情熱大陸

関節外科医 Vol.1378

桑沢綾乃

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11.16(日)

よる11:00

「自らの脚で、再び人生を歩みたい」
膝と“会話”し関節症に立ち向かう

「会話をするように、膝の声を聞きながら手術をします」
執刀する手術の数は、膝関節だけで1日に5件、年間600件に及ぶ。
関節外科医・桑沢綾乃は膝を中心とした関節治療のエキスパート。患部を人工関節に置き換える外科手術に加え、手術をしない保存治療にも力を入れる。全国に先駆けて導入した再生医療(APS療法)の1000を超える症例は世界トップレベルだ。

桑沢が整形外科部長を務める埼玉協同病院・関節治療センターには、全国から患者が集まる。
そのほとんどが変形性膝関節症だ。クッションの役割を果たす膝の軟骨がすり減って炎症を起こす疾患で、国内に2,500万人を超える患者が存在するとされる、いわば「国民病」。
取材中に出会った70代の男性は、日本人に多くいるいわゆる"O脚"で、年々膝が曲げづらくなり、また真っ直ぐに伸ばすことも難しくなる症状に苦しんでいた。「またゴルフがしたい、家族サービスの旅行にも行きたい」...願いを叶えるべく、桑沢は画像所見や手術中の手の感覚で、"膝と会話"をし、原因をつきとめる。男性の場合、膝の骨棘(こつきょく)とよばれる部分が邪魔をして可動域が制限されていた。桑沢がそれを除去し、人工関節に置き換えると、O脚は治り、膝の曲げ伸ばしもスムーズに。喜ぶ男性に、桑沢は「ハンサムな膝になった」と笑った。

整形外科は、全診療科の中で最も女性医師の占める割合が低いという。重い脚を抱えるなど、力仕事が多いことも理由の一つ。過酷な仕事をこなしつつ、桑沢は母の顔も持つ。シングルマザーとして育てた娘は今、医学部で学んでいる。

「また庭の手入れをしたい」と診察室に車椅子で入ってきたのは80代の女性。桑沢は、膝だけでなく、股関節の異常も発見する。膝と股関節の同時手術をすべきかどうか...、果たして桑沢の選択は――

Ayano Kuwasawa

1977年、静岡に生まれる。
歯科医だった父の影響もあり、幼少期から医者への憧れをもつ。東京女子医科大学を卒業後、リウマチ膠原病内科へ進むが、整形外科医へ転向。研鑽を積み、現在は膝の人工関節手術の執刀数は全国トップレベル。先駆的に再生医療(APS療法)を導入し、多くの手術見学や講演を受け入れ、関節外科を牽引する女性医師として注目されている。
2001年に川崎市立川崎病院、東京医療センターなどを経て、2010年に埼玉協同病院に赴任。
2018年に関節治療センターの立ち上げに参加し、副センター長・整形外科部長に着任し現在に至る。趣味は、娘との温泉や銭湯めぐりやハープ演奏。女手ひとつで育てた愛娘は医大に通う。

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