去年7月、トランプ関税引き下げの条件として、日本が約束したアメリカへの80兆円規模の投資。赤沢経済産業大臣は12日、首都・ワシントンの商務省を訪れ、ラトニック商務長官と会談しました。
今回は結論持ち越しとなったものの、第1号の投資先として白羽の矢が立っているのが「人工ダイヤモンド」の製造事業です。
そもそも、なぜダイヤに投資するのか?人工ダイヤで“究極の半導体”が製造できるかもしれない?
今注目されている人工ダイヤについて、イーディーピー・藤森直治社長と、アイリックス・須納瀬正範社長に聞きました。
「人工ダイヤモンドがないと世の中が成り立たない」

アメリカへの第1号投資先と目されていた「人工ダイヤモンド」。今回は結論持ち越しとなりましたが、今にわかに注目が集まっています。
世の中に出回っているダイヤモンドの約7割は「工業用」で、そのほとんどは人口。「人工ダイヤモンドがないと世の中が成り立たない」(イーディーピー・藤森直治社長)と言われるほど、自動車・医療・航空宇宙、精密機械など様々な産業に利用されています。
“究極の半導体” 「ダイヤモンド半導体」とは?

この人口ダイヤモンド、ひょっとしたら“究極の半導体”になるかもしれません。その名も「ダイヤモンド半導体」。
半導体とは、電気を通す「導体」と、通さない「絶縁体」の中間の性質を持ち、条件を変えることで電気の通りやすさをコントロールできる物質です。主な材料としてシリコンが使われています。
ダイヤモンドは電気を通さない絶縁体ですが、人工ダイヤを作る過程で“不純物”を少し混ぜることで、「ダイヤモンド半導体」を作れると言うのです。
電気自動車の軽量化につながる?

この「ダイヤモンド半導体」が実現すれば、ハイブリッド車や電気自動車の軽量化・小型化・高燃費化につながるかもしれません。
こうした車に使われている「パワーコントロールユニット」にはシリコン半導体が使われていますが、一番の弱点は“熱”で、電気を流すと発熱するためラジエーターなどの「冷却システム」が必要になり、かさばるという欠点があります。
一方、シリコン半導体の代わりに、熱伝導率が高く、熱を逃がしやすく、耐熱性が高いダイヤモンドを使えば、冷却設備が不要になるため小さなユニットだけで車を動かせる可能性があるのです。
ただし、現状では大型のウエハー(半導体回路の基盤)が作れないため、コスト面に課題があるようです。シリコンのウエハーは大きいもので直径30cmですが、ダイヤモンドの半導体用ウエハーは現在最大2.5cm。実用化はまだ先の話かもしれません。
「日本の技術を使ってアメリカで量産」具体的な投資先は?

今後、どのようなダイヤに投資するのでしょうか?
候補として挙がっているプロジェクトが、「ダイヤモンド砥粒(とりゅう)」と「製造施設の建設」。“人工ダイヤのパイオニア”として知られるエレメントシックス社へ、約5億ドル(約765億円)を投資する計画です(2025年10月発表「日米間の投資に関する共同ファクトシート」より)。
アイリックス・須納瀬正範社長によると、「今回の投資は大きなウエハーを作るため」で、「日本の技術を使ってアメリカで量産を目指す」と言います。
人工ダイヤ製造には多量の電気が必要ですが、そもそも日本は発電コストが高いうえに、国土が狭く自然エネルギーにも頼れない…こうした事情から、日本だけで量産することは難しいそうです。
「第二のレアアース」国策で生産すすめる中国

なお、中国の発表によると、世界の人工ダイヤモンド原石の生産能力の約63%を中国が占めていて、去年10月には人工ダイヤモンドの輸出規制強化を発表しています(現在実行には至らず)。
「第二のレアアース」とも言われていて、生産機械についても高いシェアを誇っているようです(ジャーナリスト・武田一顕氏)。
レアアースと違い、インド・アメリカなどでも作れるということですが、今後も“外交の武器”となる可能性はあります。