2月8日の投開票が迫る衆議院選挙。各政党の「顔」である党首の街頭演説を聞くと、選挙戦の行方が見えてきます。各党首は演説で何を語ったのか。そのときの聴衆の様子はどうだったのか…また、「何を語らなかったのか」から戦略が垣間見える場面も。今回は政党要件を満たす11政党のうち「自民党・高市総理総裁」「中道・野田代表」「日本共産党・田村委員長」「社民党・福島党首」「チームみらい・安野党首」の演説をMBS米澤飛鳥編集長が直接取材しました。

【自由民主党】高市早苗総理・総裁 『高市人気』が党全体の票につながるか

 1月29日。厳しい寒さにもかかわらず、神戸市の舞子公園には自民党・高市早苗総裁の応援演説を聞こうと大勢の人が集まりました。セキュリティチェックには長蛇の列ができ、最終的に約3500人が集まったといいます(※自民党兵庫県連による)。

 発足以来、高い支持率を維持する高市内閣。JNNの最新世論調査での内閣支持率は69.9%。※2月JNN世論調査
 若者や女性の支持率が高く、この日も女性の姿が目立ちました。

 聴衆が必死に腕をあげてスマートフォンでその姿を撮影しようとするなか、高市総理・総裁の演説が始まります。

 (自民党 高市早苗総理・総裁)「日本列島を強く豊かに、高市早苗でございます。今まで日本は行き過ぎた緊縮志向、そして未来への投資不足、ここで縮こまっていたのです。今年から動きだしますよ。日本はまだまだ強くなれる。日本はまだまだ豊かになれる」

 約20分間の演説では『未来への投資』や『責任ある積極財政』といった言葉が多用されました。ただし、高市総理が“悲願”だとしていた食料品の消費税減税には触れませんでした。

 演説を聞いた人は…

 「日本を強くしていってくれる。すごく頼りがいあるなと思いました」
 「すごくエネルギーが伝わってきて、本当にがんばってほしいなと思いました」

 連立を離脱した公明党の選挙協力が得られないなか、自民党は『高市人気』をどれだけ自民党全体の票につなげられるのでしょうか。

【中道改革連合】野田佳彦共同代表 新党の認知度拡大がカギ

 (中道改革連合 野田佳彦共同代表)「食料品を(消費税)ゼロ、これからもずっとする。生活者ファーストのわれわれ中道改革連合であるということを、まずご理解をいただきたいというふうに思います」

 2月3日、かつて“常勝関西”と言われ公明党が強かった大阪で応援演説を行った中道改革連合の野田佳彦共同代表。力を込めたのが…

 (中道改革連合 野田佳彦共同代表)「みなさんご理解いただきたいんです。今回は私たちも中道改革の旗のもとに大義のもとに集まった同志中の同志であることを」

 『中道』がなぜ結成されたのか、その理解を求めるところから演説を始めていました。

 長く「野党」「与党」として対峙してきた立憲民主党と公明党が結成した新党。演説を聞きにきていた公明党支持者に話を聞くと…

 (公明党支持者)「はじめはものすごく葛藤があったんですけど、狭い心で右往左往したらあかんと思ってね」
―――中道になると聞いたときはどう思った?
 (公明党支持者)「びっくり仰天。でもね、斉藤代表の話を聞いて、いきさつを聞いて、思いを聞いて、納得して応援しようと」

 一方で…

 (演説を聞いた人)「(中道で)初めての戦いなので、伸びしろがどのくらいあるのか心配している」

 JNNの序盤の情勢調査では、中道改革連合は公示前の172議席から大きく議席を減らす見通しとなっています。認知度を高められるかどうかが党勢拡大のカギを握ります。

 (中道改革連合 野田佳彦共同代表)「『中道改革連合』、6文字じゃ長すぎる。暴走族みたいな名前です。そうじゃなく『中道』で覚えていただきたい。『中道』と、『中道』と」

