世界トップクラスの氷河研究者
夏のグリーンランドで見つけた異変
雪氷学とは、雪や氷を専門とする学問だ。
北大教授・杉山慎は、その抜きんでた氷河研究の功績が認められ、去年からこの分野の国際学会の会長を務める、まさに世界のリーダーだ。大学院では「北極・南極学カリキュラム」という極地研究者を育成する講座を持ち、専門家を輩出。南極へは通算4回、北極圏へは15年にわたり、いずれも現地入りしての調査を続けてきた。
取材カメラは、雪山での実習、さらに夏のグリーンランドでの氷河観測に同行した。グリーンランドは、いま最も地球温暖化の影響がある場所とされる。杉山は「現場」が好きでやまないらしい。極北の野生のフィールドで、自らドリルを持って汗だくになりながら氷河に穴をあけ、ドローン観測の精密さを求めてひたすらガレ場を歩き回り、半日かけてGPSのマーカーを置き、何度もその位置座標を計測し...しかし当の本人は、その極地のフィールドを常に楽しんでいた。人里離れた氷河近くでのキャンプでは、若手研究者をバックアップするため自ら川で水をくみ、食事を用意する。研究とは、自分が好きなことと、社会の役に立つこととの「もたれあい」だという杉山。氷河最前線で、世界の未来を見つめる研究者のまなざしに迫る。
Shin Sugiyama
1969年3月愛知生まれ。大阪大学大学院修了。信越化学工業にて先端デバイス開発(ガラス、半導体部品)に従事後、青年海外協力隊に参加。山登りをきっかけに、物質研究の背景を活かせる氷河研究の道へ。北海道大学でのポスドクを経て、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)へ留学。現在、北海道大学低温科学研究所教授・北極域センター長。北極域研究強化プロジェクト「ArCS III」のリーダーの一人。専門は雪氷学、氷河・氷床変動。特に氷河の底面や先端の境界(カービング氷河)の直接観測においての世界的な研究成果を残す第一人者。2025年には「EGU欧州地球科学連合」というヨーロッパの学会にて雪氷寒冷圏科学(Cryosphere Division)の最高賞Julia and Johannes Weertman Medalを欧米以外の研究者として初受賞。著書に『南極の氷に何が起きているのか』(中公新書)など。
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