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2023年05月28日(日) 放送分

緒方陽一蜂蜜ハンター
Vol.1253

カンボジアの人々と守る神秘の味!
野生の味とパワーに魅せられた男

木箱で育ったハチの巣から黄金色の甘い蜜が零れ落ちる...。だが、緒方陽一の蜂蜜は、そんなイメージとはかけはなれていた。
緒方が扱うのは、カンボジアのジャングルに自生する"東洋ミツバチ"の蜂蜜。一般的に養蜂に用いられる"西洋ミツバチ"が一種類の植物の蜜を集めるのに対して、何種類もの蜜をランダムに集めるその蜂蜜は、年ごとの森の実りによって複雑に味を変える。カシューナッツやライチの風味を感じるものから、糖度が低くコーヒーのような苦味を感じるものまで様々だ。
緒方は毎年、ハチの繁殖期となる3月〜7月をカンボジアで過ごし、現地で暮らす人たちとともに森に分け入って採取した蜂蜜を、調合・熟成する。短いものでも3か月、長いものでは10年以上かけて仕上げた蜂蜜は、日本の有名菓子店だけでなく、ミシュランの星付き寿司店やフレンチレストランからも引く手あまたという。
野生の蜂蜜と出会ったのは、画家として活動していた13年前。絵を描きに訪れたカンボジアで、現地の人たちが食べさせてくれた蜂蜜に脳天を突き抜ける衝撃を受けた。
同じ森でも、採取するエリアや季節で味が異なる野生の蜂蜜。処理の方法もその都度変えなければならない。どうすれば自分が味わった感動を損なわずに届けることができるのか...。ひとり部屋に篭って熟成中の蜂蜜をチェックし、ひたすら試行錯誤を繰り返す。
近年、開発が進み森が切り開かれ始めたことで、生息圏が狭まっているというカンボジアの東洋ミツバチ。蜂蜜採りを生業とする人の数も年々減少傾向にある。緒方は、この蜂蜜を世に広めることで、人生を変えてくれた現地の人たち、そしてカンボジアの自然を守りたいという。
ジャングルの中で焚き火を囲み、酒を酌み交わす姿に、ふと"共生"の2文字が浮かんだ。乾季を迎え、野生のハチが甘い蜜を湛える5月、神秘の味に人生を捧げた男にカメラを向けた。

PROFILE

1980年、福岡県生まれ。
歯科医の一人息子として育ったものの、幼少期から絵を描くことに没頭し、進学した日本大学松戸歯学部を4年生時に中退。小学校時代からのあだ名だった「緒方ポニィ」名義で画家となる。ギャラリーで個展を開き、ファッションショーの造形デザインなどを手がけていたが、29歳の時に訪れたカンボジアで野生の蜂蜜と出会い、人生が変わった。
現在は「April(乾季の山頂部で採れたもの)」、「CAVE(崖で採れたもの)」、「Ensemble(3月・5月・6月の山の中腹で採れた3種類を調合したもの)」など銘柄分けした蜂蜜を中心に販売するほか、“現地の人たちと採った蜂蜜の良さをもっと広めたい”という思いから、石鹸やハニービネガー、コショウの蜂蜜漬けなどの加工品も手がけている。

STAFF
演出:深田聖介
構成:田代裕
ナレーター:窪田等
撮影:浜崎務・西條沢栄
音効:早船麻季
制作協力:東北新社
プロデューサー:沖倫太朗・今野利彦

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