今回の衆議院選挙では、高市早苗総理率いる自民党が316議席という圧倒的な議席数を獲得し、歴史的な勝利を収めました。一方で、野党第一党の中道改革連合は49議席と大きく数字を減らし共同代表が辞任に追い込まれるなど、野党陣営は再編を余儀なくされています。

この「一強多弱」の選挙結果をどう見るべきか。今後の政局はどのように展開されるのか。政治ジャーナリストの今野忍氏(元朝日新聞政治記者)がMBSの番組『よんチャンTV』に出演し、自身の官邸取材の内容を交えて解説しました。

野党大敗の原因は「西軍」の総崩れか――小選挙区では「248対7」も比例票は「2対1」

自民党が「大勝」、一方野党第一党として選挙に臨んだ新党・中道改革連合は「大敗」した今回の衆議院選挙。今野氏はこの結果を戦国時代の天下分け目の決戦になぞらえ、「これは『関ヶ原の戦い』だった」と読み解きます。

「中道が立て直すのは難しいと思う。自民党が小選挙区で248議席(※)取ったのに対して、中道は7という有様。野球のスコアで言ったら248対7ってあり得ない」と大敗の衝撃を語る一方で、数字の裏にある「野党分断」の実態を指摘しました。

(政治ジャーナリスト・今野忍氏)
「全国の比例11ブロックの総得票数を見ると、自民党約2,100万票に対し、中道は約1,000万票得ていて、実は2対1。これやはり、小選挙区で野党が分断されてしまったということです」

徳川家康率いる東軍と石田三成率いる西軍による天下分け目の戦いとなった関ヶ原の合戦では、両軍の兵力は拮抗していたものの、西軍は小早川秀秋の裏切りなどで「崩れた」ことで敗れたといわれています。
今野氏は今回の選挙をこれになぞらえて分析。公示前勢力では「自民党198議席」対「中道167議席」と拮抗した状態で始まった今回の選挙戦ですが、実際は野党が「総崩れ」した、という見立てです。
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自民党の萩生田光一氏が当選した東京24区では、落選した中道の細貝悠氏と国民民主の細屋椋氏の得票数を足し合わせると萩生田氏の票数を上回ります。東京11区でも、中道の阿久津幸彦氏と国民民主の高沢一基氏の合計票数は、当選した自民の下村博文氏の得票数より多いという結果でした。
こうした「国民民主党と中道の両党が候補者を立てていなければ勝てたかもしれない」選挙区が散見されたといいます。そのため、関ヶ原の合戦でいうところの西軍=野党が「崩れた」ことが今回の選挙結果の大きな要因として考えられるということです。

(※のちに福井2区の斉木武志氏が追加公認され、自民党の小選挙区議席数は249に)

「常連客を取り戻した」他党から支持者を”奪還”した高市総理の戦略

一方、なぜこれほどまでに自民党≒高市総理に票が集まったのか。今野氏が特に注目したのは、高市総理・自民党が「他党に流出していた支持者を奪還した」という点です。

去年7月の参院選で躍進したのは国民民主党と参政党でしたが、一定数の票がこれらの政党から自民党に戻ってきているというのです。
今野氏は、高市氏が掲げる「責任ある積極財政」の看板によって、「手取りを増やす」という訴えの国民民主党に流れた層が自民党に引き戻されたと分析。さらに、スパイ防止法や安全保障、外国人規制といった参政党の『お家芸』が今回は自民党に”奪われた”形に。

こうした高市総理の戦略により、自民党は「常連客を取り戻した(今野氏)」ということです。

「安全保障」は即実行、「消費税減税」は慎重な立ち回りか

では、「大勝」後の政権運営はどうなっていくのか。今野氏は高市総理が掲げる「国論を二分する政策」の進捗の見通しを次のように分析しています。

1. 安全保障・インテリジェンス政策は「優先度高め」との見方

国家情報局の設置や対日投資審査、安保3文書の前倒し改定などについて、今野氏は「官邸の方から聞こえてくる話では、高市総理はこれらを全部やりたいと言っている。今は支持率も高いので、優先順位は高め」と指摘し、一気に進める構えであるとの見方を示しました。

2. 消費税ゼロは「勢いだけでは…」

一方で、選挙戦でインパクトを与えた「消費税減税」については、慎重な舞台裏が見え隠れします。

「こっちの方が勢いだけでいけないところがある。マーケットとの関係もあり、急に消費税減税と言いすぎて、円安になったり金利が上がったりするのが一番問題」(今野氏)

高市総理は消費税減税を「悲願」とした一方で、今野氏が把握している限り、今回の選挙戦で約40カ所で行った演説では消費減税についての言及は一切なく、「封印」されていたといいます。

また、消費税減税にあたり、高市総理は「国民会議」を設置して夏前には中間取りまとめを行うとしていますが、実現は「どんなに早くても来年の4月」というのが今野氏の見立てです。

「法案にするとなると秋の臨時国会。そこからレジの改修に半年かかる。まだ高市総理から『いつやるか』という話は出ていませんが、国民会議で与野党と学者が集まったところで財源のスケジュールも決めましょう、と。『私一人の責任じゃないですよ、みんなでやりましょう』と言っている」(今野氏)

総理が行うとしている『国民会議』の進捗が読めず、野党以上に自民党内で消費税減税に慎重な意見が根強いということで、スケジュール感は不透明です。

また、暮らしを豊かにしたい、手取りを増やしたいという国民の思いが消費税減税に必ずしも帰結しなくても良いのではないか、という考え方もあります。消費税が下がったことで物価高を逆に刺激してしまう懸念も払拭されていません。

広い意味では物価高対策、生活をなんとかしてほしい、という国民との「約束」がどう守られるか。これが最も重要な観点といえます。

(2026年2月11日放送 MBS『よんチャンTV』より)