特別企画 ドラマを120%楽しむ特別企画。【監督自らの解説】
〜監督からドラマが大好きなあなたへ〜 「ピュア・ラブ」をもっと楽しく見ていただくために、ドラマ作りの裏側をチョッピリ公開。
ネタバレする可能性があります。ご注意ください。 →[ この週のあらすじ ]
第36話

木里子の病室にあって木里子を励ましている物といえば、勿論、イルカのモビールですが、佐竹医師が持ってきた基生の画もそう言えるでしょう。
そしてこの回にもうひとつ登場する新しい小道具が後々、ドラマの味わいを深くします。
それから注目していただきたいシーンは、龍雲寺・隠寮(老師の部屋)での宗達と陽春の会話です。
私は前作の「ピュア・ラブ」が始まる前、監修の長門義明さんにお願いして、猪野君と関西にある有名な修業道場で本物の老師とお目にかかり、いろいろとお話を伺いましたが、そのときの印象から老師と弟子の関係とは普通の師弟関係とはまったく違う独特のものといったイメージを持ちました。
そこで宗達と陽春、この二人の芝居をみて、何かが足りないと感じると、川津、猪野両氏に必ず言った言葉があります。
それは「これは師弟の会話ですが、同時に真剣勝負なのです」という事です。
こう書くと、何か冷たい関係のようですが、そうではなく、宗達は陽春を息子の様にかわいがり、事あるごとに自分の身につけた様々なことを教えようとします。陽春は宗達を師として尊敬し、絶えず謙虚に宗達からあらゆる事を学ぼうとしますが、それでも二人の会話は絶えず真剣勝負なのです(愛情のこもった真剣勝負とでもいいますか)。宗達は周作の願いを入れて、本来書くはずのない暫暇願いを書いて、陽春を呼び寄せました。当然、その行為に関して宗達は責任を持たなくてはなりません。はっきりと目に見える形で二人の真剣勝負とも言える芝居が、最終話まで続いていきます。
二人の俳優の演技にどうぞご注目ください。

第37話

今回は食べ物の話をしましょう。
戸ノ山が料理名人で、麻生家の昼と夜の食事をまかされていて、そのレシピなど、このホームページで紹介していますが、「かたつむり」の主人の吉住忍も勝るとも劣らない料理名人なのはご存知の通り。
麻生家の朝の米食に対して店が忙しいので卵料理とサラダを中心にしたパン食ですませていますが、おやつには裕太の野菜不足をカバーするため、必ず野菜ジュースを用意するという心遣いもあり、夕食もこれまでにカキフライ卵とじ丼やすき焼き丼、ハヤシライス、鍋焼きうどんなど、忍さん手作りの料理がいくつか紹介されました。
店が休みになればもっと手間のかかった料理も裕太のために作るのでしょうが、なにせ年中無休という設定なので、そのチャンスがないのが残念ですね。
この37話では佐竹医師が「かたつむり」で忍におすすめ料理を注文してくれたので、プロの料理人としての忍好みの、戸ノ山さんよりもう少し手間をかけた手料理をいくつか紹介できますので、お楽しみに。
それから忍の店「かたつむり」がなぜ明石焼きの店になったのかと質問された方がおられましたが、これは「ピュア・ラブ」の時、宮内さんから相談を受けて、私が明石焼きの店をアイデアの一つとして提案し、宮内さんが気に入られて決まったのですが、そのほかの候補には、和食割ぽうの店、持ち帰りの惣菜屋、中国飲茶の店、中国茶の店などがあり、もし飲茶の店になっていれば、ストーリーがどう変わったのか、想像するのも愉快なことですね。

第38話

ごく普通に「ピュア・ラブU」を楽しんでいらっしゃる方が多いわけですし、それが当たり前なので、こんな話はつまらないかも知れませんが、このページはドラマ大好き人間、ドラマの裏側を見てみたいという人たちのために作られたものなので、ちょっとマニアックな話を…。移植の準備のため入院している木里子の部屋に誰かが訪ねてきます。
ドラマを少しでも面白くするために、その時、木里子に何をさせておけばよいか?
皆さんなら何を思いつきますか?
今までの例でいうと、「食事をしている」「ぼんやりモビールを見ている」「雑誌を読んでいる」「佐竹からもらったCDを聞いている」などで、勿論、それぞれ意味のある行為なわけですが、この回では「算数の教材を予習している」というシーンが出てきます。
実は37話のシーン2でこの教材の予習という行為は初めて出てきて、今回で2度目なわけですが、37話では教材本を見ているところに周作が入ってきて、木里子がさりげなく教材を片付けるという形のお芝居になっています。
この意味は木里子が移植に立ち向かって成功させ、また教壇に立ちたいという意欲を強く持ってきたということを表現しているのと、移植に向かって体力を温存することが必要だから、疲れることはしてはいけないと、父にとがめられることを避けようとした木里子の気持ちも同時に現れているわけです。そして38話では同じく算数の教材をチェックしている所に陽春が訪ねてきます。
陽春「何を勉強されていたのですか?」
木里子「算数の教材です」
というやりとりで、陽春は木里子の生きていくための気力、意欲を再確認して、顔のアップはあえて撮っていませんが、ほっとするわけです。こういう設定をすることでこの後の陽春の芝居が、たとえば木里子が雑誌を読んでいるところに入ってきた時と、まったく変わってくるわけですね。
ドラマの作り方の一例です。

第39話

「ピュア・ラブU」も残り2話となり、目の離せないシーンの連続です。
私も演出≠ニいうドラマの責任者ではありますが、やはり裏方の一人なので、裏方は裏方らしくここら辺りで引っ込みます。
この期に及んでの解説は却って興をそぐかな、とも思いますので…。
この後は俳優とスタッフが全力で作ったこのドラマ「ピュア・ラブU」のクライマックス2話をあれこれ考えず、どっぷり首までつかってお楽しみください。
皆さんのご意見やご感想、批評をお待ちしております。