2月8日に投開票が行われた衆議院選挙。自民党が単独で316議席という歴史的な大勝利を収めた一方で、連立政権の一翼を担う日本維新の会は、本拠地である大阪の小選挙区でこそ強さを見せたものの、全国的には2議席増の36議席。4人の議員が離党する前に有していた38議席を超える、という目標は達成できませんでした。

 自民党が単独で衆議院の3分の2を超える議席を得た今、連立政権における維新の存在意義はどこにあるのか。維新から閣僚を出す「閣内協力」はあるのか。そして、維新掲げる政策は実現できるのか…。関西学院大学・善教将大教授への取材をもとに解説します。

「予想外の大勝」となった自民 維新との連立は“保険”に?

 今回の自民党の勝ち方は、党内ですら想定外のものでした。比例名簿の候補者が足りなくなるほどの大勝は、「自分たちが思っている以上の勝利」だったと考えられます。

 こうした状況のなか、自民党の連立相手である維新の会の存在感はどうなっていくのでしょうか。
 維新の存在感は薄まっていくのでは、とも考えられますが、維新政治を研究している関西学院大学の善教将大教授は、「自民が『過半数をとれたから連立解消』とはならないと思うが、維新の存在感が増すとは考えにくい。自民党がやりたいことを進めやすい環境になったのではないか」という見解です。

 さらに、自民党にとって維新は今後、“保険”になり得ると善教教授はみています。

 初めて与党として国政選挙に臨んだ維新は自民と選挙区調整をせず、勝利した小選挙区の議席は大阪18・兵庫1・京都1で、近畿のみ。吉村代表は「非常に難しく厳しい選挙だった」と振り返っています。
 この結果を、「維新は大阪でしか勝てない」と捉えるか、「維新は高市旋風の中でも大阪で勝てる」と捉えるか。善教教授は、「大阪では維新が粘り勝つ」という印象が強いと捉えています。

 「予想外の大勝」をしたということは、自民党は今後「予想外の大敗」もあり得るということ。そこで、『高市旋風』で全国的に他党が苦戦したなかでも36議席を確保した維新との連立は、どんな風が吹いても一定の議席(20〜30議席)を確実に取ってくる存在として政権のリスクヘッジになるということです。

「閣外」から「閣内」へ? 自維の距離感に変化?

 これに対し、維新側も戦略の転換を迫られています。これまでは大臣ポストを持たない「閣外協力」という立場で、自民党と「つかず離れず」の距離を保つことで存在感を模索してきたとみられます。

 しかし、自民が単独過半数を獲得した今、維新としては、閣外協力を続けていては存在感がなくなり、維新の政策を進めることが困難になる恐れも。であれば、いっそ閣内に入り、大臣ポストを得ることで「連立のパートナーであること」を強調する戦略に舵を切る、という可能性があります。

 2月9日に行われた党首会談後、吉村洋文代表は「(閣内入りの)話があれば前向きに検討したい」と、これまでの姿勢から一歩踏み出した発言をしました。

維新が掲げる政策の行方は…

 維新が強くアクセルを踏んでいきたいとしている政策は以下の4つ。

▼議員定数削減
▼社会保険料の引き下げ
▼食料品の消費税2年間ゼロ
▼副首都

 これらの政策は今後、進んでいくのでしょうか。

 「社会保険料の引き下げ」と「食料品の消費税2年間ゼロ」については、実質的には自民党次第だというのが善教教授の読みです。また、「議員定数削減」「副首都」は維新の希望どおりの政策実現は難しいのではないかとみています。

▼議員定数削減
 …実現自体は難しくないが、維新の急進的な要求はなかなか難しそう
 (去年提出した法案:衆議院の1割を削減目標/1年で結論が出なければ小選挙区25・比例代表20を自動的に削減⇒審議入りせず)

▼社会保険料の引き下げ
 …現役世代の支持も得た中、自民が進めていく可能性もあるがまだ見えない。

▼食料品の消費税2年間ゼロ
 …選挙で打ち出した以上、何かしら行う可能性も。一方で高市総理は選挙演説であまり言及せず。自民内での合意形成は?

▼副首都
 …維新が提案する「特別区」を前提とした条件は難しいのでは。

本拠地・大阪で目指す「3度目の都構想」はどうなる

 国政での立ち位置が揺らぐ可能性がある中、維新の本拠地・大阪ではどうか。

 衆議院選挙と同日に行われた大阪府知事・市長のダブル選挙では、主要政党が候補者を出さなかったとはいえ吉村氏と横山英幸氏がそれぞれ約8割という得票率で圧勝しました。

 吉村代表はこの結果を「都構想の議論再開への信任」と受け止め、来年4月の任期満了までに3度目の住民投票を目指す考えです。しかし今回の選挙では、府知事選でも市長選でも、無効票が前回より約8ポイントも増えている、という数字もあらわれています。

【大阪“ダブル選”の開票結果】
府知事選:吉村洋文氏:302万4106票(得票率83.2%) 無効票10.29%
市長選 :横山英幸氏: 83万257票(得票率77.7%) 無効票13.77%

 また、衆院選で大勝した連立相手の自民党は、「副首都」と大阪都構想を別々に考えている様子がうかがえるため、維新の思惑通りに事が進むかはわかりません。

 さらに維新のなかでも大阪市会議員団が反発するなど、必ずしも足並みが揃っているわけではないと善教教授は指摘します。

【住民投票を実施するなら…今後の流れ】
府・市両議会の議決を経て法定協議会を設置

協定書(制度案)を作成

府・市両議会で承認

来年4月までに「都構想」3回目の住民投票

 ダブル選を経て大阪都構想の3回目の住民投票に向けて進んでいくとして、新しい都構想の『設計図』は前回とどのように違うのか…。わたしたち有権者も今後、注視していく必要がありそうです。