終盤戦を迎えているリーグワン。4月21日、関西の名門・花園近鉄ライナーズが、今シーズン14試合目にして待望の初勝利を飾りました。
各チーム16試合を戦うディビジョン1のレギュラーシーズン終了まで残り3試合。ディビジョン2上位との入替戦への出場が決まっているとはいえ、残留に向けて弾みをつけるためにも、勝利をあげて自信と勢いを取り戻したい花園近鉄ライナーズ。
21日は東大阪市花園ラグビー場で、10位のリコーブラックラムズ東京と対戦しました。雨の中、ボールが滑ってミスがでやすい難しいコンディション。慎重に試合を進めようとしたライナーズですが、立ち上がりは思い切った早い攻めをしかけてくるブラックラムズの勢いに押されます。前半20分までに、2つのトライを奪われて、3対14と大きくリードを許します。
しかし、向井昭吾ヘッドコーチが「きょうはFW前5人がしっかりと仕事をしてくれた」と振り返ったように、安定したセットプレーを軸に落ち着きを取り戻すと、相手スクラムにプレッシャーをかけて、徐々に試合の流れを引き寄せます。チームの大黒柱SOクウェイド・クーパー選手の巧みなリードでうまくエリアを獲りながらブラックラムズのゴールラインに迫ると、24分と37分に2つのトライ。17対17と同点に追いついて前半を終了します。
河村謙尚選手「このチャンスをものにしないといけない」
サイドの変わった後半も先に仕掛けたのはブラックラムズ。後半3分にマット・マッガーン選手がPGを決めて20対17と、再び突き放します。それでもライナーズは慌てませんでした。直後の6分、またしてもスクラムを押し込んで相手の守備陣形を崩すと、クーパー選手のパスを受けたFB竹田宜純選手が大きくゲイン。最後は、判断よく持ち出したSH河村謙尚選手が見事なステップを見せて右中間にトライ。クーパー選手がゴールも決めて24対20と、ついに試合をひっくり返します。
ライナーズに来て初めての先発出場を生かした河村選手は「やっときたチャンス。このチャンスをものにしないといけないという気持ちがあった。チームが勝てたことが何よりもうれしい」と話しました。地元・東大阪市の枚岡中学校出身で、普段は花園ラグビー場の最寄り駅である東花園駅に勤める河村選手。地元の大声援を背に輝きをみせました。
向井ヘッドコーチ「FW陣の頑張りが勝因」
新戦力の活躍でリードを奪ったライナーズ。16分にはクーパー選手が負傷交代。粘りを見せるブラックラムズに、22分にはPGで24対23と1点差に迫られますが、その後は、FW陣がよく前に出て最後までブラックラムズに主導権を渡しませんでした。
「セットプレーが安定していたことと、FW陣の頑張りが勝因」と向井ヘッドコーチが話したように、直後の24分、ラインアウトからの力強い攻撃でFLパトリック・タファ選手がインゴールに飛び込んで、31対23としてリードを広げると、確実にエリアを獲りながら落ち着いた試合運びで時計を進めていきます。ラスト1プレイでさらにPGを加えて34対23。降りしきる雨の中、声援を送り続けてくれたファンの目の前で、見事、今シーズン初勝利を挙げました。
途中交代も勝利を見届けたクーパー選手は「フィールドにいる間は集中して冷静だったが、アクシデントで交代した後は、サイドラインで見ていることしかできないので、(ハラハラしながら)映画を見ているような感覚だった。とにかく勝ててよかった。このチームは、地域のコミュニティーにとって特別なチーム。選手やチーム関係者だけでなく、ファンの方々や普段支えてくれる多くの人と喜びを分かち合えてよかった」と感慨深く振り返りました。
野中翔平キャプテンが「勝って反省できることが、何よりもうれしい」と語った花園近鉄ライナーズ。レギュラーシーズン残り2戦、そして入替戦に向けてのさらなる進化に注目です。
(MBSスポーツ解説委員 宮前 徳弘)