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2024年03月10日(日) 放送分

亀井聖矢ピアニスト
Vol.1291

超絶技巧の若き“ヴィルトゥオーゾ”
ピアノの詩人・ショパンに挑む

亀井聖矢、22歳。いま最もコンサートチケットが入手しづらいピアニストの一人と言っても過言ではないだろう。
2019年、ピティナ・ピアノコンペティションでの特級グランプリと、日本音楽コンクールピアノ部門での第1位(同年受賞は史上初)を獲得し、一躍注目の的に。大きな手を武器に、超絶技巧を駆使して難曲を弾きこなすヴィルトゥオーゾ(卓越した演奏能力の持ち主)としてキャリアをスタートさせた。
2022年、パリで開催されたロン=ティボー国際音楽コンクールでは、第1位に輝くと同時に「聴衆賞」と「評論家賞」も受賞。技術に裏打ちされた圧倒的な表現力と、多彩な音色で聴くものを音楽の渦に巻き込んでゆく。
そんな亀井が、昨年から集中的に取り組んでいるのは「ピアノの詩人」と称されるショパン。CMやドラマで楽曲が使われることも多く、親しみやすい旋律はクラシックファンのみならず人気が高い。しかし亀井は意外にも、ショパンを弾くことが「苦手」なのだと言う。「大好きな作曲家だから情感をたっぷり込めて弾くと、過剰になってしまうんです」。ポーランド特有のリズムと、ガラス細工のように美しく繊細なメロディ。亀井にとっては、感情の込め具合や、音楽の流れをいかに自然に作るかが、とてつもなく難しいのだという。

自他共に認める練習の虫だが、ピアノを離れると料理と謎解きをこよなく愛する22歳の青年。留学中のドイツで下宿先を訪ねると、スマホ片手にレシピを何度もチェックしながらカルボナーラを作り、取材スタッフに振る舞ってくれた。早起きが苦手だったり、メールやLINEの返信がちょっと億劫だったり、どこにでもいそうな若者の横顔が覗く。
世界で活躍するピアニストを目標に、日本とヨーロッパを行き来する日々。亀井はショパンを弾くために何を求め、何を学び、何を得るのか。全曲ショパンによるリサイタル、ドイツの音楽大学でのレッスン、リトアニアとフランスでのコンサート、そして、ショパンの祖国ポーランドを代表するワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団との共演から、ショパンを弾くことの苦悩が見えてくる。ヴィルトゥオーゾからショパニストへ、世界を見据える22歳は大いなる変革の時を迎えている。

PROFILE

2001年生まれ、愛知県出身。4歳からピアノを習い始める。中学生の頃から音楽の道を志すようになり、愛知県立明和高校音楽科へ進学。高校2年生終了後、桐朋学園大学初となる「飛び入学特待生」として同校に入学。2019年、大学1年生のときに、若手ピアニストの登竜門として知られる「ピティナ・ピアノコンペティション」特級グランプリと、「日本音楽コンクール」ピアノ部門第1位を獲得。2022年には、パリで開催されたロン=ティボー国際音楽コンクールで第1位に輝き、「聴衆賞」と「評論家賞」も受賞。2023年、桐朋学園大学を首席で卒業。文化庁長官表彰(国際芸術部門)、出光音楽賞など受賞多数。現在、ドイツのカールスルーエ音楽大学、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコースに在籍中。

STAFF
演出:三木哲
構成:田代裕
ナレーター:窪田等
撮影:水上智重子・星野伸男
音効:中嶋尊史
編集:宮島亜紀
制作協力:ネツゲン
プロデューサー:沖倫太朗・望月馨

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