ジャンルを超えてオファー殺到!
大役に挑んで…二十歳のたぎる思い
          
          「歌舞伎がとにかく好きなんです。物心ついた時からずっと好き。」
祖父は二代目松本白鸚、父は十代目松本幸四郎。
江戸時代から続く歌舞伎の名門に生まれた二十歳の青年は、誰かに強要されたわけでもなく真っ直ぐな目で歌舞伎への愛を語る。「パワーをもらえる」と、楽屋には高祖父から代々の写真を飾り、空き時間には歌舞伎のアーカイブ映像を視聴。学ぶためというより、若者が自然とYouTubeの映像を見るように、過去の歌舞伎を楽しんでいるように思えた。
今年は、直木賞受賞作を原作とした新作歌舞伎「木挽町のあだ討ち」の主演にも抜擢された。共演者には、父・幸四郎をはじめ錚々たる先輩たち。稽古場で、父や先輩の姿に学びながら、「舞台の真ん中に立つ」責任を果たすべく汗をかく。
そんな市川染五郎に今、ドラマや雑誌などジャンルを超えたオファーが殺到している。ファッション誌のモデルをすれば、「すべての指先に神経が行き届く人はモデルにもほとんどいない」と編集長が舌を巻き、初めて現代劇に挑戦すれば、「彼にしかない不思議な佇まいが美しい。どこか、背筋が伸びている」と共演した西島秀俊が驚く。
"美しさ"の源泉はどこから湧いてくるのか。
仕事の幅が広がることを、「舞台で観客が見るのは今の自分。映像は過去の自分」「舞台は客席に観客がいるが、映像は観客が舞台に上がって自分の横にいるイメージ」と、独特な表現で客観視する。一方で、無事にドラマの撮影を終えた後、両手にクレープを持ってかぶり付く姿には、少年のようなあどけなさが残る。
「役者にゴールはなく、何歳になっても、何十年経っても、修行の身です」
気鋭の俳優には、静かな眼差しに秘められたたぎる思いがある
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