「演じることは“無上の喜び”」
類まれなる表現力の源泉を探して
その繊細な芝居に、観る者は息をのむ。若手の演技派俳優というと、いま真っ先に名前があがるのが坂東龍汰だ。
一昨年のドラマ『ライオンの隠れ家』。自閉スペクトラム症の青年を演じ、そのリアルさが大きな注目を集めた。視線の動かし方や指先の微細な震え、言葉のトーンなどの緻密な表現は、視聴者だけでなく当事者やその家族からも絶賛されたという。配信をきっかけにその演技は海を越え、海外のドラマアワードなどグローバルな評価も受けている。
なぜ難しい役が演じられるのか。そもそも坂東とは何者か。その実像が知りたかった。
話題を呼んだドラマ『シナントロープ』の撮影現場では、同世代の俳優たちと切磋琢磨しながら、細かな表現について監督と意見を交わす。時代劇の映画『黒牢城』(黒沢清監督)では、現代とは異なる所作を自ら解釈し演じることが求められた。「役と自分が出会う瞬間が、どの現場にもあるんです」と、芝居への熱意は尽きない。
役者を志したきっかけは、高等部の卒業演劇。「恐怖と歓喜が混ざった、半端じゃないエクスタシーを感じた」。旅館の仲居のアルバイトでお金を貯めて上京。安アパートに暮らしながら原宿でスカウト待ちをする日々。いくつもの事務所に履歴書を送って、やっとつかんだ俳優という生業。
番組は、舞台『カッコーの巣の上で』(演出・松尾スズキ)にも密着。挑むのは、吃音がある青年ビリーという、これまた難役だった。役作りを模索する中、原作や台本には書かれていない役の背景に思いを巡らせる姿があった。
誰に対しても屈託がない坂東は、取材にも嫌がらずに応えてくれている。そう思っていた。
だがある日、ふとこぼした。「直球の質問には言いたくないと思うことがある。でも・・・」続いた言葉に、彼の人としての誠実さを感じずにはいられなかった。
節目の年齢を目前に「今のままではまずい」と語る29歳は、役にも自分自身にもどこまでも実直だ。
Ryota Bando
1997年、ニューヨーク生まれ。北海道で18年間シュタイナー教育を受け、テレビもゲームもインターネットも禁止された環境のなか、映画フリークの父の影響で映画だけは楽しむことが許された。
高等部で演劇の授業があり、本番の体験に感動して俳優の道を志す。
2017年、俳優デビュー。2022年『フタリノセカイ』で映画初主演を務め、第32回日本映画批評家大賞の新人男優賞(南俊子賞)を受賞。2024年のドラマ『ライオンの隠れ家』で自閉スペクトラム症の青年を演じ大きな話題に。2025年、映画『爆弾』で第49回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。
2026年に映画『黒牢城』、映画『未来』、アニメ『我々は宇宙人』の公開がある。
趣味は写真撮影。好きな食べ物はグミ、焼肉、カニ。肩こりに悩まされ、車移動ではファンからもらった愛用のネックピローが欠かせない。
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