 どこまで「中道」の名を広げられるか。新党は荒波の中の船出となっています。

【日本共産党】田村智子委員長 構図激変の今が「チャンス」と意気込む

 (米澤編集長リポート)「これから共産党の田村委員長が演説に来るということで、人が集まり始めています」

 日本共産党の田村智子委員長は、公示日に大阪・梅田で応援演説を行いました。

 (共産党 田村智子委員長)「この選挙は物価高から暮らしを守る、このことが問われる選挙です。大株主・大企業の利益最優先じゃない。日本共産党はやっぱり働く皆さんの党なんですよ」

 100年を超える歴史があり、いまある政党で最も古い日本共産党。この日演説が行われていたのは若い人が多く通るJR大阪駅前でしたが、演説に足を止めている人は比較的高齢者が多く、近年の党の課題が見えます。

 (演説を聞きにきた人)「大体もう高齢者が多いから。若い人がどこにおるの?という感じ」

 こうした状況を受け、党が心血を注いでいるのがSNSでの発信です。若者が親しみやすいよう、オリジナルソングやショート動画をたくさん投稿し、政策をPRしています。

 しかし前回の衆院選、去年の参院選といずれも議席を減らす結果に…

 党としての正念場。田村委員長は政界の構図が激変したいまこそが党勢回復のチャンスだと話します。

―――聴衆の反応をどう受け止めている?
 (共産党 田村智子委員長)「訴えていくなかで、どんどん、どんどん人が立ち止まっていっていることがよくわかりました。やはりいま、政治はどうなっているんだろう、という思いだと思うんです。枠組みが変わったというか、全体が右へ右へと本当にシフトしてしまったということ。本当にチャンスだなと思っています。政策が伝われば、党の姿が伝われば必ず支持を広げることができると確信しています」

【社会民主党】福島みずほ党首 国会議員は現在2人 衆議院での議席獲得目指す

 (社民党 福島みずほ党首)「戦争なのか、平和なのか、差別排外主義なのか、共に生きる社会をつくるのか」

 平和主義やジェンダー平等などリベラル政党として政策を掲げる社民党の福島みずほ党首。

 (有権者)「お米のおばちゃんやろ?お米のおばちゃん」
 (社民党 福島みずほ党首)「あ、ミサイルよりコメだ!ミサイルよりコメ、ミサイルよりコメですね」

 (米澤編集長リポート)「見ている人のとの距離が非常に近いですね」

 旧社会党結党から81年の歴史がある社民党ですが、国政選挙のたびに「崖っぷち」と言われる状況が続いています。

 去年の参院選では公職選挙法上の政党要件を満たす得票率をかろうじてクリア。しかしその後、唯一の衆院議員が離党し現在、国会議員は福島党首とラサール石井さんの2人だけです。

―――所属の国会議員の数が少なくなっていることについてどう受け止めている?
 (社民党 福島みずほ党首)「今度の選挙で衆議院議員をつくりたい。石にかじりついてもつくりたい。生活をもっと大事にしてよねという、消費税ゼロにしてよね、もっと教育予算つけてよね、農業予算つけてよね、という人たちの大きな受け皿に社民党はなるようにと思っています」

【チームみらい】安野貴博党首 強みの「デジタル技術」を選挙戦でも駆使

 (米澤編集長リポート)「まもなくこちらでチームみらいの安野党首の演説が始まるのですが、集まっているのは女性の方が多いです。(聴衆から)安野さんコールが上がりました」

 (チームみらい 安野貴博党首)「チームみらいは2025年に立ち上がった。日本で最も新しく、最も若い国政政党です」

 去年の参院選で安野貴博党首が初当選を果たし、国政政党となったチームみらい。AIエンジニアでもある安野党首が掲げるのは「テクノロジーで政治を変える」ことです。有権者の意見をAIで分析し、公約に生かすなどデジタル技術を駆使した選挙戦が特徴です。

―――これまでの党との違い感じる?
 (有権者)「AIとかそういうのに強いところと、いろいろな角度から国民のことを考えてくれているなと」

 政策面では、ほかの政党が訴える消費税の「廃止」や「減税」について公約に盛り込んでいません。

―――消費税をめぐり他党と大きな差。これはねらってやっている?
 (チームみらい 安野貴博党首)「全くねらってはおらず、結果的にこういう構図になった。われわれはそれ(消費税)よりもいま働いている人の大きな負担になっている社会保険料を下げることを優先するべきだと。ある種『触媒』のような政党でありたいと思っていまして。議席数だけでの存在感は他の政党と比べると小さいですが、われわれがいることによって進んでいく政策があるのではないかと思っています」

 国政に“新たな風”を吹かすことはできるのでしょうか。

各党の党首演説から見えたことは?

