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宮本まさ江映画衣装Vol.1367
日本映画界の“ゴッドマザー”
作品に風合いを生み出す衣装作り
かつて、俳優の市原悦子はこう言ったという。「まさ江ちゃんは映画の神様と結婚したからね」。
『キングダム』、『ゴールデンカムイ』といった大作映画から独立系の作品、さらに舞台やCMまで...。宮本まさ江がこれまで手がけた作品は、映画だけでも優に200を超える。彼女の名前を知らぬとも、作品を通してその衣装を目にした人も多いだろう。
多い年には10本もの映画衣装に携わる宮本に、初めてカメラを向けたのは去年春。明治時代の志士たちが賞金をかけて命懸けのバトルを繰り広げるドラマ『イクサガミ』の撮影準備に追われていた。
衣装デザイナーには、脚本を深く読み込み、役の背景や作品全体の世界観を想像する力が求められる。衣装が役に馴染むように生地選びから縫製、さらには使い込まれたような「味」を出す"汚し"と呼ばれる作業までーー宮本は卓越した審美眼と技術で一着一着仕上げていく。本番までに役者が体重を落とす場合は、それを想定したサイズで仕立てる。これまで関わった俳優たちのスリーサイズをファイリングしているのも強みだ。
アメリカの統治下にあった沖縄を舞台にした映画『宝島』では、約400名のエキストラ一人一人の衣装を手がけ、圧巻のデモのシーンを後押しした。また、実在した組織に着想を得たドラマ『シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~』では、衣装のシワひとつにこだわって戦時中の息苦しい空気を醸し出そうとしていた。
テーラーを営む父親と理髪店を経営する母親との間に長女として生まれた。両親から「鉄砲玉のようだ」と言われるほど活発な少女には、心待ちにしている場所があった。毎週土曜日に父親が連れて行ってくれた映画館。幼い宮本に、スクリーンに映し出されたチャンバラや西部劇は魔法のような驚きと興奮を与えてくれた。映画衣装の道へ進んだのは自然な流れだった。
仕事は衣装作りだけではない。現場では何気ないコミュニケーションを通して俳優たちの不安や緊張を解きほぐす。常に快活で誰からも頼りにされる姿は、まさに日本映画界のゴッドマザーだった。
PROFILE
千葉県出身
「第一衣裳」に入社し、1988年にフリーに転身。
1998年に下北沢に映画館「シネマ下北沢」をオープンして支配人を務める。
2000年には市川準監督の映画『ざわざわ下北沢』をプロデュース。
その後、株式会社ワード・ローブを立ち上げ、大作映画から独立系映画まで数多くの映画のスタイリストや衣装のデザインを手掛ける。
2013年 第36回日本アカデミー賞協会特別賞
2019年 第74回毎日映画コンクール特別賞
2023年 芸術選奨文部科学大臣賞
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