衆議院議員選挙で自民党が単独で316議席を獲得した一方、野党第一党の中道改革連合は公示前から118議席減らす惨敗を喫しました。
この地殻変動の中で、衆議院0議席から一気に11議席へと躍進したのが、「チームみらい」。去年参議院議員となったAIエンジニアの安野貴博党首が率いる、新たな政党です。チームみらいの躍進が意味するものは何か。また新興勢力が台頭するなか、13日に代表選を控える中道はどう生まれ変わるべきか。
MBSは安野党首に単独インタビューを敢行。その内容と『よんチャンTV』の米澤編集長による解説を基に、みらい躍進の背景・影響を読み解きます。
■消費税ではなく「社会保険料」 対政権ではなく「未来志向」

「チームみらい」の安野貴博党首(35)。今回の躍進について、自ら次のように分析しています。
(チームみらい・安野貴博党首)
「まず目標を超えることができて一安心というところ。『ひとり政党』だったところから本当にチームとして動けるようになった」
「テクノロジーで政治を変える」と掲げるチームみらい。注目すべきは、今回の選挙戦で各党がこぞって消費税の減税や廃止を旗印にする中、あえて消費税に関する公約を掲げなかった点です。
(みらい・安野党首)
「消費税の減税を我々の政党以外はほとんど全部訴えていましたが、我々は訴えていない。その代わりに、我々はいま働いている人の大きな負担になっている社会保険料を下げることを優先すべきだと」
この「逆張り」とも言える姿勢が、少なくない有権者の関心を集めたことは確かなようです。
(MBS『よんチャンTV』米澤飛鳥編集長)
「安野氏の演説の現場で聴衆に質問すると、やはり唯一消費減税を訴えていないという点を評価する声が多く聞かれました」
「また、(安野党首は)この選挙戦では『対政権』という対立軸を打ち出さずに、右でも左でもない未来志向なのだと話していました。そういった『分断を煽らない姿』に共感している人もいます」

JNNの出口調査によると、今回の衆議院選挙での無党派層の投票先は、1位が自民党、2位がチームみらい(15.9%)で、中道や国民よりも上位につけていました。投票先としての認知が広がり、自民党でも中道でもない票の受け皿になっていたものとみられます。
■「職業的専門性」がもたらす議論のアップデート

安野氏がインタビューで強調したのは、既存の政治家にはない「職業的専門性」です。単なる「政治のプロ」ではなく、実社会で扱ってきたテクノロジーなど専門的な知見を国政に活かすことを目指しているといいます。
■「ドブ板」から「空中戦」へ――選挙のパラダイムシフト

今回のチームみらいの戦い方は、これまでの政治の常識であった「地域を歩き、握手を重ねる」という、いわゆるドブ板選挙とは一線を画すものでした。デジタル技術を駆使した「政治とカネの見える化」や、AIアバター(AIあんの)による24時間体制の質問回答など、テクノロジーを前面に押し出した戦略です。
こうした手法について、元NHK記者の立岩氏は「選挙そのものの形が変わりつつある」と分析します。
(ジャーナリスト・立岩陽一郎氏)
「チームみらいが繰り広げたのは『ドブ板選挙』ではなく、インターネット等を駆使して有権者に訴える『空中戦』です」
「空中戦はあまり上手くいかないと言われてきましたが、パラダイム=枠組みが変わってきていて、有権者が空中戦に対しても、しっかりとした判断ができるようになってきた。選挙の形が若干変わりつつあるのかな、という印象です」
■あす13日 代表戦で”再出発”の中道にも影響か

中道は比例で1043万票を獲得したものの、議席数は49に留まり、予算修正案や内閣不信任決議案を単独で提出できない「50議席の壁」も割り込みました。
今回の選挙では野党各党が消費税の減税・廃止論争で競い「共倒れ」した側面があります。こうした中で、立岩氏は「チームみらいが提示した今回の選挙のやり方は非常に大きい」と指摘しています。

明日13日に行われる中道の代表選には、小川淳也氏と階猛氏が立候補を表明しています。立岩氏は、中道のリーダー選びの基準もチームみらいの存在によって変化がもたらされるのではないかと見ています。
(立岩陽一郎氏)
「小川氏も階氏も論が立つ『論客』ですが、これまで論が立つ人は政党のトップとしてはあまり求められていなかった。どちらかというと野田佳彦氏のようにどっしりと構えている人がいいと言われていたのが、変わってきている」
「やはり論理を明確にして、理屈をしっかり言える、しかも若いリーダーをトップに置いたチームみらいが浸透していったということは、中道が今までのやり方を見直すきっかけになり得る」
■「都度都度」のスタンスで政治をアップデートできるか――今後問われるチームみらいの実績

国会の召集が迫るなか、衆議院で11議席を得た「チームみらい」の正念場はここからです。
党が選挙戦で最優先としていたのは、
▼消費税ではなく社会保険料の負担軽減
▼AIの発達で起きる失業に備えた給付付き税額控除の導入
▼新産業で経済が成長することを見越してAIやロボット、自動運転など成長産業への投資
など。
今後の国会で存在感を打ち出し、こうした政策を前に進めることができるのでしょうか。MBSの米澤編集長は、『多党化時代』の今、チームみらいはさっそく「実績づくり」を問われることになると指摘します。
(MBS米澤編集長)
「いま、選挙ごとに注目される政党がどんどん変わっていっている。今回みらいは非常に注目されましたが、やはり衆議院でこれだけの数の議席を取り、今後どのように実績を示していけるか。そこが鍵になってくるかと思います」
安野氏は「どういった政権であったとしても連携の可能性を常に模索する」と柔軟な姿勢を見せていますが、同時に「連携をすることによって我々ができなくなること、マイナスの面もあると思う」と話しています。プラスマイナスの両面を考慮して「都度都度決めていく」スタンスで国会論戦に臨んでいくということです。
安野党首とチームみらいの新人議員たちが、国会でどのような実績を示すことができるのか。有権者としては、選挙期間中より深く詳しく注視していく必要がありそうです。