プロ野球はペナントレース後半戦へ。阪神タイガースは、7月26日(土)・27日(日)のDeNA戦を連勝で飾り、幸先の良いスタートを切りました。貯金は今季最多の20(7月28日時点)。最短で29日(火)にもマジック41が点灯します。

 なぜタイガースはこんなにも強いのか?掛布雅之氏に聞きました。

完封勝利の才木投手「後半は相当期待していい」

――阪神タイガースはオールスター含めてピッチャー陣の活躍が目立ちました。

 (掛布雅之さん)「髙橋遥人投手は素晴らしかったですが、まだ本来のストレートを投げきっていないので、まだまだこれからだと思います。オールスターでは、佐藤輝明選手は佐藤選手にしか打てないホームランを打ち、石井大智投手は強いストレートでパ・リーグの強打者を抑えた。そうするとリーグの選手たちに認められていくんですよ。そうなると、リーグ戦に戻っても、自分がマウンドに上がったときに優位な気持ちで投げられ、打席に入れる。だから、オールスターで活躍するのはすごく大切」

 (掛布雅之さん)「これまでの才木浩人投手は、前半は勝つけれど、後半はあまり勝てないピッチャーだった。それで、今年の春先から『後半勝てるピッチャーになりたい』と。その後半戦最初の試合で完封した。才木投手にとって、1年間予定通りに進んでいるんじゃないかなと思いますし、後半は相当期待していいんじゃないかなと思います」

見えてきた佐藤選手の三冠王…ポイントは「四球」

―――続いて野手陣ですが、佐藤輝明選手に注目です。1985年・86年のバースさん以来、日本人選手として球団初となる三冠王を取れるのでしょうか?

※7月28日現在、ホームラン1位(26)・打点1位(65)の2冠。打率は4位(.2877)で、1位と約4厘差。

 (掛布雅之さん)「可能性はあります。ただ、これだけホームランを打ちますと、4打席勝負してくれることはまずないんですよ。1個は四球が出るんです。そうすると固め打ちはできませんが、1つの四球と1本のヒットで3打数1安打、3割3分3厘という打率が残る。この数字を続けていけば、首位打者は多分取れると思います。ただ、2リーグ制になってから、3割を切って首位打者を取った人はいないんですよ。3割を切って首位打者を取ることは、ある意味ですごいこと。バッターからすると恥ずかしいことなのですが、『投高打低』になっている」

―――今後のポイントは、「四球を選べるかどうか」ということですが。

 「佐藤選手は、まだ四球は38個しかないんですよね。残り51試合であと最低30個、計70個の四球を取れなければ、首位打者は取れないと思います」

「チームが"岡田阪神"から"藤川阪神"に変わった」

 なぜ、阪神は今シーズンここまで強いのか?という問いに、掛布さんは、「投・打・守、全てのバランスが他球団よりいい」という点をポイントに挙げました。投手陣が点を取られない(防御率1.95)、守備が良い(失策38 セ・リーグ2位)、ケガ人がおらず、1番から5番を固定できているということです。

 (掛布雅之さん)「今、ファンも含めてお祭り騒ぎですよね。その中で、いい意味で“冷めて”自分たちの野球を俯瞰して見られるような選手が1人いた方がいいんですよ。その役割が大山悠輔選手。ヒットやホームランを打っても、変なガッツポーズしませんよ。いい意味で冷めて野球をやっている。あとは、キャッチャーの坂本誠志郎選手がすごく落ち着いて、いい形でピッチャーをリードしている。静かですよ。“静”の大山選手と坂本選手の存在があるから、優勝は間違いないと見ています」

 掛布さんはまた、「チームが"岡田阪神"から"藤川阪神"に変わった気がする」と話します。

 (掛布雅之さん)「印象的だったのは、7月3日の巨人戦。9回裏・2対2で同点の場面で、巨人は絶対的守護神であるライデル・マルティネス投手が投げていて、森下翔太選手が出塁しました。そこで、代走はないと思ったんですよ。巨人はマルティネス投手というカードを切っているので、延長戦に持っていけば阪神が有利ですから。なのに、藤川球児監督は森下選手の代走に植田海選手を出して、マルティネス投手にプレッシャーをかけて負けをつけるわけですよ。絶対巨人に年間で勝ち越すんだ、勝ち切るんだという強い気持ちですよね。岡田彰布・前監督であれば、9回で勝負をつけにいきません。12回を考えて、もう1回森下選手に打順が回ってきますから。その中で勝ちを取っていくという、安全策を取ると思うんですよ。この藤川監督の9回で決めにいった強さ。これは、100%です」