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2023年06月04日(日) 放送分

南谷かおり/
国際診療科
医師
Vol.1254

言葉の壁を越え 癒しと安心を
外国人患者受け入れの専門チーム

体の具合が悪いけれど、日本語が話せず病状を医師に伝えられない...。
それに加え、問診票の記入や院内での手続きもある。母国を離れた外国人の患者にとって、異国の地で病院へ行くことは不安でしかないだろう。
ところが、この病院は違っていた。
関西国際空港からわずか7キロに位置するりんくう総合医療センター。国際診療科では、機内で発症した救急患者や訪日観光客、全国から評判を聞きつけた在留者など多くの外国人を受け入れている。診察室では医療通訳者が医師と患者の間に入り、国際医療コーディネーターが、診察前の手続きや検査、会計までもフォローする。率いるのは、ブラジルと日本の医師免許を持ち、ポルトガル語、スペイン語、英語を駆使する南谷かおり医師だ。幼いころブラジルへ転居した彼女は、異国で言葉が通じない不安を知っている。そうした経験も活かし、診察室の外も含め、言葉の壁で困っている外国人患者へ徹底的に寄り添っていた。南谷医師は、全国に先駆けこうした取り組みを続けている。
取材を始めたのは、コロナの規制も緩和し外国人観光客が再び日本に戻ってきた4月。ある夜、観光で訪れていたオランダ人が心筋梗塞で救急外来に運び込まれ、緊急オペが行われた。対応に追われる国際診療科のスタッフたち。患者や家族への病状の説明や、保険加入の確認、同意書へのサインなどやるべきことは尽きない。退院の日まで寄り添ったスタッフに、患者は感激していた。
来院するのは訪日患者ばかりではない。むしろ割合が多いのは在留の外国人だ。日本で税金を払い、日本の健康保険に加入しているものの日本語が話せず病院を避けがちな外国人も少なくないという。たとえば、20年以上日本に住んでいるが、日本語が話せないブラジル人女性。彼女が訴えていたのは、以前から抱えていた不整脈の悪化だ。今回、南谷医師のサポートで手術を受けることになった。言葉のわからない異国の地で受ける、心臓の手術...。オペ室で飛び交う執刀医たちの専門用語に、不安は増していく。そんな彼女に、南谷医師が患者の母国語・ポルトガル語で語りかけたこととはー

PROFILE

1965年大阪生まれ。父の転勤で小学6年生の時にブラジルへ移住。ポルトガル語が話せず、2年遅れの4年生に編入し、並行して日本人補習校にも通った。その後ブラジルの国立大学医学部へ進学し医師免許を取得。リオデジャネイロの公立病院で研修医を経て1992年に帰国し、大阪大学放射線医学教室に在籍。日本語で基礎医学から臨床医学まで学び直し1996年に日本の医師免許を取得。2006年りんくう総合医療センターに、当時は珍しかった外国人診療を担う国際外来の開設を任され、現在は国際診療科の部長としてチームを牽引している。医療通訳者の普及のための養成コースや認証制度の策定に関わり、また国際医療コーディネーターや国際看護師の教育にも取り組んでいる。

STAFF
演出:野坂真也
構成:岩井優介
ナレーター:窪田等
音効:中嶋尊史
編集:宮島亜紀
制作協力:ソユーズ
プロデューサー:沖倫太朗

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