情熱大陸

フードフォトグラファー Vol.1293

石丸直人

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03.24(日)

よる11:00

“フード”が躍動する究極の映え写真
必ず目に留まる“食”の撮り方とはー

その写真を、きっと多くの人が目にしているだろう...。高級チョコレートのGODIVAやマクドナルド、ドミノピザやレディーボーデン。フードフォトグラファー石丸の作品は、「音が聴こえる」「食べ物が動いて見える」「舌触りを感じる」という、"美味しい"評価を受けている。
大阪を拠点に全国を飛び回る石丸に、依頼はアジアやフランスからもやってくる。かつては写真スタジオに勤務し、洋服やインテリアなど、通販の切り抜き写真を撮っていた。フードフォトグラファーの道に入ったきっかけは、独立後、あるパティシエから洋菓子の撮影を依頼されたことだった。
「写真は綺麗に撮れてるけど、全然おいしそうに見えない」
パティシエに言われた言葉の意味が分からずに迷走。その時、本屋で手に取ったのがフレンチの巨匠・ピエール・ガニエール氏の料理の写真集だった。最初にめくったページで、心臓を射抜かれる。まさにアートだった。そんな写真を撮りたくてフードフォトの道へ...。無味無臭、無感触の平面に、どうやって「五感を刺激する」エレメントを注ぎ込むか...。
今回、石丸はフレンチシェフの依頼でコースメニューの撮影に臨んだ。シェフは「僕の料理を撮った写真は、僕の作品なのか、石丸さんの作品なのか。石丸さんの作品だと言われたら、僕の負けなんで」と意気込む。出来上がった写真を前にシェフは思わずつぶやいていた。「僕と石丸さん二人の作品だ」...シェフをそう言わしめた写真とはー
また、冷凍食品の専門店からは、一つ一つが手作りである冷凍食品の、キービジュアルを作ってほしいと依頼された。「冷凍食品は"冷たい"んだけど、"あったかい"家庭の食卓を作るもの、というイメージで写真を撮って欲しい」
冷凍食品の商品写真は解凍後の料理を撮ることが圧倒的に多い。ところが石丸は、あえて凍ったまま撮り始めた。その仕上がりに依頼主も息を呑む。
奇しくも石丸は、あのガニエール氏の料理も撮影することになった。フレンチの巨匠を前にした緊迫の撮影。石丸が背景に選んだのは黒布一枚だった。『自分の表現』は必要ない。『料理そのものの輝き』を写しとるために。
料理写真の常識を変え続ける男の、タフでエネルギッシュな姿を追った。

Naoto Ishimaru

1978年生まれ、広島育ち。写真スタジオ勤務を経て独立。現在、フードフォトグラファーとして大阪を拠点に、世界中から広告などの撮影依頼を受ける。撮影のみならず、スタイリングからアートディレクションまで石丸自ら行い、今や「フード写真」を超えた「アート作品」としても注目されている。
毎年フランスで開催される「サロン・デュ・ショコラ・パリ」では、2012年、日本で初めて公式ガイドブックの表紙を飾り、2017年には、世界の写真のコンペディション「FINE ART PHOTOGRAPHY AWRD」で入選。同年にパリで写真展を開くなど、国内外で活動する。
日課はコーヒーを淹れること。自分が淹れたコーヒーで、撮影前のコンディションをはかるという。密着取材中、コーヒーを淹れる姿を撮影取材していると、「豆がふくらむこの瞬間、これを撮って。一番おいしそうに見えるから」と言い、「自分」よりも「フード」推しの46歳。

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