2026年2月18日、第105代内閣総理大臣に選出された高市早苗氏による「第2次高市内閣」が発足しました。
2月8日の衆議院選挙での「歴史的大勝」を経て、自民党単独で316議席という圧倒的な力を手にした高市総理。一方で、野党第一党の「中道改革連合(中道)」は49議席と激減し、国会内では「一強多弱」の構図が鮮明となっています。しかし、この圧倒的な数的優位にありながら、高市総理は記者会見で繰り返し「野党の協力」を呼びかけました。その言葉の裏にある狙いと、今後の国会における野党の役割を読み解きます。
◆取材・解説:米澤飛鳥(MBS『よんチャンTV』編集長 行政キャップなどを歴任)
■ 「高市内閣2.0」――再任閣僚で挑む「悲願」

選挙を経て、高市総理は前回の内閣の閣僚を全員再任し「高市内閣2.0」と銘打った新内閣をスタートさせました。
第2次内閣の発足にあたり、終始笑顔で会見に臨んだ高市総理。予算の年度内成立を目指すとしたほか、日本国憲法や皇室典範の改正、議員定数削減、そして自身が“悲願”としていた「食料品の消費税ゼロ(2年間限定)」の年度内実施への意欲を強調しました。
■ 可視化された「惨敗の悲哀」。奪われた部屋と溢れる議員

対照的なのは、野党第一党「中道」の姿です。今回、共同幹事長だった安住淳氏や岡田克也氏、立憲民主党創設者の枝野幸男氏といった「大物」が相次ぎ落選。かつての立役者である野田元共同代表が議員総会でポツンと後方の列に座る姿は、まさに敗軍の将の悲哀を感じさせるものでした。
中道の議員総会では、冒頭から厳しい現実が突きつけられました。重徳和彦衆議院議員からは「確保できたのは国対委員長部屋から向こうの小部屋まで。ほかに部屋はございません。この部屋を上手に使ってください」との報告。
議員数の激減に伴い、中道の控室の面積はこれまでの約866平米から303平米と大きく縮小されてしまいました。かつて代表や幹事長が使用していた部屋までもが自民党に明け渡されたのは、衆議院選挙を経て様変わりした国会を象徴する出来事だといえます。
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一方の自民党は、勢力の急拡大により控室から議員が溢れ、「酸欠で中に入れない」と悲鳴が上がるほどの状況。両院議員総会の会場変更を余儀なくされたほどで、中道とは対照的な光景がみられました。
■ 野党中道を襲う危機「政党交付金激減」

選挙の勝敗は、政党に大きな「金銭的打撃」をもたらします。
2025年度、自民党には約131億円、中道には約105億円(旧立憲・旧公明合算)の政党交付金が交付されていました。しかし衆院選の結果を受けたTBSの試算では、2026年度、自民党は約153億円へ増額される一方、中道+立憲+公明の合計は約68億円と、4割近い激減となる見込みです。
政治ジャーナリストの武田一顕氏は、この数字が持つ「残酷な現実」を指摘します。
「こうなると、次は党本部の職員の給与を下げるとか、リストラをしなきゃいけない。政策立案を支える職員は多ければ多いほど良いわけですが、そんなことも言っていられなくなる」(武田氏)
中道の取材中には、他党の例にならいクラウドファンディングで資金を集めることを提案する声が聞こえるなど、野党第一党の台所事情は逼迫しています。
■ 泉健太氏が語る「手足を縛られたボクシング」の苦境

今回の選挙で、中道で京都3区選出の泉健太氏は近畿の小選挙区で唯一生き残り、10度目の当選を果たしました。国会議事堂の前では「暗雲が立ち込めているスタートかもしれない。非常に厚い雲に覆われたなかで国会を野党として迎えないといけない」と厳しい面持ち。
慣れ親しんだ議員会館に足を踏み入れたものの、周囲の部屋の名前がことごとく他党のものに変わっている現実にも直面しました。
泉氏は単独インタビューに対し、現在の心境を次のように吐露しています。
「いろんなものが限られてしまう。辛い所ではあります。手足を縛られた状態でボクシングをするような辛さはあります」(泉健太氏)
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中道は衆議院で51議席を下回ったことで、予算を伴う法案提出や内閣不信任案の単独提出ができなくなるという、まさに「がんじがらめ」の状況。
それでも泉氏は、「議席だけでは足りなくても、世論が『政府の案はおかしい』と動いてくだされば、政策を変えることはできる。国民の生活に資するような修正を勝ち取っていきたい」と、世論を背負う覚悟を強調しました。
■ 高市総理が「野党の協力」を繰り返す、巧妙な論法

自民・維新の与党を合わせれば衆議院で4分の3を占める「無双状態」の高市政権。しかし、高市総理は「来年度予算案などの年度内の成立を目指す」「食料品の消費税ゼロについて夏前の中間取りまとめを目指す」とし、これらについて野党に協力を求めていくと述べました。
与党一強の勢力構造のなかで高市総理が「野党の協力を」と繰り返し口にした背景にはどのような意図があるのでしょうか。
1.参議院での「過半数割れ」への対応
衆議院では圧倒的な自維連立与党ですが、参議院では過半数に届いていません。重要法案を確実に成立させるためには、参議院での野党の協力が不可欠です。
2.高市総理の巧妙な『論法』か
「野党の協力を」と繰り返すことで、予算案の成立が遅れた場合に「野党が協力しないからだ」と責任を転嫁できるのでは、という指摘もあります。政策が停滞する理由を野党のせいにするための巧妙な伏線を張っている、として憤っている野党議員もいるといいます。
こうした状況のなか、中道改革連合の小川淳也新代表は「数は多くないかもしれないが、野党第一会派として巨大与党と対峙して、しっかりと権力監視をしていきたい」と決意を口にしていました。巨大与党のスピード感に飲み込まれず、いかにして「権力監視」の機能を果たしていくのか。野党第一党としての正念場が、いま始まろうとしています。