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2022年08月07日(日) 放送分

北村麻子ねぶた師
Vol.1212

心の声を“ねぶた”に込めて
3年ぶりに挑む勝負の祭

東北三大祭の一つで、国指定重要無形民俗文化財でもある「青森ねぶた祭」。"ラッセェラー・ラッセェラー"の掛け声を受け、街を練り歩く大型ねぶたは幅9m・奥行き7m・高さ5m。世界最大のペーパークラフトとも呼ばれている。
ねぶた師・北村麻子は、史上初めての女性ねぶた師だ。その仕事は、絵筆で下絵を書き上げ、大量のハリガネで巨大なパーツを制作、トンカチ、ノコギリも使って土台を作り、高所作業も多いなど、体力を要し危険が伴う。女性が一手に引き受けるのは無理だと思われてきた。
さらにねぶたは勝負の世界でもある。毎年新しく作り上げる山車には、順位が付けられ、評価される。しかし「子供の頃から、勝負の世界で生きる父母を見てきた」という北村は、25歳の時、第六代ねぶた名人である父・北村隆の下で修業を開始。そして2012年のデビュー作で、父を抑え、優秀制作者賞(3位)、5年目で最優秀制作者賞(1位)に輝いた。

番組は、コロナ禍での中止を経て3年ぶりの祭に臨む北村を追いかけた。 今年の題材に選んだのは「琉球開闢(かいびゃく)神話」。沖縄の美ら海水族館で悠々と泳ぐジンベエザメに大感動したのがきっかけだ。沖縄返還50周年と言う節目、戦争もあり不安定な世の中に向けて、平和へのメッセージを届けたいという。
祭りまでの約3ヶ月を過ごすねぶた小屋の隣には、父親のねぶた小屋。
「父は、私が作っているものを知らないと思います。」と話し、ライバルでもある父娘関係をにじませる。パーツを組み上げ、巨大な造形に仕上げる骨組みから、紙貼り・書割り・ろう書きなど、伝統的な制作現場だけではなく、二人の子供を持つ母親としての顔もカメラは見つめていた。

この長かった中止期間で決めたという、自分にとっての新しい挑戦。沖縄の青い海を想起させる鮮やかなねぶたは、観客をどう沸かせ、審査員たちにどう映るのか...。不安と希望の思いを行き来させ、一人ねぶたと向き合う北村麻子の夏を映し出す。

PROFILE

1982年青森県生まれ。4人きょうだいの3番目。
2008年、ねぶた名人の父・北村隆の下でねぶた修業を始める。
2012年、デビュー作「琢鹿の戦い」で優秀制作者賞を受賞。
2017年、制作作品「紅葉狩」がねぶた師の最高賞である最優秀制作者賞を受賞。
インテリアが好きで、趣味は、ガーデニング。二児の母として子育てにも奮闘中。
母親曰く、片付けが苦手。

STAFF
演出:申 成皓
構成:田代裕
ナレーター:窪田等
音効:早船麻季
制作協力:オルタスジャパン
プロデューサー:中村卓也・沖倫太朗・重乃康紀

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