 実際に各党トップの演説を取材した米澤編集長が、それぞれの現場で感じた雰囲気や、見るべきポイントを解説します。

▼自民・高市総裁(神戸市内での演説を取材)

 約20分間で「日本」という言葉が30回ほど使われていたのが印象的で、国の未来・あり方を語ることに時間をかけていました。「日本を強く豊かに」というキーワードが出ると、会場からは大きな拍手と歓声が上がっていました。

 注目されるのは、連立を組む日本維新の会の本拠地である大阪へ高市総裁が演説しに来るのかどうかです。関西では、兵庫や京都には足を運んでいるものの大阪にはまだ入っていませんが(2月5日時点)、大阪の自民党の候補者からは切実な待望論が出ています。激戦区の情勢を見極めながら、党本部でギリギリまで調整が行われているようです。

▼中道・野田共同代表(大阪・堺市内での演説を取材)

 新しく結党した「中道」の野田共同代表は、党名の浸透に注力している様子がうかがえました。演説中も「中道、中道」と何度も連呼していたのが象徴的です。

 また、かつてライバル関係にあった公明党の候補者が立っていた選挙区ということもあり、「これまで候補者が失礼なことを申したことがあるかもしれません。その点は詫びます」と、公明党支持者への配慮をにじませる場面もありました。短期間でどこまで党名と存在感を浸透させられるか、必死さが伝わる演説でした。

▼共産・田村委員長(大阪市内での演説を取材)

 政治が右傾化する今だからこそ「軍事費の増額反対」などを訴える党のスタンスが際立つのだと、好機として捉える姿勢を示していました。 SNSでの発信などにも注力しており、新しい層の獲得にチャレンジしている様子がうかがえます。

▼社民・福島党首(箕面市内での演説を取材)

  福島党首は、一方的に話す演説ではなく候補者に対して質問を投げかける「インタビュー形式」をとっていたのが興味深い点でした。候補者の魅力を引き出し、党の政策を分かりやすく伝えるねらいがあるということです。 「ミサイルよりコメを」という以前のキャッチコピーに続き、今回は「今だから社民党」というフレーズを掲げ、党所属の国会議員が少ない中でいかに党を知ってもらうかに力を注いでいるようです。

▼みらい・安野党首(大阪市内での演説を取材)

  衆議院選挙は初挑戦となる「チームみらい」ですが、街頭で足を止める人の数は格段に増えています。今回の選挙戦で他党と一線を画していると考えられるのは、「消費減税を訴えていない」という点です。子どもの人数に応じた子育て減税などを掲げており、演説会場では子どもを連れた女性の姿が多く見受けられたのが印象的でした。

米澤編集長が注目したポイント

 党首演説を取材するうえで米澤編集長が注目したポイントは2点です。

(1)「場所」と「聴衆」から激戦度を測る

 選挙戦の最終盤になると、党首はいわゆる「激戦区」に重点的に入ります。もし自分の住む地域に党首がやってきたら、そこは相当な接戦であると推測できます。 また、たまたま通りがかった人がどれくらい足を止めるか、どの政策に大きな拍手が沸くかを見ることで、世間の関心の高さや政策への反応を肌で感じることができます。

(2)演説後の「ふれあい」

 最近のスタイルとして定着しつつあるのが、演説後の「撮影タイム」です。握手だけでなく、有権者と一緒に写真を撮ったり動画を撮ったりすることに多くの時間を割く党首もいて、選挙戦における一つの強力なツールとなっているようです。