夢は全人類の頭にかぶせること!
僕が「帽子作りに魂を売る」理由
シャネル、ディオール、エルメス、ロエベといった名だたるトップメゾン、そしてロイヤルファミリーなどのVIP、さらには世界中のファッショニスタまで...。
日爪ノブキ(45)の元には、「帽子」のオーダーが後を絶たない。
アトリエを構えるのは、様々なアーティストや職人たちが暮らすフランス・パリの11区。
2019年には、フランス文化の継承者にふさわしい高度な技術を持つ職人に授与される「フランス国家最優秀職人章(M.O.F.)」を受章。 帽子職人部門では日本人初となる栄誉だ。
子供の頃からファッションへの関心が高かった日爪は大阪の大学に進学するも、父親の反対を押し切りダブルスクールで服飾デザインのプロ養成校、文化服装学院にも通った。
在学中はドレスや舞台衣装など作品を制作してはコンテストに応募し、装苑賞に2度ノミネートされるなど高い評価を得た。
そして、作品がイタリアのアンダーウェアメーカーの目に止まり「自身のブランドをやらないか」とオファーが届く。
天にも昇る気持ちで卒業と同時にイタリアへ渡り、服飾デザイナーとして本格的なキャリアをスタートさせた。しかし、待っていたのは熾烈な競争。言葉や文化の壁も立ちはだかった。
その上、ストイックな仕事に対する姿勢は人を遠ざけ、気づけば多くの仲間や友人が去って行った。
「評価されるために服を作っていたんだけど...」
目標を見失い、帰国を決意してイタリアを離れる前日、転機が訪れた。
日本のあるプロデューサーから「ブロードウエイミージカルの日本公演のためにヘッドピース制作を担当してほしい」と依頼されたのだ。
帽子作りの経験がほとんどなかった日爪は試行錯誤するもなんとか作り上げた。
果たして作品は大きな反響を呼び、次々と依頼が舞い込むように。
洋服を作っていた時には得られなかった喜びや創作意欲が湧いてきたという。
2019年に自身のブランド「HIZUME」を立ち上げ、今は年に2回行われるパリ・ファッションウィークでコレクションを発表している。
今回、9月に開かれたコレクションに向け、凄まじい熱量で作品制作に挑む姿、さらに気鋭の日本人デザイナーとコラボしたコレクションの様子を取材。
「夢は世界中全ての人の頭に帽子をかぶせること」
まるで冗談のように聞こえた言葉も、日爪の真剣な眼差しの前ではいつかそんな日が本当に来るかもしれない、と思わされてしまう。
アトリエで一人、100年以上前に製造された帽子用のミシンの音を響かせながら新作コレクションの作品づくりが続いた。そして、日爪にしか作れない帽子の誕生に立ちあった。
Nobuki Hizume
1979年、滋賀県生まれ。
2004年に、文化服装学院アパレルデザイン科を主席で卒業。
イタリアに渡り、ファッションデザイナーとしての経験を積む。
帰国後、国内外の舞台やミュージシャンの帽子・ヘッドピースを制作し、これらの活動が評価され、2009年に文化庁の海外研修制度によりパリに派遣される。
渡仏後、世界最高峰の帽子アトリエにて経験を積み、2019年に帽子職人部門における“ M.O.F.(フランス国家最優秀職人章を受章)”に 日本人として初めて認定される。
同年、自身の帽子ブランド “ HIZUME ” をスタート。また、名だたるトップメゾンとの仕事も手がけている。
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