り返します。

 サイドの変わった後半、この1年間作り上げてきたFW陣の強さ、高さを生かして懸命に反撃を試みる御所実。しかし、天理の鋭い出足と規律のとれたディフェンスの前になかなか有効な攻撃につなげることができません。それでも天理に決定機を作らせずに10点差のまま試合は終盤を迎えます。

 逆に天理は22分、後半は崩せなかった御所実の壁をついに打ち破ります。天理らしい細かいパスワークで素早く左に展開すると、最後はFL平岩悠三選手がタックルを振り切って左隅にトライ。ゴールも決めて20対3として、勝負を決定づけました。御所実も27分、意地のトライで7点を返しますが、反撃もここまで。今年度も激闘となった奈良県大会決勝は、20対10でライバル御所実を振り切った天理が伝統校の底力を見せつけて3年連続66回目の花園出場を決めました。

▼11月23日(土)に代表51校が出揃う

 16日、17日に行われた各地区の決勝戦の結果は、以下のとおり。11月23日(土)には、愛媛、長崎で決勝戦が行われ、第104回全国高校ラグビーフットボール大会の各地区の代表校51校が出揃います。

【高校ラグビー地区大会決勝(結果)】
・11月16日
埼玉 昌平 45-12 熊谷工
愛知 中部大春日丘 59-7 名古屋
兵庫 報徳学園 36-8 関西学院
岡山 倉敷 78-0 玉島
徳島 城東 61-0 つるぎ
・11月17日
神奈川 桐蔭学園 34-18 東海大相模
滋賀 光泉カトリック 137-0 八幡工
奈良 天理 20-10 御所実
大阪第一 大阪桐蔭 40-0 関大北陽
大阪第二 東海大大阪仰星 34-13 大産大附
大阪第三 常翔学園 55-19 近大附
広島 尾道 66-7 崇徳
山口 高川学園 69-0 萩商工

【高校ラグビー地区大会決勝組み合わせ】
・11月23日
愛媛 松山聖陵 対 新田
長崎 長崎北陽台 対 長崎南山