4月12日に行われた、Bリーグ第31節、「京都ハンナリーズ」と「ファイティングイーグルス名古屋」の試合。観戦したものが、その結末を語らずにはいられない、バスケットの魅力満載のゲームとなった。

平日、水曜の夜の開催。しかも、リーグ終盤のこの時期に、チャンピオンシップ進出や降格の可能性が極めて低い中位同士の対戦。しかし、試合は、両チームのプロとしての意地が激突する最後の最後まで、目が離せない白熱の展開となった。

先に、ペースをつかんだのは、ホームの「京都ハンナリーズ」。地元ブースターの声援を背にスピード感あふれるコンビネーション満載の攻撃を展開、第1クオーターで、20対12と大きくリードを奪います。

一方の名古屋は、連敗中の影響もあってかなかなか攻撃のリズムがつかめません。第2クオーター終了の間際、エースの14番ジョナサン・ウイリアムズ選手の奮闘で得点を重ねたものの、前半は39対29、京都が10点のリードで折り返します。

しかし、今シーズン京都と戦った3試合は、すべて勝利してきた名古屋、第3クオーターに入るとじりじりと追い上げます。京都の早いパス回しに対して、狙いどころ絞ってディフェンスを修正、大事なところでスティールやミスを誘ってターンオーバーを誘発。前半は、まったく機能しなかった3Pシュートも徐々に決まりだして、52対51と1点差まで詰め寄って第3クオーターを終了します。

勝負の第4クオーター信じられないドラマが…

迎えた勝負の第4クオーター、ここから信じられないようなドラマが待っていました。ここでも、先に流れをつかんだのは、京都ハンナリーズ。13番・青木龍史選手の3Pシュートで勢いにのると、31番シェック・ディアロ選手が5番・小西聖也選手と鮮やかなアリープ、さらに9番の小澤智将選手が、難しいショットを決めて、69対59。残り4分を切った時点で、再び10点のリード。勝負は決したかに思えました。

しかし、ここから名古屋の脅威の猛反撃がはじまります。ファール覚悟の激しいディフェンスで、ボールを引き寄せると12番の野﨑零也選手やジョナサン・ウイリアムズ選手がビッグショットを連発、残り時間1分20秒の地点で、71対69と一気に2点差に追い上げます。それでも、ハンナリーズは、冷静に対応、上手く相手のファールを誘ってフリースローを獲得、プレッシャーのかかるフリースローをジャック・ディアロ選手が確実に決めて75対71。4点のリードで残り40秒、直後に名古屋にミスが出てボールは、サイドラインへ。京都にとっては、あとは、ボールをキープしてファールを誘えばという場面を作ります。それでも、名古屋はあきらめません。京都のサイドからのパスを、ジョナサン・ウイリアムズ選手が強烈なスピードでプレッシャーをかけてスティール。このボールをうけた野崎選手が見事に3Pシュートをきめて、再び75対74と1点差に迫ります。

残り25秒…名古屋が土壇場で同点に追いつく

どちらに勝負が転ぶかわからない、残り25秒。名古屋が時計を止めるために犯したファールでフリースローを獲得した京都は、1本目を決めると、2本目のフリースローを意図的に狙いどおりの角度で外してリバウンドを獲得。2点差をつけて、再び名古屋のファールを誘います。2本ともフリースローが決まれば、ほぼ決定的な場面、しかし2本目は、惜しくも外れてボールは名古屋へ、そして、残り時間が少なくなる大きなプレッシャーの中、またしても野﨑選手が、今度は、右45度の深い位置から、起死回生の3Pシュートをねじ込みます。ついに77対77、名古屋、土壇場で同点に追いつきます。

そして、残り10秒を切った京都の攻撃。外せば、延長戦も考えられる局面、「時計を見ると、のこり9秒だった。相手のプレッシャーが弱かったので、ボールを持ち込んで深く考えずにショットを放った」とジェロード・ユトフ選手が語ったショットは、残り4秒、3Pラインのはるか手前からのディープスリーのミラクルショット。これが、鮮やかに決まって80対77、ホームのブースターは勿論、詰めかけた誰もが、立ち上がって叫ばずにはいられない興奮の結末でゲームセット。京都ハンナリーズが、大熱戦を制してファイティングイーグルス名古屋相手に、今シーズン初勝利を飾りました。

「これまで何度か試合を決めるショットを放ったことはあるが、会場と一体になれた今日は、格別に幸せな気分だった。」とジェロード・ユトフ選手が語った一戦。劇的な試合展開は勿論、インターバルも、つねに観客を楽しませようとするエンターテインメントな演出。家路につく観客が、電車を待つ間、格別な体験を話さずにはいられないBリーグの魅力満載のゲームだった。