第95回記念選抜高校野球大会で山梨学院の山梨県勢初の日本一から40日。高校野球は、早くも次のステージへ…。各都道府県の春季大会がクライマックスを迎えようとしている。

 一冬こえて、選抜大会でたくましい姿を見せてくれた球児たち。春から夏にかけては、対外試合を積み重ねる中で、さらに成長が加速。4月に入学してきた新1年生も加わって、各校の勢力図も微妙に変化している。そんな中、選抜大会でその実力を発揮して4強に勝ち残った各校は、それぞれが違う一面を見せながらもチーム力の高さを示している。

 選抜大会では投打ともにレベルの高さと勝負強さを見せつけて初優勝を成し遂げた山梨学院。キャプテンの進藤天選手が腰の不安を抱えて欠場する中でも、春の山梨県大会は順調に決勝に進出。しかし、名門・甲府工業との決勝戦で、まさかの結末が待ち受けていた。

 決勝までの4試合、すべてに大量得点で圧勝してきた山梨学院。この試合も打線が爆発。8回を終わって9対5と、4点のリードを奪う。ところが、選抜大会では圧巻の投球を見せていたエースの林謙吾投手が、4点のリードを追いつかれてしまう。タイブレークに入っても、有利なはずの後攻で、投手陣が常に得点を許す苦しい展開。12回表に3点を奪われると、1点差に詰め寄るのが精一杯。15対16で敗れ、準優勝に終わった。それでも、春の関東大会は2位校までが出場可能。関東大会にたどり着いた。5月20日に始まるその関東大会では、1回戦で神奈川3位の横浜隼人と対戦。昨秋に続く連覇に挑む。

 センバツではここぞというときの集中力の高さを見せ、準優勝の報徳学園(兵庫)。抽選会に参加した磯野剛徳部長が「各校の『打倒!!報徳』という空気をひしひしと感じた」と語ったように、兵庫のライバル校たちの闘志の前に県大会ではぎりぎりまで追いつめられた。

 県大会は、準々決勝で明石商業との接戦をものにして準決勝に進出。準決勝では、神戸国際大附属の2年生右腕・津嘉山憲志郎投手の前に打線が沈黙。9回2アウトまで、リードを許す苦しい展開を強いられる。しかし、さすがは“逆転の報徳”。足を使った攻撃でチャンスを拡げると、5番・辻田剛暉選手が同点のタイムリーヒット。延長10回、タイブレークでサヨナラ勝ちをおさめた。続く決勝戦では、U18日本代表候補にも選ばれた坂井陽翔投手擁する滝川第二と対戦。この試合も1点のビハインドを背負うが、今朝丸裕喜投手、星山豪汰投手の2年生の投手陣が最少失点でしのぐ。そして9回、宮本青空選手のタイムリーで坂井投手を攻略し、2試合連続のサヨナラ勝ち。センバツ大会の勝負強さを彷彿させる内容で、見事、近畿大会進出を果たした。

 選抜大会では優勝候補と位置付けられながら、山梨学院の前にあと一歩のところで敗れた広陵(広島)。キャプテンの小林隼翔選手が「夏の大会までは、無敗で甲子園に戻ってきたい」と語ったように、接戦を勝ち切る強さもみせて決勝に駒を進めている。選抜大会でも好投した2年生エース・高尾響投手、3年生左腕の倉重聡投手とバランスのいい投手陣が健在。崇徳との準決勝では先に2点を先行される苦しい展開も、8回、崇徳の左腕・片山翔太投手を攻略。2アウトからの3連打で同点に追いつくと、タイブレークに突入した延長10回、池本真人選手のタイムリーでサヨナラ勝ち。いよいよ5月13日、ここ数年、県内でしのぎを削ってきたライバルの広島新庄と中国大会進出をかけた決勝戦に挑む。

 報徳学園の前にまさかの逆転負けを喫してセンバツ連覇の夢を絶たれた大阪桐蔭。選抜大会後、西谷浩一監督が「前田(悠伍)1人では勝てないことを痛感した。ここからは全員のレベルアップが必要」と語ったように、春の大阪大会では大胆な布陣でチーム力強化に臨んでいる。大黒柱のエース・前田悠伍投手を登録せずに参加。それでも、さすがに大阪桐蔭という実力を示している。選抜大会に出場した大阪のライバル・履正社が敗退する中、順調に5回戦に進出。ただ、ここからは大阪の実力校との対戦が目白押し。前田投手ぬきで、1週間で4試合の連戦を勝ち切れるか、大阪桐蔭の本当の底力が問われている。

 それぞれが、それぞれの信じる道のもと、強化に挑む高校野球。この後も、春の地区大会、そして夏の選手権大会へ、球児たちの熱い闘いから目が離せない。


MBSスポーツ解説委員 宮前徳弘