「情熱をもって誇りを取り戻す」そう語ったダニエル・ボヤトス新監督の下、名門復活にむけてスタートを切ったガンバ大阪。開幕戦で柏レイソルとのアウェイゲームを引き分けた後、ホーム開幕戦はサガン鳥栖をパナスタに迎えた。
試合開始から両チームとも前線からのプレッシャーをかけあうアグレッシブな展開になる。立ち上がりこそ、CKからサガン鳥栖に押し込まれて、何度かピンチを招いたガンバ大阪だったが、その時間帯をしのぐと一変。ガンバらしいテクニックやスピード、強さ。個々の特長をいかした攻撃で、次々とチャンスをつくりだしていく。
アンカーの位置に入った初スタメンの新外国人選手、イスラエル代表のネタ・ラヴィ選手が球際の強さを見せてボールを奪うと、ボールを受けたのは今年キャプテンに就任、7番を背負った宇佐美貴史選手。気の利いたパスでチャンスを演出。6分、12分と相手ゴールに迫った。
そして前半16分。CKのチャンスに、ショートコーナーでボールを受けた宇佐美選手からのクロスを、DFの三浦弦太選手が頭で落としたところを、トップの位置に入った鈴木武蔵選手がゴール。先制点を奪ったかにみえた。しかし無情にも、VARの結果、三浦選手のオフサイドが認められてノーゴール、無得点のまま試合はすすんでいく。それでも、ガンバは、攻撃の手を緩めない。
何度か決定機をつくると40分、今度は、左サイドの山見大登選手からパスをうけてペナルティーエリアに侵入した宇佐美選手が、細かなタッチでディフェンダーをかわして、左足で強烈なシュート。しかしここも、ポストに阻まれてゴールならず。前半は、ホームのガンバがペースを握りながらも、0対0で折り返した。
すると後半、川井健太監督が「前半で、ガンバの強度を体感して慣れてきたおかげで、だいぶ対応できるようになってきた」と語ったように、サガン鳥栖が持ち前の豊富な運動量でパスをつなぎながら、ガンバのディフェンスラインの幅を少しずつ広げて、チャンスを作り出していく。
6分。ガンバが、後半最初につかんだコーナーキックのチャンスをものにした。宇佐美選手が送り込んだボールに三浦選手が競って、ボールがこぼれたところに鈴木選手がすばやく反応。執念で押し込んで、正真正銘のゴール。大声援を送るホームサポーターの目の前で、ついに先制点を奪った。勢いに乗って攻め込みたいガンバ。
ところが宇佐美選手が、「ここ数年、残留争いに巻きこまれた時の成功体験があって、どうしても1点が入った後、固いゲームをしてしまった」と語ったように、ボールを大事にしようとするあまり、前半のようなアグレッシブさが失われていく。
逆に鳥栖は、同点を狙って次々と攻撃的なカードを切り出し、攻撃のテンポを一段とスピードアップ。すると19分、途中交代で入った樺山諒乃介選手が、鋭い切り返しから股抜きと、次々とDFをかわしてシュート。圧巻の同点ゴールをガンバのゴールネットに突き刺した。
さらに22分、勢いに乗るサガンは、福田晃斗選手のスルーパスを受けた、こちらも途中交代の富樫敬真選手が、ディフェンスを振り切って勝ち越しのゴール。しかし、ここでもVARの判定で、オフサイドが認めらノーゴール。両チームともVARで1点ずつ幻のゴールとなり、1対1のまま、試合は終盤に突入した。
残り20分、ここから、ガンバが昨年までとは、一味違った魅力的な展開を見せる。勝ち越しを狙って、期待の新戦力、カタールワールドカップでも活躍したチュニジア代表のイッサム・ジェバリ選手に加えて、食野亮太郎選手、山本悠樹選手といった攻撃的な選手を次々と投入。リスクを承知で、ゴールを奪いに行く。
両チームにチャンスが訪れるスリリングな展開。後半36分には、食野選手が絶好のチャンスを迎えるも、ものにできない。いっぽうピンチの際は、湘南から復帰し、東口順昭選手との超ハイレベルなスタメン争いを勝ち抜いたGK谷晃生選手が、冷静な対応でしのぐ。
あっという間に時間が過ぎ去り、アディッショナルタイムに入っても攻め続けたガンバだが、鳥栖の粘り強い守備の前に、勝ち越しゴールは奪えずついにタイムアップ。ホーム開幕戦は1対1の同点で終了した。開幕戦の柏レイソル戦に続いて、リードしながら追いつかれる展開で、2試合連続の引き分け。
それでも、「結果は、非常に残念。決めきる力が足りなかった。ただ、チームは確実にいい道を進んでいる」と締めくくったダニエル・ボヤトス監督。最後まで攻める姿勢を見せた選手たちに、詰めかけたサポーターからも、あたたかい拍手と歓声が送られていた。
攻撃的なガンバ、名門復活への期待を抱かずにはいられない、内容十分のホーム開幕戦だった。
MBS制作スポーツ局 宮前徳弘