衆議院選挙が行われている今、考えなくてはいけない課題の1つが「経済格差問題」。昨今の物価高で低所得者層は生活苦にあえぐ一方、資産1億円以上という“富裕層”も増えています。

 今どれくらい格差が広がっているのか?なぜ格差が広がったのか?そもそも、格差拡大が大きすぎるとどのような問題が生じるのか…。

 格差についてどのようなスタンスを取るかは、国の経済の行方を考えることでもあります。

 選挙期間中の今だから考えたい「経済格差」について、野村総合研究所・木内登英氏に聞きました。

データで見る 日本の経済格差の現状

 所得格差を示す指標である「ジニ係数」(0に近いほど格差が小さく、1に近いほど格差が大きい)を見ると、約40年で大きく増加し、1つの目安と言われている「0.4」を超えていることが分かります。

 <ジニ係数>
 ▼1981年 0.3491
 ▼2023年 0.5855
 (厚労省より 当初所得数値)

 また、生活保護世帯(1か月平均・厚労省)は増加し、2023年度には165万世帯に達しているほか、世帯所得の中央値は約30年で140万円減少。この間の物価上昇率も考慮すると、中間層も貧しくなっている可能性があるのです。

 <世帯所得の中央値>
 ▼1995年 550万円
 ▼2023年 410万円
 (厚労省より)

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 一方で、富裕層は増加しているというデータも。純金融資産1億円以上の世帯数は2倍近くに、その世帯が持つ金融資産の総額は2倍以上に増えています。

 <富裕層以上(純金融資産1億円以上)>
 ▼2005年度 86万世帯  金融資産 213兆円
 ▼2023年度 165万世帯 金融資産 469兆円
 (野村総合研究所より)

非正規雇用・物価高…格差拡大3つの「理由」

 なぜ経済格差が広がったのか?

 1つ目の理由は「非正規雇用の拡大」です。財界からの要望により、1999年・2004年の法改正で非正規雇用の範囲が拡大しました。

 <非正規雇用>
 ▼1989年 19.1%
 ▼2024年 36.8%

 2つ目が、「2010年代以降の株価上昇」です。円安で大企業(輸出企業)が潤い雇用も改善された一方、実質賃金は上がらず、投資していない人への恩恵は微々たるものでした。

 3つ目が「昨今の物価高」です。低所得層ほど食料費・エネルギーの支出の割合が多い一方、物価による資産価値上昇は富裕層に恩恵をもたらします。

消費低迷・税収伸び悩み…格差拡大3つの「弊害」

 経済格差が広がると何が問題なのでしょうか?

 1つ目が「消費低迷」です。例えば100万円を10人に10万円ずつ分配した場合、その多くは(生活必需品など)消費に回されますが、仮にその100万円を富裕層の1人が独占した場合、消費に回るのは一部であり、多くは貯蓄・投資に流れます。

 2つ目は「税収の伸び悩み」です。支え手が減り、社会保障の維持が困難になるのです。

 3つ目は「教育格差」です。低所得層は教育への投資ができず、将来的に国全体の生産性が落ちることになります。

 また、社会不安が増大し、治安悪化・社会の分断につながることも、経済格差の弊害と言えるでしょう。

金融所得課税は“特別扱い”? 格差是正2つの方法

 最後に格差を減らす方法として、野村総合研究所・木内登英氏が提案する2つの方法を見ていきます。

 1つ目が「金融所得課税の強化」です。現状では、株の配当・売却益などについて「一律約20%の分離課税」となっています。

 一般的な所得税は5%〜45%の累進課税であることから、富裕層から見て金融所得課税は“お得“になっている可能性があります。つまりこれは、より投資を促すための“特別扱い”なのです。

 この金融所得課税について木内氏は「株の配当・売却益など一律約20%を引き上げる」こと、そして「分離課税をやめる」ことを提案しています。

 ただその場合、“貯蓄から投資へ”という政府の政策と矛盾し、株式市場が冷え込むおそれもあると言います。

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 格差是正案の2つ目が、「金融資産課税」。つまり、持っている資産に課税する方法です。

 ただし、そもそも資産を把握できるのか、その場合プライバシーの問題はどうなるのかといった懸念があります。

 格差拡大は自由競争の結果であり、格差が広がりすぎると経済成長を阻害する可能性もある一方、平等という観点から格差縮小を進めた場合、税・社会保障の負担が大きくなるという弊害があります。

 このバランスをいかに取っていくのか?つまり“理想の格差”とは何か?今回の衆院選に向けて、考えていく必要があるかもしれません。