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斎藤幸平経済思想家Vol.1276
今どき!?それとも今だからこそ?
世界も注目の若きマルクス研究者
あのマルクスの思想を扱う書籍にもかかわらず、50万部のベストセラーを生んだ学者がいる。斎藤幸平、36歳。3年前に上梓した『人新世の「資本論」』は、現代の環境危機の解決策をマルクスの新解釈の中に見出す、という硬派な内容ながら幅広い世代に受け入れられた。
気候変動などが地球規模で問題になる中、斎藤は、社会システムがこのまま変わらないと、豊かになるどころか貧しくなるのではないか、と主張する。今こそ必要なのは成長ではなく"脱成長"だと説き、「コモン」という誰もがアクセスできる共有財によってより良い社会を目指せないかと考える。
大学の研究室にはあまりいないという斎藤。番組は、「行動する学者」として実践する日常を追いかける。ひっきりなしに舞い込むコメンテーターなど番組出演の依頼、不耕起栽培の農場や、ホームレス支援の手伝い、「共に生きる」ことを目指した新たな試み...。
さらに今、斎藤はヨーロッパで注目され、著書の翻訳版がベストセラーになっている。いわば世界的な「斎藤幸平ブーム」が起きつつある様子も捉える。
ゆっくりではあるが共感する人が増え、本人も驚くほどのインパクトを生み始めているものの、「ほんとに"脱成長"なんて現実的なのかー」ディレクターの問いに、斎藤は意外な回答をした。
※「人新世」:人類の経済活動が地球全体に影響を及ぼす時代
PROFILE
1987年1月生まれ。米国の名門ウェズリアン大学卒業後、ベルリン自由大学で修士、ベルリン・フンボルト大学で博士課程修了。博士(哲学)。専門は経済思想、社会思想。Karl Marx's Ecosocialism: Capital, Nature, and the Unfinished Critique of Political Economy (日本語版「大洪水の前に」)でドイッチャー記念賞を史上最年少で受賞。『人新世の「資本論」』(集英社新書)が50万部のベストセラーとなった(新書大賞2021、アジア・ブックアワード 2021受賞)。
大学時代、ハリケーン・カトリーナの被災地でボランティア、世界一豊かな国の深刻な超格差問題を目の当たりにしたのが転機になり、大学から読み始めたというマルクスの研究を志向する。ベルリンの大学院で学んでいた最中に起きた東日本大震災を機に、資本主義とエコロジーの問題を深めたいと考えたのもその契機となった。マルクスのように、理論と実践を追求し、研究だけでなく日夜いろんな現場に赴き、世の中から刺激を受けつつその思想がより良くなることを目指している。
世界的なプロジェクトである「マルクスエンゲルス全集(MEGA)」の刊行にも携わる。担当はマルクスの自然科学のノート編纂。
構成:浜田悠
ナレーター:窪田等
撮影:井上裕太・平本亜希・都原委作・池村泰貴
音効:早船麻季
制作協力:テレビマンユニオン
プロデューサー:沖倫太朗
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