1984年12月末、滋賀県日野町で酒店経営の女性(当時69)が殺害され、金庫が奪われた。売上金目当ての強盗殺人であると思われ、幾人かの容疑者が浮かんだものの決め手がなく、事件は迷宮入りかと思われた。
しかし、事件から3年あまり、店の常連客だった阪原弘さん(当時52歳)が強盗殺人容疑で逮捕された。逮捕の決め手は「自白」とされたが、それは苛烈な取り調べと家族を引き合いに出した卑劣な脅しによるもので、他に有力な証拠はなかった。起訴後、阪原さんは犯行を否認し、裁判で一貫して無実を訴え続けたが、無期懲役の判決が下された。
「父ちゃんはやってへん。誰が信用してくれんでも、お前らだけは信じてくれ」
あの悲痛な叫びを、阪原さん家族はひとときも忘れたことはない。裁判や再審請求において、警察の都合のいいように関係者の供述がねじ曲げられた「消えたアリバイ」のずさんな実態が指摘されていたものの、阪原さんは無念のまま服役中に75歳で亡くなった。
父の名誉を回復しようと、長男・弘次さんら家族は「死後再審」という高いハードルに挑む。そしてその過程で新たに明らかになったのが、警察が「帰り道」の写真を「行き道」のように順番を入れ替え、自発的に現場を案内したかのように偽装していたことを暴く「決定的なネガフィルム」だった。
MBSは、1999年と2003年にドキュメンタリー『消えたアリバイ』を放送するなど、四半世紀以上にわたりこの事件と家族の闘いを記録し続けてきた。父が主張していたアリバイはいかにして「消された」のか。一旦屈した自白の誤りを正すだけで、40年近く歳月がかかる現実を、過去の膨大な取材アーカイブをひもときながら描く。
また、長男・弘次さんは父の無実を訴える傍ら、「検察の不服申し立て原則禁止」などを盛り込んだ再審法改正のために奔走している。父の冤罪を晴らすだけでも過酷な状況のなか、なぜ彼は法改正を求めるのか。優しさゆえに人生を失った父。「欠陥がある制度によって理不尽に人生を奪われる人間を、これ以上生み出してはならない」
阪原家の42年にわたる闘いを通して、冤罪がいかに"罪深い"ものかを社会に問う。
雪冤の誓い~日野町事件 奪われた38年~
2026年8月30日(日)放送
8月30日(日) あさ 5時00分放送
雪冤の誓い~日野町事件 奪われた38年~
番組について
真夜中のドキュメンタリズムから黎明のドキュメントへ
映像’26は1980年4月に放送を開始した関西初のローカル・ドキュメンタリーです。
月1回、深夜の放送から日曜あさに移動し再放送やネット配信も充実させながらテレビドキュメンタリーの発信を続けていきます。
