『正寿院(綴喜郡宇治田原町)』編

#11 2022年12月11日(日)放送

京都の奥座敷、綴喜郡(つづきぐん)宇治田原町の山あいに佇む「正寿院(しょうじゅいん)」を紹介しましょう。寺院の歴史は古く建立は今から約800年前の鎌倉時代。
かつてこの地で栄えた飯尾山医王教寺(いのおさんいおうきょうじ717年創建、現在は廃寺)の塔頭として建てられました。
京都の数多い神社仏閣の中では、まだあまり知られていない正寿院。ところが今「知る人ぞ知る寺院」として全国から熱い視線を受けているのです。

安置されている不動明王坐像は大変珍しく貴重なもので、鎌倉時代の仏師、快慶(かいけい)が彫った国指定重要文化財です。温雅な如来像を得意とする快慶の数少ない憤怒の明王像で、力強い表情と睨みの眼は鋭くてすごい迫力!

客殿の「則天の間」に足を踏み入れると、目に飛び込んでくるのはハート型のような窓。あまりの可愛さにこの窓を見るために多くの人がやってくるのだとか。
実はハート型に似た窓、本当はハートではありません。日本の神社などの建築装飾に古くから使われてきた「猪目(いのめ)です。猪の目の形とされ、魔除けや招福の意味もあるそうですよ。

則天の間、では近くを流れる川のせせらぎや風の音、鳥のさえずりが聴こえ、猪目窓から木々の彩りや日差し、日の翳りを五感で感じることができます。人間も自然の一部であることに気づき我や時間を忘れる場所であって欲しい、という願いを込めて「則天去私(そくてんきょし)」という言葉から「則天の間」と名付けられたようです。

正寿院で春夏秋冬を五感で感じ取ってみてはいかがでしょうか。

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