関西の大学ラグビーは秋のリーグ戦が終了。いよいよ今週末から、上位チームは大学選手権、下位チームは来シーズンの生き残りをかけた入替戦に突入します。
大学選手権に関西から出場できるのは3校。入れ替え戦回避に向けた戦いも含めて、11月30日(日)に花園ラグビー場で行われたAリーグの最終節(4試合)は、すべての試合が大一番。眼が離せない試合となりました。
関西学院大学vs近畿大学 「目標としてきたベスト4を達成したい」
第1グラウンドの第1試合は、ここまで勝ち点20で3位が確定している関西学院大学と、状況によっては入替戦にまわる可能性もある5位・近畿大学の対戦。昨年は、この対決に勝利した近畿大学が選手権への出場権を手にした一戦は、今シーズンの両チームを象徴する試合となります。
前半から中盤までは関西学院大のペースでした。キャプテンの中田偲響選手を含む3人のリーダ陣をけがで欠く中、代わりに出場した選手たちが奮起。FB的場天飛選手の3トライなどで、35対17と大きくリードを奪います。
一方の近畿大学も粘り強く反撃。後半27分・31分と立て続けにトライを奪って、35対31とワンチャンスで逆転可能な4点差まで追い上げます。
勝利はもちろん、勝ち点1を積み上げるだけでも、Aリーグ残留が決まる近畿大学。しかし、シーズン中ずっと課題となっていた、終盤の詰めの甘さがこの試合でも出てしまいました。ロスタイムに突入した42分、我慢強くボールを継続してくる関学の攻撃を防ぎ切れずに痛恨のトライを許してしまいます。31対40と点差を9に広げられてしまいました。
それでも、中田悠生主将が「あとに続く後輩の為にもなんとかしたった」と語ったように、残り少なくなった時間にかけて懸命の反撃を試みます。直後のキックオフから激しく責め立てると、敵陣中央20m付近で関学の反則を誘います。この場面で中田主将の選択はPG。決まれば6点差となって、貴重な勝ち点1を獲得できるゴールを狙います。
しかし、3点を狙ったキックは無情にもゴールポストに当たってゴールなりません。跳ね返ったボールを必死に確保しようと試みますが、最後は、関西学院大が押さえてノーサイド。
昨シーズンから続く因縁の対決は、ゲームキャプテンを務めた中俊一郎選手が「とにかく、しぶとく、泥臭く、関学らしく最後まで前に出続けようと話をしていた」と振り返った関西学院大学が、40対31でリベンジを果たして近畿大学に勝利。今シーズンのリーグ戦を5勝2敗の3位として大学選手権への出場権を手にしました
その関西学院大学は、大学選手権の3回戦で九州学生リーグを1位で通過した後、選手権2回戦で朝日大学の挑戦を退けた福岡工大と対戦。この試合に勝利すれば、対抗戦でライバル早稲田大学を振り切った明治大学との一戦が待ち受けています。
「選手権は、この1年間、4年生は4年間かけて積み重ねてきたことが最後に出ると思っている。細部にこだわって、4年生たちと目標としてきたベスト4を達成したい」と語った関西学院大学・小樋山樹監督。期待を胸にともに歩んできた選手たちと選手権に挑みます。
天理大学vs京都産業大学 「チャレンジャーとして体を張ってくれた」
![]()
続く第2試合に行われたのは、連覇を狙う天理大学と京都産業大学との優勝をかけた一戦。ともに6戦全勝、勝ち点差わずか1点で迎えた両チームの戦いは、序盤から激しく体をぶつけあう肉弾戦となります。
京都産業大学が縦に強いランナーと得意のスクラムでプレッシャーをかけて敵陣で試合を進めようとすると、天理大学は前に出る鋭いディフェンスとFW陣の素早い動きで対応。息詰まる攻防が続きます。
先制したのは天理大学。前半5分、ハイボールの競り合いに勝利して一気に敵陣深くまで攻め込むと、素早い球出しの連続から、最後はSH朝倉達弥選手がラックサイドを判断よく抜け出して中央にトライ。ゴールも決めて7点をリードします。
一方の京都産業大学も反撃。得意のスクラムでプレッシャーをかけて敵陣で相手ボールを奪い取ると、京産大らしい縦への連続攻撃を仕掛けて、じわりじわりと天理大を押し込んでいきます。
そして11分、FL平野龍選手が天理大ディフェンスにできた一瞬のスキをついて一気にトライラインにせまると、フォローしたNO8シオネ・ポルテレ選手が、追いすがる天理大の選手を引きずりながら中央にトライ、7対5と2点差に詰め寄りました。
