情熱大陸

診療所医師・パイロット Vol.1414

次田展之

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08.09(日)

よる11:15

空を飛び 島民の命を守る
瀬戸内海の“フライングドクター”

気がつけば、空を見上げている医師がいる。
診療所医師・次田展之が向かったのはヘリポート。そして自ら操縦桿を握り、およそ10キロ先の離島へヘリコプターを飛ばして患者の元へ駆けつけた...
瀬戸内海に浮かぶ百島(ももしま・広島県尾道市)には、かつて医師が不在だった。
15年前、次田はその百島に診療所を開設。その後、同じく医療が届きにくかった佐木島(広島県三原市)、岩城島(愛媛県越智郡上島町)にも診療所を設けた。3つの島はいずれも本州や四国とは橋で繋がっておらず、島民たちが病院へ通うには船での移動を余儀なくされていた。そんな不便を打破すべく、次田は空路移動で迅速な医療行為にあたっている。医学部学生時代に小型飛行機の免許をアメリカで取得し、日本でプロのエアショーパイロットとして活躍した経歴を持つ次田は、当時からイメージしていた「自分にしかできない医療」を実現していた。
取材は今年4月、岩城島診療所の開所準備から始まった。1年前に閉鎖してしまった島唯一の診療所をリフォーム。事前の住民説明会には、悪天候にもかかわらず会場のホールを埋め尽くす島民が訪れた。新しい診療所への期待は大きい。診察室の整備からパソコンの準備まで、次田をはじめ看護師や事務員が総出で開所にこぎつけた。
飛び回る3つの島はいずれも高齢者が多く、糖尿病や高血圧、腰痛など、慢性的な病気を抱える患者が少なくない。次田は、島民の既往歴はもちろん好きな食べ物や家族構成など、あらゆる情報を把握するよう努めている。
診療は普段着のまま。世間話をするかのような振る舞いで診察し、時に「歯に衣着せぬ物言い」で患者への健康指導を行う。
開所した岩城島診療所には、初日から大勢の患者が押し寄せた。診療所にとって全員が新患。妻を亡くし一人暮らしの80代の男性は「不整脈でいつ心臓が止まるか心配だ...」と訴えた。次田は脈を診て、心電図をとる。診察後、患者に異常がないことを伝えながら「心配ないよ!」と言い切り、冗談を交えながら体の心配事や普段の生活ぶりを聞き取った。帰り際、男性は安心した表情で「ひさしぶりに笑ったよ」と診療所を後にした。
「島民はみんな家族」と語る次田。届けていたのは医療だけではなかった。

Nobuyuki Tsugita

1973年1月 神奈川生まれ。日本大学医学部時代に小型飛行機の操縦免許取得のために渡米。現地でアクロバット飛行を目にし、エアショーパイロットのショーン・タッカー氏に弟子入り。日本大学医学部附属板橋病院に入局し、医師とパイロットの二刀流でキャリアを積む。2002年に日本のアクロバット飛行チーム「エアロック」に所属し、エアショーパイロットとして活躍。帝京大学医学部附属市原病院、湘南第一病院、サガミホームクリニックの副院長を経て2011年に百島診療所を開設。2018年に佐木島診療所、2026年に岩城島診療所を開設した。医療法人心海会の理事長。趣味は柔術や総合格闘技。

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