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2024年04月14日(日) 放送分

川西康之モビリティー建築家
Vol.1296

型破りの発想で“移動をデザイン”
列車も駅も、街までも変える!?

「モビリティー」、つまり移動にまつわるあらゆることを、デザインのチカラで変えようとする男がいる。川西康之。
例えば、私たちの暮らしを乗せて走り続ける鉄道。代表作のJR「ウエストエクスプレス銀河」は、京都-出雲間を10時間以上かけて結ぶ、「鈍速」の旅を味わえる観光列車。ラウンジや座席のデザインを考案、寝そべって景色を眺められるスペースまで作ってしまった。「豪華な寝台列車に引けを取らない」と予約が殺到、瞬く間に人気列車になった
車両だけではない。出世作となったのは、高知県四万十市「中村駅」のリノベーション。
駅の利用客は1日わずか1000人。列車の発着数は1時間に2~4本しかない。利用しているのは、高校生や高齢者が大半だった。近くに泊まり込み、人の動きを観察してひらめいたのは、待合室を自習室に改装するアイデアだった。「将来、街を背負ってもらう学生たちに、心置きなく勉強してもらいたい!」地元産のヒノキを大胆に使い、ぬくもりのある空間を演出。鉄道業界の国際的なデザインコンペ「ブルネル賞」を受賞した。
秘訣は「まずその土地を知り、住人の意見を聞き、その街が何を求めているのかに耳を澄ませること」。
仕事は評判を呼び、いつしか駅の建物や広場、船やバス、町づくりのデザインに至るまで、全国から依頼が舞い込むようになった。いまは常に20前後のプロジェクトを抱え、日本中を飛び回る毎日だ。

先週、鉄道業界がこぞって熱い視線をおくる新型車両がデビューした。JR西日本の特急「やくも」(岡山-出雲市 )。川西は、新車両のデザインと、山陰側の拠点となる米子駅・出雲市駅の待合室のリノベーションも手掛けている。歴史ある列車だけに、重責は計り知れない。
一方、珍しい仕事も舞い込んだ。箱根・芦ノ湖の遊覧船の全面改装だ。ここでも異能ぶりを発揮、常識破りのデザインで関係者を驚かせる。
川西を追いかけた10か月。どの土地でも、デザインのチカラを信じ新たな価値を生み出そうとする姿があった。
エネルギッシュに動き、関西弁で熱弁をふるう48歳は、モビリティーにどんな未来を描いているのかー

PROFILE

川西康之(かわにしやすゆき)48歳
1976年1月10日 奈良県生まれ
小学5年の夏休みに友だちと夜行列車で東京に旅をしたことがきっかけで、少年時代から「鉄道旅」の虜に。
高校時代、鉄道デザインのパイオニア水戸岡鋭治と建築界の巨匠・安藤忠雄の作品集と出会い、衝撃を受ける。
高校卒業後、上京し、千葉大学工学部入学。同大学院に進み、建築デザインを学ぶ。自然科学研究科デザイン科学(建築系)博士前期課程修了。
デンマーク王立芸術アカデミー建築学科・招待学生。(1年留学)
アムステルダムの建築事務所で勤務。
フランス国有鉄道交通拠点整備研究所勤務を経て帰国後、鉄道デザインを主力にした建築士事務所「イチバンセン」開業。

受賞歴
・土佐くろしお鉄道中村駅リノベーション(高知県)
2014年ブルネル賞優秀賞
日本産業デザイン振興会 グッドデザイン特別賞2010
中小企業庁長官賞
国土交通省第9回日本鉄道賞特別表彰地方鉄道駅舎リノベーション賞
公益社団法人 土木学会 デザイン賞 2012 最優秀賞

・えちごトキめきリゾート雪月花(新潟県)
国際デザインアワード公共デザイン部門最優秀賞
米国国際デザインアワード金賞

・観光型高速船シースピカ SEA SPICA(広島県)
日本産業デザイン振興会 グッドデザイン賞2020 BEST100
日本船舶海洋工学会 シップオブザイヤー2020 小型船舶部門賞

・WEST EXPRESS 銀河(大阪府、京都府など西日本各地)
日本産業デザイン振興会 グッドデザイン賞
2021 BEST100 グッドフォーカス賞

など

STAFF
演出:田中啓太郎
構成:田代裕
ナレーター:窪田等
撮影:合田文昭・稲岡和彦
音効:中嶋尊史
編集:張博文
制作協力:えふぶんの壱
プロデューサー:沖倫太朗・上野光雪

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