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金尾祐之婦人科医Vol.1192
女性を脅かすガン治療の最前線
今と、次の命を守る1ミリのせめぎあい
子宮や卵巣に巣食うガン。婦人科医・金尾祐之の率いるがん研有明
骨盤内の狭いところで行う手術は、常に出血、神経の損傷などの事故と隣り合わせ。今でも怖いが、「患者を救うために、どうにか突破口を見つけ、そこに切り込むパッション」が何よりも重要と話す。例えば、20〜40代に多い子宮頸ガンの手術では、命はもちろん、子供を産める体でいたいと願う患者も少なくない。
番組では、金尾がこだわる「1ミリ」の手術現場を取材。1ミリ内か外か...切除ラインは患者の予後にも影響する。子供を望む子宮頸がんの患者には「子宮温存手術」を選択。太さ3~4ミリの子宮動脈を残すことを心がける。一般的には切除されてしまう動脈を残せば、血流を保ち妊娠率をあげることが可能になるからだ。
また、「子宮頸がんの再発腫瘍切除術」にも力を入れている。合併症や術後のリスクなどその難しさから一般的にはほとんど行われていない難手術。金尾は、余命1年を宣告された患者の命を救いながらも術後の生活を守るため、癒着している坐骨神経を残すことにこだわった。ガンを大きく切り取ればガンの心配は減るが、術後に歩行障害が出てしまう。ガンも治し、坐骨神経も守る1ミリのせめぎ合い。果たして結果は...。
その技術と精神を継承すべく始めた独自の講習などで「早期発見、早期治療」の重要性を訴える金尾。
婦人科医療の未来のために、また、婦人科ガンの根治のために。熱情を注ぐ姿を追った。
PROFILE
1971年、香川県高松市生まれ。広島県福山市育ち。父親の影響で産科医を目指し、大阪大学医学部に入学。卒業後、産婦人科医助手として働き始めるものの、帝王切開手術で母体死亡を経験。子供は無事だったが、帝王切開の手術ごとにフラッシュバックし産科医を断念。大学で学んだことのある婦人科に転身した。父親を手術室で見届けたとき、医師の手にかかる患者と患者の家族の思いを知り、手術を武器にしていこうと決意。倉敷の病院で腹腔鏡手術を10年学んだのち、2014年がん研有明病院に。副部長を経て、2020年から部長となってチームを牽引する。2021年の婦人科ガン手術件数は1306件、金尾の内視鏡手術数はこれまでで4000以上に及ぶ(良性・悪性疾患)。金尾の技術は国際的にも注目され、高く評価されている。
ストレス解消は、家族と過ごす時間とジョギング。お酒も好きだが、手術前日は絶対に飲まないと決めている。
構成:田代裕・重乃康紀
ナレーター:窪田等
音効:早船麻季
制作協力:オルタスジャパン
プロデューサー:中村卓也・申 成皓
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