「出来ることなら、毎試合ホームで戦いたい」

2021年11月、V1リーグに昇格してから初めての連勝を飾った女子バレーボール・ヴィクトリーナ姫路の中谷宏大監督は勝利後のインタビューでこう答える。前日、フルセットの激戦を繰り広げた相手に、この日は1セットも許さずストレート勝ち。粘り強さが身上の岡山シーガルズに対し、どのセットも終盤の競り合いを制しての価値ある一勝に、思わず顔をほころばせた。

その原動力となったのは何だったのか?勿論、効果的なサーブやコンビネーション抜群の攻撃といった戦術面の成果も大きい。ただそれ以上に、選手たちの背中を押していたのは、詰めかけた大勢のファンがつくりだす会場の空気だった。チームカラーであるピンクに染まったアリーナ全体が、競り合いの中で、選手たちに自信と安心感を与えていたのだ。

ヴィクトリーナ姫路が産声を上げたのは2016年。ロンドン五輪で日本女子バレーを銅メダルに導いた名将・眞鍋政義氏が、「本当の意味で日本が強くなるにはプロチームが絶対に必要」という信念のもと、出身地である姫路にチームを立ち上げた。最初はわずか選手3人のスタートだったが、バレーボールに対する情熱、地元播磨地域に対する純粋な思いが、周囲を巻き込んでいく。全日本でセッターを務めた竹下佳江監督のもと、最短の3年でトップカテゴリーであるV1リーグに駆け上がった。

しかし、勝負の世界は、そこまであまくない。V1リーグに上がると全日本選手や有力外国人プレイヤーを有する強豪が立ちはだかる。一つ勝つのも精一杯という状態で、2年連続の最下位争いを余儀なくされる。

そんな状況を打破したのも姫路をはじめとする地元播磨の人々のチカラだった。コロナ禍の苦しい状況の中、チームのサポートを継続。新たなスポンサーも加わって、チーム強化に必要な体制を整えていったのだ。

JリーグやBリーグに押されて注目度が下がりつつあったVリーグも、ようやく昨年度の大会からホームゲーム制度を導入。地域密着を念頭に改革に乗り出している。地元に愛されるヴィクトリーナ姫路は、ある意味、これからのVリーグの可能性を象徴している存在だ。だから、そのチャレンジには大きな意義がある。

東京五輪の低迷を受けて、再び全日本女子バレータクトをふるう決意を固めた眞鍋氏。「姫路から世界へ」の言葉とともに、チームは勿論、日本バレーボール界全体の新たな挑戦が、成就することを願わずにはいられない。
MBS制作スポーツ局 宮前徳弘.jpg
MBS制作スポーツ局
宮前 徳弘