高市総理の“台湾有事”をめぐる発言をきっかけに悪化した日中関係。中国は自国民に日本渡航を控えるよう呼びかけ、来月中旬から始まる「春節」期間も渡航自粛の継続を求めています。
その影響は製造業にまで及んでいます。今年に入って中国商務省は日本に対し「軍事転用の可能性がある品目」の輸出を禁止。規制対象となる具体的な品目は示されていませんが、レアアースが供給されなくなったという部品メーカーも出ています。
今後どのように中国と付き合うべきなのか?現在中国からの輸入に頼っている「レアアース」「抗菌薬」を取り上げ、東京財団・柯隆常勤研究員の見解をもとに日中関係について考えます。
レアアース中国依存度 2005年は100% 現在は?

日本が中国からの輸入に頼っている「レアアース」。2005年、中国依存度は100%でした。
その後、2010年には輸入総量が大幅に減り、中国からの輸入も90%弱に減少(レアアース・ショック)。そして、2024年には約60%となっています。
<日本の国別レアアース輸入の推移>
▼2005年 8387t
・中国 100%
▼2010年 5487t
・中国 89.8%
・ベトナム 9.9%
・アメリカ 0.3%
▼2024年 8335t
・中国 62.9%
・ベトナム 32.2%
・タイ 4.8%
※財務省資料より(出典:日本貿易統計)
※希土類金属、スカンジウム及びイットリウム
「精錬に環境負荷かかるため」中国の精錬シェアは90%超

レアアースの生産量と精錬シェアは次の通り(財務省資料より いずれも2024年)。
<レアアース生産量(世界合計39万t)>
▼中国 27万t (69.2%)
▼アメリカ 4.5万t(11.5%)
▼ミャンマー 3.1万t(7.9%)
▼その他 (11.3%)
(出典:USGS “Mineral commodity summaries 2025”)
<レアアース精錬シェア>
▼中国 91%
▼マレーシア 4%
▼ベトナム 1%
▼その他 3%
(出典:IEA “Global Critical Minerals Outlook 2025”)
生産量を見ると、中国のシェアは約60%で、2位に約10%のアメリカが続きますが、精錬シェアでは中国が91%と非常に高くなっています。
この数字について、東京財団の柯隆氏は「精錬に環境負荷がかかるため中国のシェアが高い」と指摘。共産党一党独裁の中国では、こうした環境負荷に目をつぶることができるのです。企業側の対応としては、「当面は在庫を増やすなどして備えるしかないが…」と言います。
また、中国は以前からレアアースを“戦略物資”として認識していたと、ジャーナリスト・武田一顕氏は指摘。かつて最高指導者であった鄧小平氏の「中東に石油あり、中国に希土(レアアース)あり」という発言にも言及しています。
“中国依存”から抜けだすためにできることは?

いまだ続くレアアースの中国依存。脱却する道はあるのでしょうか?
柯隆氏は「中国以外ならマレーシア」だと指摘。そのためにもアジア外交にさらに力を入れるべきだと言います。
また、柯隆氏は「南鳥島周辺で試掘、国産化を目指す」方向も提案。現在、探査船「ちきゅう」が実験中です。
レアアースだけじゃない!?感染症治療などに使われる「抗菌薬」も…

レアアース以外にも、日本が中国からの輸入に頼っているものがあります。感染症の治療や手術時の感染予防などに使われる「抗菌薬」です。
中でもペニシリン系などの抗菌薬の原料はほぼ100%中国に依存しています(価格競争の結果)。
しかし、2019年には中国の製造トラブルで供給が滞り、医療現場に混乱も起きているようです。
「インド」「国産強化」“脱中国”は可能?

抗菌薬の“脱中国”は可能なのでしょうか?
その1つが、国産の強化です。Meiji Seikaファルマは、30年ぶりにペニシリン系抗菌薬の原料の製造を再開しました。国内需要をまかなえる量の生産が可能だということです。
また、中国以外の有望な生産地として、柯隆氏は「インド」に言及。「開発力もある」と話します。
日中関係 衆院選後のシナリオは?
今回の衆院選で過半数(233人以上)の候補者を擁立しているのは、自民と中道。どちらが政権の中心になるかで、日中関係に変化はあるのでしょうか?柯隆氏は2つのシナリオを描いています。
(1)自民が過半数 高市政権継続の場合
高市政権が日本国内で支持されていると分かれば、中国側も対話を模索してくる可能性があると指摘。その場合、双方が半歩ずつ下がる形になることを想定して、日本側としては尖閣・靖国・戦争責任などについて、何が譲歩できて何が譲歩できないか、プランを持っておくべきだと言います。
(2)中道が過半数 新政権誕生の場合
これまでの公明党と中国との関係から、日中 “友好” が促進されるのではと指摘。しかし、中国に「親しみを感じない」という日本人が多いため(内閣府 2025年調査では83.4%)、対中姿勢がきっかけで支持率が下がる可能性も考えられると言います。
経済的に深いつながりをもつ日本と中国。関係改善の道はあるのか?衆院選の争点の1つとして、今後も注目です。