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2021年09月26日(日) 放送分

川上裕庭師
Vol.1172

モネが愛した庭を日本に…
孤高の庭師が魂を込める絶景

印象派の画家クロード・モネが後半生を捧げて描き続けた睡蓮。数多の傑作は、モネが43歳の時に移り住んだフランス・ジヴェルニーの「自宅庭園」に咲く睡蓮をモデルにしている。
今では多くの観光客が訪れるその庭を、もし日本でも見られるとしたら...

高知県にある『北川村「モネの庭」マルモッタン』は、フランスのモネ財団から、世界で唯一モネの名を冠することを許された庭園だ。全体で3ヘクタールに及ぶ庭の管理を担っているのが、川上裕59歳。10人ほどのスタッフたちとともに、本家ジヴェルニーの「モネの庭」を手本としながら、モネの絵画に学び、円形に整えられた睡蓮、水面に映り込む木々の植栽、ナチュラルさを感じさせる花の配置と色彩感、モネが愛した光景を繊細に再現し、守り続けている。存命中のモネが咲かせたいと願いながら、ジヴェルニーの気候が適さず叶わなかった熱帯性の「青い睡蓮」が見られるのは、高知ならではだ。

庭づくりと聞くと優雅なイメージを持つが、その実態は驚くほど過酷だった。取材に訪れた8月上旬、通過したばかりの台風の爪痕が庭のいたるところに残り、川上は復旧作業に追われていた。さらに、その後の長雨による日照不足で睡蓮の花数も激減。
「ジヴェルニーと高知では気候が大きく異なる、庭づくりの条件としてはとても厳しい...」

そんな中、ジヴェルニーの「モネの庭」で長年責任者を務めてきた庭師、ジルベール・ヴァエ氏による視察が行われることになった。昨年4月に来日予定だったがコロナ禍により叶わず、今回はリモートでカメラを通して庭の現状を見てもらうという。モネの名を冠するからには、どんな悪条件が重なろうと、その名に恥じない庭を維持しなくてはいけない。
「庭の状態が悪ければ、いつモネの名を取られてもおかしくない」
川上は、強風で枝が折れた柳を剪定し、無数の倒れた花の茎を支柱に巻きつけ、雨にうたれながら池で睡蓮の葉を整える。モネの愛した光景を取り戻そうと一心不乱に植物と向き合う様は、まるでモネに雇われた庭師のようだった。モネ、ジヴェルニー、北川村...3つの点を結ぶ、庭師のひと夏の奮闘を追った。

PROFILE

1961年、高知県生まれ。農業を営む両親の元、幼い頃から植物に親しみ、5歳の時には庭に小さなマイガーデンを持っていた。いつしか農家を継ぎたいと思うようになるが、両親から「公務員など安定した仕事に就いた方がいい」と諭され、大学受験に挑戦するも3度失敗、地元の銀行に就職する。それでも植物への思いは絶ちがたく、30歳で造園会社に転職。樹木だけでなく、花を扱いたいという思いで『北川村「モネの庭」マルモッタン』の庭園管理責任者に就いたのは42歳の時。モネの世界観を理解するために、フランス・ジヴェルニーの「モネの庭」を度々訪れ、モネの絵画にある色彩・光・空気感、その全てを庭づくりのインスピレーションとして日々の仕事に取り組んでいる。2015年には、フランスの芸術文化勲章「シュヴァリエ」を受章。「私は、モネに雇われた庭師のつもりで仕事をしています。」と語るその風貌は、どこかモネを思わせる。

STAFF
演出:三木哲
構成:田代裕
ナレーター:窪田等
撮影:佐藤康祐・萱原健二・栗原朗
音効:中嶋尊史
編集:宮島亜紀
制作協力:ソユーズ
プロデューサー:中村卓也・岩井優介

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