中央から同点のコンバージョンゴールを狙う京産大SH高木城治選手。しかし、このキックを猛然とダッシュしてきた天理大学のWTB平松麟太郎選手がチャージ。同点は許しません。「高木選手がゴールを狙うときに、動き出してから時間がかかるという情報は入っていたので狙っていました」と話した平松選手。このプレーが天理大を勢いづけました。
直後の14分、京産大の不用意な反則で敵陣深くまで攻め込むと、このチャンスにラインアウトからモールをうまくポイントをずらしながら巧みに押し込んでいきます。そしてFLアリスター・サウララ選手が左中間にトライ。21分にもトライを加えた天理大、SO上ノ坊駿介選手が確実にゴールも決めて、21対5と大きくリードを奪いしました。
天理大の勢いに完全に受け身に回ってしまった京産大。それでも、この後は自信をもつスクラムを軸に試合を立て直します。スクラムを押し込んだ後のチャンスから28分にPGで3点を返すと、35分過ぎからは、天理大を自陣深くに釘付けにして責め立てます。しかし、陣形を崩さず、一人一人が責任をもってしっかりと前に出続ける天理大のディフェンスをどうしても崩すことができません。前半は21対8、天理大の13点のリードで折り返しました。
サイドの変わった後半、どちらが試合の流れを引き寄せるのか、勝負の行方を左右する重要な局面でチャンスをものにしたのは天理大でした。後半開始わずか3分、京産大得意のスクラムを粉砕して敵陣深くまで攻め込むと、ラインアウトからのモールを一気に押し込んでHO猿渡翔眞選手が右中間にトライ。ゴールも決めて28対8。京産大の生命線を崩した上でしっかりと得点につなげた天理大学が完全に試合の流れをものにしました。
こうなると天理大の勢いは、止まりません。17分に再びスクラムで京産大の反則を誘ってトライに結びつけると、30分には、鮮やかなカウンター攻撃からサウララ選手のこの日3本目のトライで京産大を突き放しました。
最後は、キャプテン上ノ坊駿介選手の独走トライで全勝対決を締めくくった天理大学。47対15の大差で京都産業大学を下して連覇を達成。関西大学ラグビーAリーグ14度目の優勝を飾りました。
この結果、2位となった京都産業大学は、対抗戦5位の慶應義塾大学と大学選手権の3回戦で激突。天理大学は、対抗戦3位の早稲田大学とリーグ戦3位の関東学院大学の勝者と準々決勝で対戦します。
「選手権にむけては、われわれのこだわってきたことをしっかりとやり切ることが大切だと思っている。それが強いチーム」と語った京都産業大学・廣瀬佳司監督。
「今年はリーグ戦に参加させていただいただけで感謝の気持ちでいっぱいだった。選手たちが、最後までチャレンジャーとして、体を張ってくれたことが嬉しかった」と小松節夫監督が話すと、上ノ坊キャプテンが、「大学ラグビーは、関東の方が上と思われているが、関西のラグビーも負けてないぞというプライドもある。関西1位というプライドを持って関東相手にチャレンジしてきたい」と選手権への想いを口にした天理大学。
関西を代表する両チームが、いよいよ今週12月14日(日)から、大学日本一を目指して第62回全国大学ラグビー選手権大会に挑みます。
その他の試合
その他の試合、第2グラウンドの第1試合では、最終節を7位で迎えた関西大学が摂南大学に48対22で快勝。ボーナスポイントを含む勝ち点5を積み上げて5位に浮上しました。
続く第2試合では、4位の同志社大学が後半に立命館大学を突き放して29対19で勝利。引き分けでもAリーグ残留の可能性があった立命館大学ですが、関西大学と入れ替わって7位に転落。春の関西大学ラグビートーナメントの王者が、まさかの入替戦にまわることになりました。
ABリーグの入替戦は12月13日(土)に宝が池ヶ球技場(京都市)で行われます。
関西で開催される大学ラグビーの今後の日程
▼関西大学ラグビーリーグAB入替戦 12月13日(土) 宝ヶ池球技場
・摂南大学 (A8位)対 龍谷大学(B1位) 午前11時45分KO
・立命館大学(A7位)対 大阪体育大学(B2位) 午後2時KO
▼第62回全国大学ラグビー選手権
(3回戦)12月14日(日) 花園ラグビー場
・関西学院大学 対 福岡工大 午前11時30分KO
・京都産業大学 対 慶應義塾大学 午後2時KO
(準々決勝)12月20日(土) ヤンマースタジアム長居
・東海大学 対 (京都産業大学×慶應義塾大学)の勝者 午前11時30分KO
・天理大学 対 (早稲田大学×関東学院大学)の勝者 午後2時KO