花嫁の父

 新潟県・山古志に住む里志(柳葉敏郎)は、若い頃、劇画の道を志すも断念、 今は山古志の伝統である闘牛大会「牛の角突き」に出場する牛を育てている。妻 を早く亡くした里志は、父・紘一郎(橋爪功)とともに、聴覚障害を持つ娘の美 音(貫地谷しほり)と住んでいる。固い絆で結ばれた里志と美音だが、美音に地 元の若者・一太(趙 珉和)との縁談が進んでいた。一方、里志にも純な片思い をしている女性・雪子(余貴美子)がいる。雪子は里志にとって娘に抱く複雑な 感情を素直に話せる救いのような存在であった。

 様々な想いが交錯する中、美音と一太との縁談が破綻する。傷ついた心を慰め に東京に旅行に向かった美音は、浅草の老舗の船宿の後継ぎで船頭をしている青 年・丸(向井理)とめぐりあう。丸は耳の聞こえない美音のために「手話」を覚 える。次第に惹かれ合い、縁を感じる美音と丸であったが、丸には実の両親に捨 てられたという悲しい過去があった。一途な丸に求婚され、思い惑う美音。丸と 結婚することは、父と離れ離れになることも意味しているのだ。東京と新潟、四 季を越え、二人を見守ってきた里志は、ある日、浅草の丸の家を訪ねる。