BACK NUMBER過去の放送

2024年04月07日(日) 放送分

挾間美帆ジャズ作曲家
Vol.1295

いま最もグラミー賞に近い作曲家!
“人間の力を信じて” 新作誕生の瞬間

「次のグラミー賞は彼女だ!」とその受賞が期待されるアーティストがいる。ジャズ作曲家の挾間美帆、37歳。2020年に自身の室内楽団m_unitを率いたアルバム「ダンサー・イン・ノーホエア」で最優秀ラージ・ジャズ・アンサンブル部門にノミネート。以来初となる待望の新作アルバムを昨秋リリースした。同作は先頃発表された第36回ミュージック・ペンクラブ音楽賞でもポピュラー部門の最優秀作品賞に輝いたばかりだ。
大学時代にジャズピアニストの山下洋輔に見出され、坂本龍一から編曲を依頼されるなど、早くから才能を開花させた挾間。世界的巨匠をも唸らせる彼女の音楽の特徴は、いわば「クラシック」と「ジャズ」のマリアージュだ。挾間が譜面に書き込む「必然」と奏者に委ねられる即興演奏「偶然」が混在する音楽。重厚で複雑なハーモニーと変幻自在のリズム...万華鏡のような鮮やかな挾間の世界観の中で、奏者たちは大きな翼を得て、音楽をとてつもない場所へと昇華させていく。
今年1月。挾間は新作づくりに取り掛かった。活動拠点であるニューヨークの最も前衛的なジャズクラブからの委嘱でパンデミックの記憶を表現する。ブラジルの有名シンガーソングライターを迎え、6人の小編成。自らピアノも演奏する新しいことづくしの挑戦だ。作曲中は外との接触を絶って部屋に篭もり、自分の頭に浮かぶ音だけにひたすら集中する日々。しかし本人も自認するほど、とにかく"閃かない"。1日考えて収穫ゼロも多々だ。
番組では、新作誕生の貴重な瞬間に密着。熱狂渦巻く3月28日の初披露ライブもたっぷりとお届けする。また自ら指揮もするm_unitの日米公演や総合プロデューサーを務める大規模な音楽フェス「東京JAZZ」での手腕、恩師との25年ぶりの再会なども見つめた。世界的作曲家の脳内を覗いてみたい...そこで見えてきたのは、自分に無いものを他者の力で補う軽やかさと、人間に対する好奇心、愛。そしてその可能性を体感し続けてきた彼女だけの境地だった。

PROFILE

1986年東京生まれ。マンハッタン音楽院大学院卒業。2012年「ジャーニー・トゥ・ジャーニー」でジャズ作曲家として世界デビュー。2016年米ダウンビート誌の「未来を担う25人のジャズアーティスト」にアジア人でただ一人選出。2020年自身の室内楽団m_unitを率いた3作目「ダンサー・イン・ノーホエア」で第62回米グラミー賞最優秀ラージ・ジャズ・アンサンブル部門にノミネート。2019年からデンマーク・ラジオ・ビッグバンドの首席指揮者に、2020年からオランダのメトロポール・オーケストラの常任客演指揮者に就任。昨年デビュー10周年記念アルバム「ビヨンド・オービット」をリリースし日米でツアーを敢行。同作は今年、第36回ミュージック・ペンクラブ音楽賞ポピュラー部門最優秀作品賞を受賞した。これまでに山下洋輔、東京フィルハーモニー交響楽団などに作曲作品を、坂本龍一、鷺巣詩郎、NHK交響楽団などに編曲作品を提供。ニューヨーク在住。

STAFF
演出:小林潤子
構成:田代裕
ナレーター:窪田等
撮影:髙野大樹・松浦祥子・松村敏行・岩切天平
音効:増子彰
編集:芦垣均
制作協力:ドキュメンタリージャパン
プロデューサー:沖倫太朗・新津総子

このサイトをシェアする