今年の1月末に初めて「1gあたり3万円」を超え、史上最高値を更新した金価格。
しかしそこから価格は急落し、2月2日には1gあたり2万6057円と3500円以上も値下がりしました(田中貴金属の店頭小売価格=金の国内小売価格の指標)。
なぜ「安全資産」と言われる金の価格が急落したのか?今後、価格はどうなっていくのか?
金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏に聞きました。
乱高下する金価格 オリンピックのメダルで例えると…

ここ5年間の金1gあたりの価格推移(※)を見ると、2021年から徐々に上昇していて、2025年6月頃から急上昇。そして、今年1月29日には1g3万円を超えて、史上最高値を更新しました。
2年前のパリ五輪では12万5476円の価値があった金メダルが、今年2月6日に開幕するミラノ・コルティナ五輪では50万1300円となる計算です(2024年・2026年の1月29日で比較)。
しかしそこから一転、今年2月2日には1gあたり2万6057円まで下がりました。
※田中貴金属HPより(月平均価格)
急落のきっかけは「FRB議長の人事」

「急落のきっかけ」と報じられたのが、利上げ・利下げを決めるアメリカ・FRB(米連邦準備制度理事会)の次期議長人事。5月に任期満了となるパウエル議長の後任として、元FRB理事のウォーシュ氏が就任する見込みです。
自身は言及していないものの、ウォーシュ氏は「利下げしたい」との思惑を持つトランプ大統領の“お気に入り”4候補のうちで最も利下げに慎重だと見られていて、今回の人事のニュースを受けて市場は「米ドル金利が上がる→金価格が下がる」と判断したようです。
ウォーシュ氏自身は利下げしないとは言っていないうえ、トランプ大統領の“お気に入り”のひとり。こうした状態でなぜ、金価格が急落したのか?その前段階で、なぜ高騰したのか?
そこには複雑な要因があったようです。
コロナ禍で増えた「金による外貨準備」

そもそも、戦争や政治不安などが起こったとき、価値がゼロにならない「安全資産」として保有されるのが金。ここ10年ほどの金価格(※)を見ると、イギリスのEU離脱の国民投票(2016年)や、第1次トランプ政権誕生(2017年)の時にやや上がっています。
その後、高騰したのがコロナ禍のタイミングでした。経済が止まったアメリカで、現金給付・金融緩和が行われ、ドルがバラまかれ価値が薄まり、それを受けて各国の中央銀行は金による外貨準備を増やしたのです。
※田中貴金属HPより(月平均価格)
「アメリカの気分ひとつでドルが使えなくなる」

2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻も金価格高騰のきっかけとなりました。
アメリカが経済制裁のためロシア保有のアメリカドルを使えないようにした結果、「アメリカの気分ひとつでドルが使えなくなる」と考えた新興国の多くが金での外貨準備をさらに増やしたのです。
こうした中央銀行による金保有は利益目的ではない=価格が上昇しても売らないため、価格の上昇圧力をより強める結果となりました。
中国・インド国民が高騰を後押し

このような中央銀行の動きを見て金を買ったのが、もともと「元」を信用していない中国の国民、そして「光り輝くものを持てば持つほど富み栄える」という文化を持つインドの国民です。
両国の人口は、あわせて約30億人。この巨大な需要が金価格高騰を後押ししました。
“シアターシンドローム” 機関投資家の動きは?

こうした中で、機関投資家はどう動いたのか?
利払い1兆ドルという巨額の借金を抱えているアメリカですが、2025年に就任したトランプ大統領は「利下げ」「ドル安容認」の姿勢を見せています。
そして2026年、アメリカはベネズエラに軍事介入し、グリーンランド領有に意欲を見せるなど、政情不安が相次いでいます。
こうした出来事が重なった結果、「もうけたい」機関投資家から大量の資金が流れ込み、金相場はパンパンに膨れ上がりました。
ドラマ性のある出来事に過剰反応し現実を軽視する=「シアターシンドローム」状態にあり、「早く売りたいが今売るのは…何かきっかけが…」と、“ちょっとしたできごと”を探している…これが1月末の機関投資家たちの状態でした。
こうした中で、FRB議長人事のニュースが出て、一気に売りが相次いだと見られています。
「金との付き合い方」4か条とは?

金価格は今後どうなるのか?
金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏は「機関投資家による“過熱部分”がなくなった」と指摘。今後価格が下がり続けるかは不透明だとしつつ、「今後世界を覆う“トランプリスク”がどうなるか」が問題だと言います。
その上で、金との付き合い方として、亀井氏は以下4点を挙げています。
▼金は分散投資先のひとつ
▼「金は守りの資産」と言われる→攻めない
▼「安全資産」の“安全”をはき違えないようにする
▼価値ゼロにはならないが変動リスクはある