BACK NUMBER過去の放送

2023年03月05日(日) 放送分

片桐はいり俳優
Vol.1241

圧倒的な存在感と深遠な演技論
“素”であることと“演じる”こと

「俳優になりたいと思ったことはないですね。俳優になったのは、ほぼ偶然ですよ」
初舞台を踏んでから約40年。片桐はいりは、俳優になったきっかけを聞かれると、いつもこう口にする。

映画を観るのが好きで好きでたまらなかった学生時代。将来は、映画館や映画の宣伝部で働くことが夢だった。そのため、俳優になったのは「思いがけない」ことだったという。

取材が始まったのは去年7月。東京・阿佐ヶ谷にある100年以上の歴史を持つ映画劇場のイベントに、片桐はゲストとして招かれた。
開場前、イベントスタッフと往年の映画の話題で盛り上がり、自ら進んでイベントの受付係を引き受けることに。来場者やスタッフと共に映画を楽しむ姿に、映画と映画館への愛情の深さを垣間見た。

そんな片桐だが、自身が俳優として見た時に、向いているのは映画よりも舞台の方だと言う。
野外劇『嵐が丘』の稽古に励む片桐。演出の小野寺修二とは、2010年上演の舞台以来、幾度も共同作業を重ねてきた。マイムの動きをベースに、俳優と話し合いながら作り上げていくスタイルの小野寺の稽古に、試行錯誤し、何かを探り続ける片桐。
「ゼロから作っているから、どうしたら面白いのかなということしか考えない」
そこには、緊張感漂う状況下で密かに楽しんでいる片桐の姿があった。

「個性派俳優」という枠にすら収まらない存在感。片桐にとって『素であること』とは、『演じること』とは。果たしてその境界を見つけることはできるのか―

PROFILE

1963年、東京都出身。大学在学中に銀座文化劇場(現シネスイッチ銀座)でもぎりのアルバイトと同時に俳優活動を開始。現在も俳優業の傍ら「映画への恩返し」として地元の映画館、キネカ大森で時々もぎりをしている。映画と映画館への愛情に満ち溢れたエッセイ『もぎりよ今夜も有難う』は、第82回キネマ旬報ベスト・テン 読者賞を受賞した。

STAFF
演出:望月馨
構成:田代裕
ナレーター:窪田等
撮影:水上智重子・高橋秀典
音効:中嶋尊史
編集:宮島亜紀
制作協力:ネツゲン
プロデューサー:沖倫太朗・大島新

このサイトをシェアする